LIMIT NETWORK Vol.263

 


 いつもお世話になりありがとうございます。

 ひと雨ごとに寒さもゆるみ、桜の満開まであと少しです。


 先月までは広島の桜開花予想は春分の日前後とされていましたが、今年は寒暖差が大きく少し遅れています。コロナ禍でここ数年お花見に出かけることもありませんでしたが、今年は久しぶりに福山城でも散策しようと思っています。

 約一年前に黒田東彦日銀総裁の後任に登板された植田和男総裁が、いよいよ十一年に渡る大規模緩和の修正を決断しました。マイナス金利を解除して十七年ぶりの利上げに踏み切り、長期金利を低く抑え込む枠組みも撤廃し、金融政策の正常化へ第一歩を踏み出しました。これで円高に動くと期待したのですが、先日は円キャリー取引が再加速して三十四年ぶりの円安水準。正常化の最終的なゴールはまだまだ先のようです。ビジネスの新陳代謝を促し、経済や物価などの市場の見方を映す金利本来の役割を取り戻すのは、今年の開花のようにまだまだ先のようです。


一、 大規模緩和の修正はしてみたが、


 今月は価格改定して最初の月となりました。稼働日も二日少なく、前回価格改定した九年前の三月と同じく、前年同月のユニウェアブランド販売枚数はクリアできませんでした。それでもこの度から総合カタログに掲載されたハイクラスのリフィンブランドは好調なスタートとなり、先ずはホッとしています。

 備後の同業アパレルにも商況をお伺いするのですが、どこも値上げにより売上高よりも販売枚数が落ちるのが在庫増につながり厳しいと声をそろえておっしゃいます。大企業を中心とした賃上げ満額回答のなか、多くの中小企業は賃上げに頭を抱えます。今の状況下で制服の更新を優先するのは難しいと思います。今後、金融政策の正常化が順調に進み、夏ごろには大手企業の好調な業績が中小企業にも波及してくるのを期待しております。

 しかし冷静に考えてみると、大規模緩和を修正し利上げに踏み切ったとはいえ微々たるもので、長期金利を低く抑え込む枠組みも撤廃したといっても、国債の買い入れはこれまでどおりで止めないわけで、これではこれまでの黒田バズーカと同じくどんどん円を刷ればいいわけで国の借金は減らず、少子高齢化対策も効果がないまま将来世代の負担をさらに増やしてゆくだけです。これでは世界から見た円の価値は下がってゆくばかりで、ますます円安が続くのは必然のような気がします。

 最近、東京だけでなく地方にも億ション販売が広がりつつあるとか、株価や賃金に続き土地の公示価格も上昇の波が広がっているなど、インフレの進行がうかがわれる報道が顕著に流れています。しかし結局こういった報道も、日本円の価値がどんどん下がってきているので、値段が上がっているだけなのではと疑ってみています。


二、 リミットのインフレ戦略


 このままでは更なる円安進行で一六〇円の声も出始めています。そうすると原材料のさらなる値上げ、販売価格に転嫁とインフレスパイラルが止まらなくなります。世界情勢を静観し、日本の将来を本気で見据えた政治政策が待たれますが、裏金疑惑や女性ダンサー懇親会ばかりが目立つようでは期待できません。インフレが進行してモノの価格が上昇してゆくならば、それでも売れる製品開発しかありません。

 リミットの国内工場では今、製品在庫が十分そろっているので、どんどんライン生産を進めるよりも、若手を中心に付加価値の高い製品開発や縫製技術向上に重点をおいています。これまでのデフレ戦略からインフレ戦略への転換が急がれます。



  二〇二四年三月二十九日
       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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