LIMIT NETWORK Vol.257


  いつもお世話になりありがとうございます。

 暑さ去りやらぬ昨今ですが、貴社におかれましてはいよいよご隆盛の段お喜び申し上げます。


 今月も閑散期ではありましたが、夏物定番は少し動いて昨年並みです。引き続き厳しい残暑のなか我慢に我慢を重ね、どうにも耐えきれなくなってからの発注なのかしら、と推測するようなケースもあります。今月もサービス向けブラックフォーマルは好調でした。これまでは直販体制でのみの販売でしたが、来期二〇二四年度のリミット総合カタログには、既に実績のあるブラックフォーマル商品群も一部掲載いたします。コロナ禍三年の間に温めてきた新商品群を一挙に登場させますので、期待してお待ちください。


一、 物価と賃上げと円安の関係


 七月分の全国消費者物価統計で、コアCPI(除く生鮮食品)は電気料金の下落などを受けて若干低下しました。コアCPIは今年一月の前年同月比+四・二%をピークに、低下傾向を辿っています。今後の物価高騰は既に山を越えつつあるのかもしれません。しかしそれでも政府の政策の影響を強く受けるガソリン価格、および電気・ガス料金の推移に当面は大きく左右されるものと思われます。

 賃上げの方はどうかというと、今年の春闘では物価高や人手不足を背景に、約三十年ぶりの高い賃上げ率が実現しました。マクロの賃金動向は一般に厚生労働省の毎月勤労統計調査があります。こちらでは春闘の成果が反映され、二%程度の賃金上昇が期待できると期待されましたが、五月は一・七%、六月は一・四%と、二%未満にとどまりました。物価手当のような一時金が多くの企業で支給された可能性はありますが、春闘の結果が示すベースアップが幅広い企業に浸透せず、中小企業では連合集計ほどの賃上げには至らなかったのではないでしょうか。

 日銀は、賃金の上昇を伴う形で、二%の物価安定の目標を持続的、安定的に実現することを目指しています。しかし、足元で消費者物価上昇率は三%台に高止まりしています。これは原因として、主に川上の輸入原材料の高騰が徐々に川下への価格転嫁に波及し、足元でもなお食品などでの値上げが続いているという状況で、米国のように賃金上昇による根強いインフレ圧力とは全く異なります。

 つまり、日銀は持続的な賃上げが確認できるまでは、マイナス金利を軸とする緩和政策を継続するでしょう。そうなると皮肉なことに、今後も日米金利差に起因する円安基調は変わらず、輸入物価を再び押し上げてしまうのではないでしょうか。


二、 この国のインフレ課税


 今のままでは金利は上がらず、物価上昇によって所得や資産の実質的価値がどんどん目減りしてしまいます。これはいわゆる「インフレ課税」です。日銀が利上げさえしてくれれば、家計の預貯金の利息収入が増え、損失の穴埋めができます。しかし、それを実行すれば、この国の一二〇〇兆円を超える政府債務の負担が、利払いの増加でさらに増えることになってしまうというジレンマに陥っています。増税や歳出カットによる政府債務の削減は、国民の不満を高め、選挙に影響します。それに比べ、インフレ課税は密かに円資産の価値を減価できます。現金や預金通帳の数字に変化がないのに、確実に購買力を失ってゆくのがインフレ課税の怖さなのです。


三、 賃上げと価格転嫁は必要悪


 では、このようなジレンマに陥っているこの国において、我々企業はどうするべきか。

 ようやく社会はアフターコロナとなり、物価高騰もあってやむなく今年度は賃上げに踏み切ったが、来年以降の賃上げ継続は容易ではありません。とはいえ最低賃金は引き上げられ、業種によって差はあるものの、総じて人手不足感は高まっており、人材確保のためには相応の賃上げの継続は欠かせない。

 そのためには、原材料価格の上昇分と同様に、賃金上昇分についても価格に転嫁してゆくことが求められます。この三十年間、きわめて硬直的であった我が国企業の価格設定行動にも、足元で大きな変化が生じています。もちろんただ値上げをするだけではなく、新しい付加価値を備えた新商品をどんどん開発できれば言うことなしですが、いずれにせよ、二〇二四年度のリミット総合カタログでは、この機をとらえて原材料高騰や賃上げを吸収し得る価格転嫁に取り組んでまいります。何卒ご理解・ご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。



  二〇二三年八月三十一日
       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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