LIMIT NETWORK Vol.254
いつもお世話になりありがとうございます。
青葉若葉のさわやかな季節となりました。皆様もご存じの通り、先日ここ広島ではG七広島サミット二〇二三が開催され、ゼレンスキー大統領も急遽フランス政府専用機で広島空港に降り立ち、平和記念資料館を訪問した後、岸田総理と首脳会談を行いました。各国の要人が多数訪問するということで広島では準備段階から右往左往、厳しい交通規制があったため、荷物の配送などにも影響が及びました。サミット初日は少し天気もぐずつきましたが、最終日まで晴れて宮島も堪能していただき、何事もなく無事に終わって関係者も安堵されていることでしょう。
天気といえば今年は夏までにエルニーニョ現象が発生し、観測史上最大規模になる恐れがあるとされています。エルニーニョ発生時は日本では冷夏になることが多いのですが、気象庁は反対にこの夏は全国的に気温が平年並みか高い、とする予報を発表しました。気象庁が二十三日に発表した三カ月予報は、これまでのエルニーニョの傾向とは真逆の内容でした。六月から八月の天候について、「全国的に気温は平年並みか高くなり、降水量は平年並み」だとしています。
理由については、ペルー沖で海面の水温が低くなる「ラニーニャ現象」が終息して間もないことなどを挙げています。そのうえで、「ラニーニャの影響が残る見込みだ」「ラニーニャが終息してすぐにエルニーニョが始まるのはこの四十年間は起きていなかった現象で予想が大変難しかった」としています。天候は人間の力ではどうすることもできません。梅雨も農作物には恵みの雨。今年も度を超えないよう、災害級にならないようにと祈るばかりです。
一、 閑散期のような繁忙期
今月は夏日になる日が少なく、夏物出荷の勢いが足りず前年同月を大きく割り込みました。物流トラックの集荷時間もどんどん早くなり、やはり荷動きが悪いと口をそろえておっしゃいます。販売店の皆様にも何軒かお聴きしましたが、今月前半は各アパレルより春夏物の値上げ条件が出そろったので、エンドユーザーに一通りご説明に歩いておられたそうです。中旬からはある程度夏物が動くと思っていたが、どうも動きが悪いそうです。
天候というよりも、エンドユーザー企業が賃上げやエネルギーなど原材料の高騰による利益圧迫が主因のようです。今年度の春闘の賃上げ率は三十年ぶりの高水準となりました。労働者、すなわち消費者にとっては朗報です。個人消費が力強さを欠くなか、賃上げで所得を高めていくことがわが国の成長には不可欠であり、そのきっかけとなる動きは経済全体にとって好ましいこと。ただ、我々中小企業経営者の受け止めは複雑です。給料を上げたいのはやまやまだが、ほかの様々なコストも上昇する中で、今後も賃上げを続けられるか不安もあります。こういった心理が買い控えにつながっています。
今回の賃上げ幅拡大の背景には、インフレと人手不足の二つの要因があります。四十年ぶりのインフレのもとでは、昨年までのようなわずかなベースアップでは従業員に報いることができない。そういう意識は経営側にも強かったと思います。また、人口減少下で人手不足が深刻になるという懸念も賃上げを後押ししたといえます。
今後のインフレ動向については、川上の輸入物価上昇率はすでにマイナスに転じており、川下への価格転嫁もいずれ一巡することから、年度後半からは上昇率は二%前後に近づいていくと見込まれ、インフレの点からの賃上げ圧力は来年には少し和らいでいると思われます。
では、人手不足要因はどうか。結論からいうと、人手不足は飲食・宿泊などの対面接客業、運輸業、IT 関連など、特定の業種・職種では深刻であり、一定の雇用ミスマッチが生じているものの、労働市場全体でみれば米国ほどのタイトな状況にはなっていないといえます。
二、 三十年ぶりに変われるか日本
今年度の春闘の賃上げは、インフレに後押しされた部分が大きいでしょう。もちろん人手不足に対応した部分もありますが、一部の業種を除けば米国ほどの切迫感はなさそうです。そうするとインフレが今よりは落ち着く来年は、今年並みの賃上げを期待することは難しくなる可能性が高いのではないでしょうか。
それでも、日本経済に好循環をもたらすために、そして中小企業が優秀な人材を確保するためには継続的な賃上げは必要です。人手不足を契機にした取り組みが付加価値の拡大、生産性の向上に結びつけば、それに伴う賃上げは経営者にとっても従業員にとっても、そして日本経済全体にとっても、好ましいものとなるはずです。日本は三十年ぶりに変われるかどうかの瀬戸際です。
二〇二三年五月三十一日
笑顔着リミット株式会社
代表取締役 有 木 宏 治
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