リミットネットワーク Vol.236


 いつもお世話になりありがとうございます。


一、 終わりなきパンデミック


 八月二十日の新型コロナ第五波の山が二五,八六八人と過去のピークと比べても格段に多くなりましたが、一日当たりの新規感染者数もようやく落ち着きを見せ始め、緊急事態宣言解除の方向性が議論されています。巷では灯火親しむ秋となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

 この調子で十月から十一月までの早い時期に、希望する日本国民全員がワクチン接種を完了する見込みであることを前提に、政府は行動制限緩和の基本方針を出すようです。我々はようやく日常を取り戻してゆけるのでしょうか?

 私ははなはだ疑問を抱いております。現にワクチンを二回接種した人でもブレイクスルー感染の実例が出ています。ワクチン接種者は重症化しにくいというだけで、感染しないわけではありません。さらにワクチンの必要性は明らかですが、現在のワクチン接種率からするとアジアや欧州では来年の4月から6月ごろまでに希望する全人口の8割接種が完了する予定ですが、アフリカなど遅れている国々が8割接種に到達するまでにあと3年半かかるといったデータもあります。また、これまでの感染者数の波を見ておりますと、約四か月置きにくらいに次の波が到来しております。仮に新型コロナウイルスの変異に周期などが関係するのであれば、今はただコロナウイルスが次の変異まで鳴りを潜めているだけなのかもしれません。

 ただし今のまま不確実性に気を取られ手をこまねいているわけにもいきません。今後もパンデミックを前提とした経営方針を打ち出し、新しい働き方や価値創造を継続するところに企業の未来はあるのですから。


二、 生産調整と縫製品質


 今月に入り朝晩はめっきり涼しくなり、秋冬商戦が始まりました。日本各地で緊急事態宣言継続中での厳しい商戦ですから、先月までの伸びは期待していませんでした。出荷は徐々に秋冬物に代わり、ありがたいことに一日あたりの出荷軒数も増え、小口ですが品番が複数にわたるケースが増加し売上も昨年に届きそうです。ただ備後のアパレル景況は相変わらず厳しく、これまで技能実習生が毎年入国して何とか稼働していた縫製工場も、コロナで二年連続交代要員が入国せず、帰国者ばかりとなったので工場を辞めるところも出始めたようです。海外もコロナ感染の影響でベトナムをはじめ納期に支障が出始めたと聞きますが、こういったカントリーリスクを回避するための国内縫製拠点が姿をなくしつつあります。

 リミットも売上が低迷するなか、過剰在庫削減のため生産調整をしております。ただ、海外中国工場も国内工場も自社工場です。最低ミニマムの海外工賃送金は必要ですので、採算は悪くなりますが一枚当たりの契約工賃を上げて対応しております。これまでのリミットの適正在庫水準まで下がるには来年いっぱいかかるのではと覚悟しております。それでも生産を一時的にストップしないのは、製品の目的品質を堅持したいからです。品質はリミットがリミットであるための存在意義なのです。


三、 王道とは?


 「リミットは納入向け作業服メーカーの王道を進んでいるよ」とは最近ある販売店の社長さんから言われた言葉です。こんな言葉をかけていただけるとは、過去のリミットへの評価を知る私には想像すらできないことです。私が入社した当時は「営業にも来ず、請求書は送付するだけで値引きもせず、支払いお願いの頭も下げない」とか「入金が一円でも足らないと自動で出荷停止にする商売を知らない会社」とお客様によく叱られたものでした。

 前出の社長さんに理由を聞くと、①三年間継続の総合カタログを創刊し、期間中は廃番無し、値段変更無し、掲載ページ変更なしに挑戦。カタログから外れた廃番商品も生地があれば生産してくれる。②ネット掲載在庫などが正確で、納期連絡が早く、別注も小口でもやってくれる。在庫があればFAXなら十四時まで、ネット注文なら十六時まで当日出荷してくれる。③毎月リミット通信をメール配信し、リミットが今何を考えているのかよくわかる。以上の三点は納入向け販売店にとって、商売上非常に重要なことであると教えていただきました。しかしこの三つのポイントなら、他社アパレルのほうが優れているのでは?と問うと、確かにかつてはリミットに勝っていたが、昨年から続くコロナ禍で他社の営業も訪問できなくなり、情報が無いまま突然の廃番・値上げが常態化しだした。これなら最初から訪問せず毎月情報提供してくれる御社のほうがマシだよ。とのことでした。

 時代は変わります。特に世界中が新型コロナウイルスパンデミックの渦中にある今は、更なる加速をもって世の中は変化し続けています。私自身、お客様からこのような評価を受けることは素直にうれしくもあり、反面今のままでよいのかと、どこか焦っている自分もいます。

 もし今、前社長が生きていてこの評価を耳にしたらなんとつぶやくか?聞いてみたいものです。



  二〇二一年九月二十八日
       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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