リミットネットワーク Vol.227



  今年も大変お世話になりありがとうございました。


一、 ウイルスの挑戦


 冬枯れの季節を迎えました。早いもので今年も最後のリミット通信となりました。

欧米に続き日本の新型コロナ感染は第三波をむかえ、経済の本格的な再開は難しい状況になりつつあります。今年初めにはこのような年になると、誰が予測できたでしょうか?

 しかしながら二十世紀後半以降、人間社会に新しいウイルスが次々と出現している現実があります。「エマージングウイルス」と呼ばれているそうで、天然痘の根絶以降もエイズをはじめとした、これまでになかった感染症が次々と人類に襲い掛かってきました。高い致死率や激しい症状などから、このエマージングウイルスによる感染症は世界に衝撃を与えました。ラッサ熱、エボラ出血熱、ハンタウイルス病など、これまでにも様々な伝染病が感染拡大を繰り返してまいりました。コロナウイルスのグループからは、二千年以降に三度もエマージングウイルスが出現しています。「SARS」や「MERS」、そして今回の「COVID-19」のウイルスです。

 エマージングウイルスは、様々な野生動物から繰り返し現れます。人間がその生息分布を広げ、自然を破壊し大規模開発を続けたせいで、野生動物との距離が近くなり、野生動物が保有するウイルスとも共生する必要性が出てきたのです。日本でも近年、里山崩壊が問題となり、市街地に野生のサルやイノシシが出てきて問題視されています。人間の都合で野生動物を一所に集め家畜化した結果、鳥インフルエンザなどの感染も拡大しています。

 新型コロナウイルス感染の問題は、これから人類がウイルスとの共生の道をどう探ってゆくかという自然界からの挑戦でもあるわけです。


二、 三十五年ぶりに創業の地で再出発


 コロナ禍でいつもの秋冬繁忙期の忙しさもなく過ぎた先月が終わり、十一月は防寒物の無いリミットでは本格的な閑散期となる時期ですが、今月は小春日和も多く、ロットは小さいながらも細く長く秋冬物の出荷が続いております。現在もコロナ禍対策として、日々の業務は皆様にはご不便のかからないように、社員を交代制でまわしております。予定としては来春までは続ける予定です。新型コロナの影響がいつまで続くか分からない現状としましてはいたしかたないと考えております。


 そんな中でも今月中旬には二日間の日程でユニウェアの来年度新カタログ撮影が無事終わり、現在、掲載写真の選定や掲載商品スペックの再チェックに余念がありません。クイック生産の拠点として五年前に新入社員だけで再始動した出雲工場も、ユニウェア商品はすべて縫製できるよう成長しました。備蓄在庫担当の中国工場もコロナ禍で一時はどうなる事かと心配いたしましたが、総経理が踏ん張ってくれて生産計画どおり稼働をしております。来月二十四日からは創業の地、新市に戻ります。来年からは製販一体となり、全社一丸となって女性着用者に喜ばれる作業服づくりに邁進いたします。

 ただここにきての第三波は、各国で政府の統制が急速に効かなくなってきております。「GOTOトラベル一時停止」か「経済優先」か?難しいかじ取りになります。この第三波が販売店皆様の営業活動に深刻な影響を与えないよう、ただただ祈っております。


三、 リミット研修センターの落ち葉拾い


 紅葉も終わり、枯葉の舞い散る季節になりました。最近週末にはよく新市のリミット研修センターの庭の落ち葉拾いに精を出しています。梅雨明け時期には雑草の草刈りに何度も通い、神無月には落ち葉を集めます。三百坪ありますので家族でしても数回通わなければ終わりません。先代もこんなに葉が落ちる広葉樹ばかりよく植えたもんだと、若い頃は頭にきていましたが、最近、落ち葉拾いが楽しく一人で集中してしまうのです。

 「遷移」という言葉があります。生物は、その時、その場所での環境に最も適応したものが栄えます。だが、ある生物が繁栄すると、その生物の繁栄自体が別の環境を作り出し、その環境が別の生物の繁栄する条件を生み出します。そのような変化のことを言います。

 庭に転がっている岩石に苔が生えています。苔は岩石を侵食して土壌を作り、そこに小さな植物が育ちます。そうやってだんだん岩石を土壌に変え、数年たって大きな植物が育つようになりました。やがて小さな木が育ち、大きな木が育ち、森林が形成されてゆきます。そうやって自然界は長い年月をかけ、万物が常に変わり続けます。

 このようにその時代に最も栄えているものは、常に次の時代に栄えるもののために土壌を用意しています。しかもその適応能力はプランクトン、バクテリアやウイルスなどの下等生物ほど主としての生命を長らえています。こういったことから考えれば、高等生物である人類は危機に弱く、真っ先にやられるのが人間なのではないでしょうか。だからもっと自然を恐れ、畏敬の念を持って対してゆかなければ。などと考えていると、コロナ禍の落ち葉拾いも有意義なものになるのです。

 

 忙しい年末を前に、皆様お体に気をつけてお過ごしください。



  二〇二〇年十一月三十日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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