2020年 6月号



 いつもお世話になりありがとうございます。


 一、これまでの常識が非常識になるとき


 梅雨の晴れ間の青空はすっかり夏色になりました。蒸し蒸しとする日は、マスクをするのもおっくうになります。

 大都市を中心にまたコロナウイルス感染者が増加してきております。梅雨の長雨が続くと西日本豪雨災害が頭をよぎります。今年の避難場所確保にはコロナウイルス感染にも留意しながら設置場所を選定しなければならず、行政府も頭を抱えているそうです。新型コロナという外的要因によって、偏ったグローバル化や格差の存在など行き過ぎた資本主義の問題点が否応なく浮き彫りになりました。我が業界でもこれまであたりまえだった大量生産・在庫・廃棄といった商流から、いかにサスティナブルを目指し、価値ある服を大切に、長く着てもらうかという視点が重要になります。これまでの「当たり前」を疑ってかからなければ、次の変化に対応できなくなるかもしれません。


 二、本社を新市へ


 先月号でも少し書きましたが、この数カ月コロナウイルスにより突然、非日常の生活が続きました。弊社でもリモート在宅勤務や交代勤務など、新しい働き方を迫られました。パンデミックはデジタル化を加速し、従来の働き方を変えました。そこで私はふと、「本社を日本生命ビルから新市工場に戻そう」と閃きました。振り返れば芦品郡新市町から福山駅前の日本生命ビルに入居して三十五年。今ではビルには弊社以外すべて上場企業しか入居していません。問屋を省き、全国の販売店の皆様とカタログによる通信販売を夢見た当時は、非常に価値のあった挑戦でした。優秀な人材も福山駅前に越してから、たくさん入社してくれました。日本生命ビルという看板がリミットを大きく成長させてくれました。このビルには本当に感謝しています。

 あれから時代が流れ、新市町も芦品郡から福山市に変わり、通信や交通の便も大きく変わりました。今では駅前にある大手ビルも空きテナントが増えました。理由は大手の支店合併で福山支店が無くなったのです。リミット本社には管理部門の八名が在籍しています。新市工場にはその倍の人数がいます。コロナ禍でのリモート在宅経験で、これからはどこにいようがデジタルのおかげで社員はもとより、取引先ともリアルタイムで繋がれます。新市に戻れば、製販一体となり、業務のリードタイムも短縮化され合理化に繋がります。そこで今年いっぱいでここを出て、新市工場を改装し二〇二一年一月より縫製・配送センターと合体します。実は新市帰還はリーマンショック時にも頭をかすめましたが決断できませんでした。先代の日本生命ビルに賭けた想いに私自身が執着しすぎていました。今になって思うことは、この決定は判断力や決断力ではなく、勇気だけだった思います。


 三、カタログでも新しい試みを


 今月も二桁減収で終わりました。それでも取引軒数はあまり変わらず、ありがたいことに追加の小ロット注文を引き続きいただいております。来年からの再始動にあたり、従来の業界の商習慣についても再検討しました。それは年間カタログについてです。来月からプラスチック製レジ袋が有料となります。サスティナブルな社会を目指し「脱プラ」生活への変革は着実に進むでしょう。翻って各アパレルの商品カタログですが、販売店の中には毎季毎季各メーカーから送付される大量のカタログの廃棄が大変だと伺いました。せっかく営業マンが定番商品の掲載されているページを覚えても、次号では同じ掲載が違うページに移り、毎回覚えるのも一苦労だと愚痴をこぼされていました。コロナ禍ですでにデジタル化を即す電子カタログへの転換が持続可能な社会には一番良いのですが、一足飛びにはいかないようです。

 そこで、リミットの来季カタログは、三年間同じ掲載のものを使用していただこうと考えております。もちろん、年間使用されると痛みも出ますので、毎期追加をお送りしますし、毎年新商品の掲載されたエンドユーザー配布用の小冊子を作成して一定部数送付いたします。三年間同じカタログということは、掲載商品は紡績が使用生地を廃番にするなど特別な事情が無ければ原則、三年間は廃番無しです。価格も原則変わりません。販売店や着用企業にリミットの女子作業服着を安心して、末永く採用していただくには、この方法が一番良いのではと考えました。


 コロナ禍を経て、以前のライフスタイルや社会に戻ることはありません。自分自身で更に豊かで創造的な新しい社会を創造し、一歩を踏み出しましょう。



  二〇二〇年六月三十日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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