2020年 2月号



 一、気候変動、新型コロナウイルス肺炎
   流行のなかでの新年度


 いつもお世話になりありがとうございます。

 いよいよ新年度が始まります。大安の四日、大日本印刷様、福山通運様に列席を賜り、備後一宮宮司主催のもと、二〇二〇年リミットカタログ出陣式を無事執り行うことができました。この恒例行事も、今年は少しばかり取り巻く環境が違っています。

 例年ですと寒さの中に少し春の訪れを感じる季節ですが、福山、二月も半ばを過ぎての初雪でした。南極では今月六日に観測史上最も高い気温十八度を観測した模様です。オーストラリアでの森林火災と豪雨の非常にアンバランスな現象は、もはや不気味としか言い様がありません。そうしたところに、新型コロナウイルス肺炎が世界的な脅威になってしまいました。世界は人知を超えた領域に突入しているようです。次から次へと押し寄せる衝撃に、想定内という防波堤は軽々と飛び越えられ、ただただ唖然とするばかりです。

 こうした変異は、経済にも大きなマイナス要因になりつつあります。今期は、このような状況の中でスタートしました。より一層の危機感を持ちながら、情報収集にあたり、次代に向けての第一歩を踏み出します。


 二、福州工場は来月から全面稼働予定


 今月の商況ですが、中旬は一時的に寒さが戻り、概ね昨年並みで推移することができました。しかしながら心配なのは、すでに書いた新型コロナウイルスが猛威をふるっていることです。一体いつ終息するのでしょうか。

 今回の件では、全世界のあらゆる領域に与えている中国の影響力がいかに大きいかをまざまざと見せつけられました。私も福州の総経理と緊密に連絡をとっています。春節中、福州の総経理に新型コロナウイルス肺炎には十分気を付けるようにとのメールを送りました。総経理からは先月末、マスクがないので送ってほしいとの依頼があり、品薄になりつつあるなか、何とかかき集め福州に送りました。その時点では九日までの休業予定だったのですが、それが十六日になり、最新の報告では、地域行政の命令がとても曖昧で、事前申請、検疫検査などいろいろな条件をクリアしないと操業できない状況のようです。また、従業員の半数近くが復帰予定の春節明けになっても到着していません。みんな福州以外からの出稼ぎで、各地で実施されている交通閉鎖で故郷から出ることができないのです。

 総経理は、日本から福州に進出している他の縫製工場とも連絡をとり、情報交換をしているようです。それによると、出稼ぎの従業員専用寮を持っている工場では従業員が戻って来ても問題ないのですが、賃貸住宅で暮らしている従業員たちは、アパートの大家さんに戻ってくることを警戒されているといった噂も出ているようです。福州工場では、大半が賃貸暮らしです。したがって総経理は、ウイルス感染がある程度落ち着き、各地方行政が隔離政策を解除するのに今月いっぱいはかかると予想したうえで、全面的な再稼働は、来月からになりそうだと連絡してきました。


 三、安全な商品を十分備蓄


 結局、ひと月の休業ということになります。ですが、今のところ商品の心配はありません。昨年の商況が悪かったこともあり、春夏定番を中心に製品在庫は十分備蓄しています。今年は少し減産しようかと考えておりましたので、結果的に生産計画としては整合性がとれました。総経理には、工場再稼働の条件としてすべての安全・安心が確保されてからと伝えていますので、再開後も製品の質にも量にも問題はありません。ご安心ください。

 ただ、世間をここまで騒がせている問題でもありますので風評問題も出てきます。すでに、今回の新型コロナウイルス肺炎の件で二軒のお客様よりご質問を頂きました。「縫製担当者が万が一感染者だった場合、その製品に付着しているウイルスの感染能力の保持期間はどのくらいなのか?」とお問い合わせがありました。調べましたところ、ドイツの研究グループが研究結果を発表していました。新型コロナウイルスをドアノブやテーブルに付着させた実験では、ウイルスが感染力を保持するのは、最大九日間であるとのことでした。生地の場合は正確な感染力保持期間は把握しておりませんが、船便での輸入は、約一カ月間かかります。その後倉庫に入荷となりますので、万が一ウイルスが付着しても何ら問題ないと考えております。


 四、出はじめた国内経済への影響


 新型コロナウイルス肺炎の流行は、深刻な影響を国内生産にも与えているようです。各地の他社縫製工場では、実習生がまだ戻らず開店休業状態になっているところもあるようです。リミットの国内生産には新市・出雲のいずれにも外国人技能実習生は採用しておりません。完全に影響はありません。また、従業員は戻っても、生地や付属品が中国から入ってこないので稼働できないという状況が発生しているそうです。

 他業種でも影響は深刻です。これまで景気をけん引していた観光・宿泊業界を中心としたサービス業にも甚大な影響を与えています。インバウンド需要が一気に低迷してしまいました。

 一方の中国自体も、このままですと生活危機、産業危機、金融危機が急速に深まり、世界的な秩序崩壊が一気に進むという懸念もあります。そういった意味では今年二〇二〇年は大きな転機の年となるかもしれません。今は一刻も早く事態が収束することを願わずにはいられません。



  二〇二〇年二月二十五日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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