2020年 1月号



 一、画一性の終わり、二〇二〇年


 皆さま、今年もよろしくお願いいたします。

 大寒を迎えようやく広島でも寒いと体感する朝があります。ですが、この冬は初雪が観測されていません。これは、八十五年ぶりの記録だそうです。夏は夏で猛暑や大型台風の襲来で被害が予測されます。こうした気候変動による変化は、これからの産業構造や商様式に大きく影響します。資本主義そのものを根本的に見直さざるをえなくなるとの主張も合理的と思えます。それほどまで矛盾が可視化してきております。当然、人の価値観にも影響します。

 今年は二〇〇〇年生まれの若者が二十歳を迎え、消費の担い手として本格的に市場に登場してきます。このデジタル・ネイティブ世代はすでに世界人口の三人に一人の割合になっています。この世代は、バブル経済を知りません。ですから、多様な価値観をもち、金やモノへの執着よりも、共感、環境、人権などに関心が高いのです。経済状況が良くなくても生活満足度はさほど悪くないと感じる人が増えているとある新聞に出ていました。この意味でも従来の資本主義的生産の見直しが求められていると思います。

 オリンピックイヤーの二〇二〇年、これまでの画一的な大量生産・大量消費の時代がまさに終わりを告げます。新しいことにチャレンジしてゆく新春到来です。


 二、多様なミレニアル世代の
   価値観に対応する


 今月は決算期です。今期は春から非常に苦戦を強いられ、今期の売上は一割減になりました。去年の景況感が尾を引き、その上、米中貿易摩擦の影響が日本の製造業の足を引っ張っているとなるといたしかたないと思います。

 年が明け、値上げの問い合わせが多く入ります。ご安心ください。今年は、値上げをする予定はありません。来月四日には恒例のカタログ出陣式を経て二〇二〇年新カタログが全国一斉発送されます。どうぞよろしくお願いいたします。

 苦戦の客観状況をもう少し分析すると次のようなことが言えるのではないかと思います。製造業からの工作機械受注の回復はなお遠く、緊急性のない制服更新は後回しになりがちです。それでも今までの傾向では延期であって、必ずリピートがどこかの時点で再来していました。しかし、二〇〇〇年代に成人・社会人になるミレニアル世代はモノの所有欲が乏しいミニマリストが台頭しています。デジタル技術を使いこなし、個人間取引やシェアリングサービスに慣れ、環境や問題解決に価値観を持つこの世代はモノを必要としません。

 これに対応するには、制服文化の本質に立ち返ることです。それは、新しい資本主義的生産を創造することです。制服文化は、もともと環境に優しい、資源を無駄にしない価値観を内包する文化だと考えます。いかに長期間着用されるか、職場の安全・安心、企業としての信頼・評判・共感を提供できるか、個ではなく集団としてのワンチーム意識を醸成できるか、欲望がモノから感情へ移行している今、こういった目に見えない文化資本を大切にする成熟した資本主義への移行が、需要不足による低迷からの脱出に繋がると信じております。


 三、新しい情報発信へ。
   リミット通信を廃止


 では、具体的に何を目指すのでしょうか。

 昨今の空調服旋風もカジュアルスポーツ・ティストも、女性インドア職種を中心としたリミットには門外漢です。私の目指すリミットは、今後においても笑顔で働く女性を尊重した制服を製造してゆきたいと思います。カジュアルスポーツは一般衣料やスポーツメーカーに任せておけばいいのです。

 また、時流に乗った流行り廃りを追うことは、海外生産で備蓄を主体とした生産体制を根本から否定してしまいます。ある程度一定期間のリピートがあるから、量産・備蓄をして現状の価格維持ができているのです。毎年新商品を中心に売り切ってゆく一般衣料のような商売なら、競合メーカーは星の数ほどいます。ミレニアル世代は、それに動じず新しい価値観に基づいたパラダイム転換に邁進します。その価値観の多様性を充足するとともにかつコストの問題を両立しなければなりません。

 私も会社も、今年で五十路を迎えます。「五十にして天命を知る」とは君子の領域で、私ははるか遠いところにあります。そうあるためにもがき苦闘する決意をしました。四日の新年互礼会では、社員の皆に現状維持バイアスを外して、二〇二〇年代到来をビジネスチャンスに結び付けられるようお願いしました。

 そして、まずは隗より始めよ、新年度四月よりこの毎月郵送しておりますリミット通信をメール配信に切り替えることにしました。リミット通信は、先代から三十五年、私が引き継いでから十二年になります。紙に印刷してお配りすることによって「形として残るものだから信念を持って書け」と戒めた先代を懐かしく思い出します。しかし印刷物を送付する形ですと、同封いたします商品情報「着てみてください」などの訴求ツールがどのお客様にも一律になってしまいます。リミット通信の内容も結果的に一律になります。

 今年は5Gの動画配信幕開けです。これからはご購入いただいている商品傾向を分析し、販売店ごとのパーソナルな有益情報をご提供すべく、必要な方に必要な情報をお届けするという決断をいたしました。将来はさらに発展させ、お互いに一対一のインタラクティブな情報交換ができればと考えております。

 紙媒体よりデジタル媒体の方がよく残ります。ゆえに、これまで以上に信念をもって情報を発信します。新しい方法には、三月中に皆さまに継続配信意思のご確認をとらせていただきます。お手数ですがよろしくお願いいたします。



  二〇二〇年一月二十五日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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