2019年 11月号
一、「和たらしむ」時代にむけて
いつもお世話になりありがとうございます。
穏やかな日差しのなか、銀杏の葉がはらはらと舞い落ち、地面が金色に輝いています。
早いものでリミット通信も今年の最終号となりました。これまでと同様、令和元年は駆け足で過ぎていきました。
先日、大嘗祭が執り行なわれ、儀式を通して時代の節目を実感したのですが、皆様にとって令和元年はどんな年だったでしょうか?先般の台風被害をはじめ今年も災害の多い年となり、大変な思いをされた方もたくさんいらっしゃいます。来年は令和に込められた「和たらしむ」という意味の通り、穏やかで平和な年になるよう願います。
二、様変わりした市場に対応するために
さて業績ですが、今月も先月に引き続き出荷状況は低迷しておりました。しかし、中旬からようやく定番商品にも動きが出始めました。暖冬のなかどこまで追い上げることができるかといった模様ながめの状況です。景況感は全体的に依然厳しく、来春くらいには商戦の景色も変わってくれればと祈るばかりです。
そんななか、大阪で行われたユニチカのユニフォーム素材展示会に行ってまいりました。毎回、時流を意識し工夫された展示の仕方に興味津々で説明を聞かせていただきました。「エシカル」や「サスティナブル」など時代を象徴する特徴を持った素材を、ユニフォームだけでなく、スポーツや一般衣料をも取り込んで、より幅広く訴求することに感嘆させられました。そして、その背景にある危機感をも感じとりました。
人口減少時代の到来で、ユニフォームの既存市場は、明らかに縮小傾向にあります。従来のように量を追うビジネスを継続するなら、顧客ターゲットを広げる必要があります。ですから、ワークマンプラスのようにプロ仕様のユニフォームを一般ユーザーに広げたり、逆にユニクロのように充分な品揃えをし、それに刺繍を入れることで普段着をユニフォームにしたり、これまでの垣根を越えた競争は激化するばかりです。従来の問屋や代理店などの納入業者を主体としたユニフォーム流通も、インターネットの浸透により様変わりしました。良い意味で武骨だった職人の店などのショップ展開も、一般人を意識した洗練された店舗構成に変わりつつあります。
三、求められる能力とは?
目まぐるしい変化に対応して、私たちアパレルも従来の継続を意識した定番を備蓄する方法から、新商品主体の単年売り切りの商品開発に着手する例も出てまいりました。背景にはブランドにこだわらず毎年、値段もデザインも違う揃いものをネットで手軽に買って着たい、というエンドユーザーのニーズがあるのかもしれません。
しかし、このような流れが主流になれば、販売店が現在取り組んでいる商品提案型のビジネスは、大手以外の中小零細企業においては激減するでしょう。それに対抗してゆくためには、個別の顧客企業が大切にされている信条や取引先との信用などの目に見えない資産を、プロの販売店の目で具体的なデザインや配色で可視化するという方法があります。職場の誰もが愛着をもって着続けることができる制服の提案などのきめ細かいサービスを充実させるのです。その場合に求められるのは、顧客企業の要望を咀嚼する販売店の能力と、それに対応するアパレルの別注提案力とデザイン力、そして生産現場のクイック生産力になるでしょう。それはそれで、今にはない高い能力が必要です。
四、矜持を保つ
ではその「要求」への対応に活路を見いだす方法論に、衣服の企画からデザイン、製造、販売までを担うアパレルとしての矜持を保つことができる何かがあるのでしょうか。ユーザーの業種を絞り込み、観察し、動き易さ、安心・安全を吟味しながら自信を持って打ち出した定番商品はもう売れないのでしょうか。それはちがいます。アパレルとしての哲学や商品開発思想をもっと自信をもってユーザーに訴求してゆく努力もより求められているはずです。
令和という新しい時代は、これからますます混沌と流動を繰り返しながら変化変身してゆきます。それは容赦なく押寄せて、その変化への善し悪しの価値判断は通用しません。その変化変身に時には沈思黙考し、一歩一歩進んでゆきたいと思います。
今年も一年間本当にありがとうございました。来年も女性ユニフォーム専門アパレル、リミットのユニウェアをどうぞよろしくお願いいたします。
二〇一九年十一月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 宏 治
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