2019年 7月号



 一、今、進むべき方向を考える


 いつもお世話になりありがとうございます。

 例年なら梅雨が明け、空の青がひときわ眩しく感じられる時期なのですが、今年はまだ雨模様です。関東地方では天候不順で、都心では十八日間連続で日照時間が三時間未満と過去最長を更新しました。心配された農作物への影響がすでに現れています。

 また、この冷夏で夏物衣料販売への悪影響も続き、ビジネスの不安定さにさらに影響が出そうです。参院選後には、間違いなく消費税増税が実行されるようです。折からの不景気が世界的に広がる中、年後半もしっかり会社の地歩を固める必要がありそうです。

 守りに入るのではなく、今のうちにこの先の企業戦略や進むべき方向についてしっかり考えたいと思います。


 二、経験と勘を排して


 リミットの今月売上は、梅雨入り梅雨明けともに遅れたわりには、昨年並みで推移しました。受注時期が遅れたため、大口注文が増えて受注残が増加しました。よって今月、受注残を少しでも減らすため、年間を通して変形労働時間を採用により本来なら閑散期対応の新市工場では、十七時終業を変更し十八時終業に延長してがんばってくれています。一時間の残業をお願いしているわけです。

 五月以降、夏物の動きが緩慢だったため、昨年比での製品在庫は定番を中心に在庫が多く残っております。例年なら、梅雨明けと同時に蝉の声が賑やかに戻ってきて、商品も活発に動いているはずですが、今一歩というところです。来月になってやっと一斉に商品が動くのでしょうか?また、消費税率引き上げが前回のように駆け込み消費をもたらし、ブームのようになるのでしょうか?
 以前にも書きましたが、今は過去の経験や常識が全く通用しない時代です。消費税率の引き上げがもたらす結果について、経験と勘では予測を出せません。とくに成功体験を参照する方法ではリスクは高くなるようです。どのような不確定な状況にも対応できるアイデアの「引き出し」を多くもつ必要があるでしょう。


 三、変わる社会の要請、企業理念も変わる


 リミットは長年、働く女性の作業服に特化し作り続けてまいりました。長い歴史の中では、男性作業服メーカーさんが営業先で、女性物ならリミットさんにお願いしてみたらと、逆に紹介していただいた時代もありました。

 時代は流れ、作れば売れた時代からバブルがはじけ、ほとんどの企業がかつての好循環から一転、売上が激減しました。何とか売上を戻すため、安全靴を販売したり男性メーカーもペア企画で女性物に力を入れたりし始めました。同じようなモノを売っていた競争から抜け出すため、新たなカテゴリーキラーも生まれ、カッコいい作業服というジャンルも登場しました。今では各メーカーが独自色で勝負する新たな競争時代に突入しました。

 それは、社会と時代からの要請です。たとえば、LGBTなど性的少数者の人権擁護など、男女差を強調せず、人そのものの多様化を認めあう時代を迎えました。広島のある大手企業でも、LGBTと制服の関係を議論しはじめています。好むと好まざるにかかわらず、激変する社会は、企業にも自己変革を求めています。

 そしてその社会の要請する新しい理念や新技術の導入がはじまり、世界が一変するような未来がすぐそこまでやってきているような気がします。少々ジャンル違いですが、最近セブン- イレブン・ジャパンも設立当時の売り文句だった「二十四時間営業」の一律適用を断念しました。各地のオーナーからの強い要望を受け入れざるをえなかったようです。かつての長所が、時の変化で短所になります。

 リミットは、こうした新時代の到来を予感し、コンテンポラリーな、黒一色を特徴とした「b×c」(ビーバイシー)ブランドを二〇〇六年に誕生させ、順調に育ってきています。「b×c」は、また時代の劇的な変化にも対応するポテンシャルがあると思います。
 一方で、改めて今後のリミットの女性作業服「ユニウェア」ブランドを考える時、やはり従来から持ち続けている女性ならではの「カワイイ」に特化し、男性メーカーのペア企画とは一線を画すキュートでガーリーなブランドコンセプトを更に深く追求します。

 そうしたブランド力を前提として、最後に残るのは、高度な縫製技術をもった、多品種・単品生産のできる生産組織だと信じ、この部分に徹底してこだわってゆきたいと思います。

 そして、リミットの企画開発は、既成概念に囚われず、時代に即した新商品開発に全力を挙げて取り組みたいと考えています。どうぞ今後ともカワイイ女子作業服「ユニウェア」と革新的な作業服「b×c」を宜しくお願いいたします。

 なお、来月は久しぶりに中国 福州工場に行ってまいりますので、来月の通信では訪中時のご報告もできるかと思います。楽しみにしてください。



  二〇一九年七月二十五日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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