2019年 3月号



 一、景気に陰りか。貿易統計の見方


 いつもお世話になりありがとうございます。

 今朝は木蓮の花に菜種梅雨が潤いを与えています。スギ花粉に悩まされている私としては、そのすがすがしさもほどほどです。嫌な時期ですが、もう少しの辛抱です。

 「ひと雨ごとに春が来る」といいますが、二月の貿易統計をみると、景気は、ちょっと「寒の戻り」感がします。発表された貿易統計の内容は、輸出入どちらも減少です。とりわけ輸入は、六・七%も急落です。仮に、原材料や部品の輸入が減っているのだとすれば、これまでの経済成長が止まっているか、はたまた悪化していると考えられます。

 ただし、数ある不安要素のみを数えると何が起きているのか、その真の姿は見えません。バランスよく客観的にデータを観察、分析しなければならないでしょう。統計は見方、読み方が重要です。


 二、好調のリミット、
   国内外の生産体制の現状


 一方リミットはというと、今月は中旬あたりから春らしい陽気に正比例するように、ようやく本格的な活動期を迎えました。来月には新卒者も入社します。現場も心機一転、これからが本領発揮です。出荷状況も日を追うごとに増えてまいりました。この調子ですと昨年同月出荷実績に手が届くか、といった状況です。

 通常、この時期には別注別寸の注文が多く、今年も例年の如くの状況です。国内二工場は多忙を極めております。ご注文いただく品番種類も本当に多岐にわたっています。大口注文もいくつかいただき、納期を待っていただくケースも出てきております。

 そこで生産のバックグラウンドについてご説明しておきます。

 まず国内からです。

 出雲工場は縫製未経験者の新人だけで再始動を始めてから四年目に入りました。今までリーダーとして皆を引っぱり、生産を軌道に乗せるために頑張ってくれたライン長が今月末より産休に入ることになりました。現状では生産性の維持に不可欠な人材ですが、彼女の不在をチャンスに変えたいと考えています。減産を少しでも食い止めることで全体のスキルアップを狙います。先月から先行的にライン長抜きでの生産を始動し、問題点を早目に洗い出し、解決に皆で必死に取り組んでいます。ライン長が職場復帰を果たしたときには、驚くような成長をしていることでしょう。彼女が復帰すれば、さらに充実した生産体制が整います。

 この状況を見越して国内新市工場では先月、新たに縫製経験者二名を採用し、四月には新卒一名が入社します。慣れるまでしばらく時間はかかりますが、一生懸命教育してリミット品質を厳守しながら、少しでもクイック増産できるよう最善を尽くします。ご迷惑をおかけするかも知れませんが、必ずよい結果を出します。

 次に中国工場の生産体制についてご説明します。今年も例年のように、春節明けで従業員が突然離脱するというリスクを心配しておりました。春節が明けてすぐ中国の総経理にメールで問い合わせました。全員出社していると返事があり、胸をなで下ろしました。この安定感は、去年の今ごろ、総経理が工場運営を抜本的に改革してくれたことから来ています。中国景気に陰りが現れていることも多少影響しているとは思いますが、一時的な生産の混乱を覚悟して英断を下した総経理に感謝しております。


 三、消えゆく国内縫製工場と技術の継承


 先般、知り合いの方が突然新市工場に尋ねて来られ、幼稚園児の制服を縫製してもらえないかと話を切り出されたそうです。残念ながらリミット製品の生産で手がいっぱいで、とてもイレギュラーな生産をラインに投入することはできません。工場長は、その旨お伝えし丁重にお断りしたと報告を受けました。このような話をここ数年よく聞きます。

 それは、国内縫製工場がそこまで消えて無くなってしまっていることを意味しています。しかも仕事で一杯なのに、各工場が利益を出しているわけではないのです。どうしてこうなってしまったのでしょうか?

 技術というものはひとたび消えると簡単には再生できません。今後国内で生き残ってゆくためには、高付加価値商品に向かってゆくしか道はありません。しかし、技術の継承なくしてそれはありません。私は心底そう思うのです。

 アパレルの命ともいえる工場運営は本当に難しく、頭を悩ますことばかりです。一つの問題が解決したかと思えば、同時に次の難題が生まれます。一旦生産が躓けば、元の生産計画に追いつくのに長い月日が掛かります。追いついたところから本格的に備蓄在庫が作れますが、躓けばまたふりだし。ほとほと参ってしまいます。しかしそれでも待っているお客様がいます。生産現場にとって、目的品質と短納期という二大命題は永遠の課題です。昨年末より本格的に月に二日間、縫製工場技術管理指導者の先生にお越しいただき、工場全員が技術指導を受講しております。リミットは一歩一歩でも必ずやり遂げます。



  二〇一九年三月二十五日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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