2018年 5月号



 一、中国工場生産計画未達成を
   国内でリカバリー


 いつもお世話になりありがとうございます。

 山の緑は、萌黄から深緑に変わりつつあります。先月から初めての仕事、新しい職場にステップ・アップした人たちも、ようやくそれぞれの業務に慣れてきたところではないでしょうか。これから夏日も増え、体調管理の難しい時期となります。高温多湿の鬱陶しい日々が続きますが、いつも初心にかえり、心まで曇らぬよう心掛けたいものです。

 リミットの業績は、大型連休後少し落ち着き、結果として先月と合わせて昨年並みです。

 しかし、問題もあります。現在、三十枚程度の別注品やサイズ切れ商品などによる受注残が昨年より多い状況になっています。そんな事情で、皆様には大変ご迷惑をおかけしております。これは、中国工場が計画通りの生産を達成できていないことに起因します。従業員の出入りが頻繁で、まだ新しい運営方法が定着していないのです。今秋までには必ず増産体制を確立いたします。

 目下のところ、国内の二工場を中心に総力を挙げて縫製し、リカバリーに努めているところです。中国からも毎月航空便を飛ばして対応しておりますので、誠に申し訳ございませんがもうしばらくお待ちくださいますようお願いいたします。


 二、電動ファン作業服好調の余波を考える


 今月は、寒暖差が厳しかった割に、季節が前倒しになり、半袖を出すのも早かったように思います。

 ところで、お客様の中には、他メーカーの春夏物定番の納期が今秋になるといわれた方もおられると聞いています。つまり、国内でのフォローを止めている品番も多々あるようです。このちょっとした異変の理由は、一気に市場が膨らんだ空調服への対応に追われ、それが人手不足など起こして、既存商品生産がタイトになっているのかもしれません。

 電動ファン付き作業服の市場は、政府が主導している「働き方改革」を背景にしています。また、各企業の労働環境の改善やクールビズなど地球温暖化の影響もあり、酷暑下での労働を助ける服として、一気に市場が膨らみました。こうした問題に作業服業界が貢献することは非常に誇らしく、また、先見の明があったと素直に喜んでいます。一気に膨らんだ空調機能付き衣服の需要は、今後海外にも波及し、飛躍的進化が予測されます。作業服業界だけではなく、帝人はすでに総合電動工具の㈱マキタと共同で新構造のファン・ジャケットを開発しております。餅屋は餅屋です。

 企業で働く人だけでなく、気温三十度以上の猛暑のなか外出する人をターゲットにすれば、世界市場はとてつもなく大きくなり、その大きな需要にこたえるべく、専門の大手電機メーカーや家電メーカーが必ず参入してきます。これは、業界の構造的な変化をもたらすかも知れません。将来において作業服専門のメーカーはこの状況に対抗できるでしょうか?


 三、人手不足と人件費高騰なのに
   安売りの弊害


 異変のもう一つの理由は、安売り合戦が起きていることではないでしょうか。年々厳しさを増す国内縫製要員の圧倒的不足と人件費高騰が起きているにもかかわらず、それでも安売りが止まらないのです。これで、弊害が出ないわけがありません。労働者不足という生産性に直接影響する事態を作業服業界全体が、その流通にいたる隅々までトータルで改めて考えなければなりません。現状の業界の流通形態が大元の生地メーカーから大きく変容し、アパレル、販売店へとそのうねりは波及し、エンドユーザーへの提供方法が大きく変わろうとしています。

 批判がましい発言で恐縮ですが、春夏物定番の納期が今秋になると、簡単に宣言するメーカーは、この変容についてゆくことができていないのではないでしょうか。作業服は同一商品が一定の企業で使用が更新され継続されることを前提に製造され、同時に市場戦略が練られます。新しいものを生み出すことは企業の使命で大変重要なことですが、不良在庫の山をつくらないようにしながら需要にも応えることができる次の一手を打つことが最も大事だと思います。これについていけているのでしょうか。

 作業服とは何か?継続するとはどういうことなのか?それはどうすれば可能なのか?を真剣に考える秋(とき)が来ました。


 四、将来給料アップ№1、「縫製工」
   さらに技術革新を


 先般、業界新聞が『週刊現代GW合併号』の「AIが完全予測/これから給料が下がる仕事、上がる仕事」という特集記事にコメントを寄せていました。それは、「給料の上がる仕事」のナンバーワンに、縫製工がランクアップされているのに驚いたというものです。給料が上がると予想する理由は、アパレル業界の業態にさらに変化が起きていることです。既製品を大量生産・大量販売するやり方から、顧客それぞれの体形に合ったオーダーメイド商品を多品種生産・少量販売する動きが急加速しているからだといいます。オンワードは、百貨店の外商が背広のオーダーを販売するような方法での販売をはじめています。最短納期一週間だそうです。こうなると、多様化、細分化した製品作りに対応できる技術力が必要となるので、技術力を持つ日本の縫製工の需要が高まるのです。

 ちなみに、「給料の下がる仕事一〇〇」では、四十一番目にスタイリスト、四十五番目にアパレル営業がランクされていたそうです。

 リミットの国内縫製工場は、月に一度、高度な技術習得のための研修日を設けております。これまでも、これからも、更なる匠の世界を目指して日々精進を続けます。



  二〇一八年五月二十五日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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