2018年 4月号



 一、突然の夏日、失われる合いの情緒


 いつもお世話になりありがとうございます。

 気候のせいもあってか、出荷は、夏物定番を中心に日ごとに好調になりました。これ自体は、うれしいことですが、情緒が失われていくことは、何とも淋しいことです。いま外を見ると四月中旬だというのに、初夏の日差しに皐月が咲き誇っています。私には、この風景の向こうに懐かしい季節の移ろいが浮かんできます。それは、桜の花が終わる頃、再び訪れるひんやりした風に、しまいかねたスプリングコートやスカーフをまとって外出する人の姿です。特に今年は、桜の開花も例年より早く終わり、はや四月二十日には、突然の夏日を観測した地域もありました。突然半袖が闊歩しています。街中で合服の方すらお見かけする機会がありません。

 女子作業服でもここ数年、合いの時期に着用する薄手長袖の需要が年々減ってきております。職場でも町でもその装いの移ろいを目にして視覚的に時候を楽しむ機会が奪われるのは心底残念に思います。

 個人的には気が滅入る日々も続きました。気温の上昇とともに、杉花粉、檜花粉も多く発生し、おまけに黄砂やPM二・五が大陸から飛来していました。空が生成色に霞んだ日も多かったように感じます。その影響でしょうかここ数年落ち着いていた花粉症もぶり返し、せっかくの陽気どころではなかったのです。聞けば、突然花粉症を発症された方も多かったようです。皆様も外出時はマスクなどして、くれぐれもご用心ください。


 二、廃番にならない理由


 ところで最近販売店の皆様からのご質問で気になるものがありました。
 それは、リミットでも長年御愛顧頂いている定番スモックに関するものです。「○○○のスモックはもう廃番ですか?」とか「△△△は廃番傾向でもう作ってないの?」といったお問い合わせが頻繁に寄せられています。

 スモックというのは、リミットが一番力を入れている商品です。お問い合わせの都度、お客様サービスセンターでは、継続して生産していることをお伝えしています。廃盤になどいたしておりませんのでご安心ください。しかし、それにしても最近こうした質問が非常に多いことに首を傾げておりました。

 各販売店の営業の方も若手男性に代わり、リミット年間カタログでスモックに注目されなくなったのかも知れません。そして、昭和っぽいそのデザインやシルエットを古臭いと感じられているのかも知れません。ということは、同じスモックでも、やはりその時代の雰囲気をデザインやシルエットに取り入れた新商品開発をし続けなければならないということでしょうか、という考え方も成立します。

 ところが現実は、これまでスモック姿の従業員さんを企業スタイルとして大事にしてこられたエンドユーザーもいらっしゃるのです。廃番にならない理由は、そういうユーザーがおられ、年間でそれなりの数量が継続出荷されているからです。リミットが作っているものは、流行モノの一般衣料ではありません。女性がそれぞれの職場で安全に、快適に働ける作業服、働く誇りを生み出す衣料です。ですから、長年その企業でご愛顧いただく制服、継続に値する作業服を作っている自負があります。暑い時期でも風通しのよいスモックは、年間を通じてのいわゆる鉄板商品であり、リミットの代名詞です。どうか長年ご愛顧頂いているリミットスモックを、安心してエンドユーザーにご紹介ください。


 三、労働時間を減らして生産性を上げる?


 少子高齢化のなか、人材を確保する意味と価値はますます高まっています。政府は、経済再生の柱に据える働き方改革の関連法案の整備も進行させています。それは、労働時間を減らして、会社の売上や社員の収入を増やすというのですが、果たしてそれが本当に可能なのでしょうか。現状では、こんなに優秀な日本の労働力が必死で働いて、OECD加盟三十五ヵ国では、十七位です。昨年より若干上昇したのですが、それでもG7国では最低です。その労働時間を減らし、生産性を上げるわけですから、生産方法を画期的に変える必要があります。そのことは示されていません。人材確保は成長の源泉ではありますが、人へ投ずるお金は、人件費というコストに姿を変えると新聞に載っていました。

 各企業へ昇給を要請する政府の意向も解らないではありません。もちろん従業員の処遇を改善することは、さらなる企業発展の投資といえます。しかしそれを賃上げですると、賃金以外の企業が負う負担が増えます。企業と従業員の折半の健康保険や厚生年金などです。従業員によっては、名目賃金は増えても社会保険料も増えて、ネガティブなマインドになる人も出ます。労使双方の物質的な、そして精神的な負担は、けっして軽微ではありません。社会保険料の税率は、ここ数年ずっと上がっています。社会保障費の予算が厳しいのでこの率はこれからも右肩上がりになるでしょう。

 宅配便大手のヤマトは、人手不足と物流増加でしわ寄せを受けていた宅配ドライバーの待遇改善に向け、大口顧客向け料金値上げに踏み切りました。これは私たちには負担増です。最近、副資材などの値上げ話が頻繁に耳に入ります。賃金上昇圧力に加えて、長すぎたデフレのツケが一気に環境を変えてゆく予兆であるように思えます。原料、生産設備の上昇などを織り込み、さらに総人件費の増加に伴い増える社会保障費の負担増を念頭に経営してゆかなければならない難しい時代の到来です。



  二〇一八年四月二十五日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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