2018年 3月号



 一、低調な定番商品


 いつもお世話になりありがとうございます。

 優しい雨が降っています。この時期の雨は、菜種梅雨と言い、俳句の季語にもなっています。ぬるい靄のかかった空から柔らかな雨が木蓮の花に落ちる通勤の朝は、春の到来を実感します。いよいよこれから繁忙期突入です。気を引き締め前進してまいります。

 今月は三寒四温の日が続き、出荷状況も日によって激しく変化しました。それゆえ、業績は、昨年に届きませんでした。内容としては、定番の動きはまだ鈍いまま推移しています。別注や別寸が多かったため、国内工場は多忙を極めました。加えて、ファスナーなどの付属品入荷が遅れ、生産リードタイムがタイトになっているのも多忙の原因です。本格的な繁忙期はこれからですが、一抹の不安を感じます。


 二、好調新商品
   別ブランドを支える高生産性


 しかしポジティブなこともあります。新商品は、早くも動きは活発です。こちらは大変嬉しい悲鳴です。過去の実績のあまりない製品が動くということは、リミットの強みである多品種少量生産システムの胆力が試されます。縫製経験の全くない新人だけで再スタートした出雲工場も、この三年間でリミットカタログに掲載されているほとんどの製品を縫製する戦力になっています。

 また、別ブランドの高級婦人服専用の新市工場も、急激な増産を工場内の多能工化でクリアしています。売上がここ数年二桁増で推移しているのですが、各人の多能工化によって労働生産性をあげるとともに高性能なミシンを導入し、増員することなくこの地域では考えられない高収益工場を目指しております。目標を達成するためには、縫製工場のどこに、何を、どのように投資しなければならないか優先順位を明確化し日々考え続けるよう、工場長には耳にタコができるくらいお願いしております。

 一方、中国工場の方は春節明けの従業員の戻りを心配しておりましたが、杞憂に終わり胸をなで下ろしているところです。総経理は、現状に満足せず昨年実現できなかった増産体制確立に向け、さらに抜本的な組織改革を断行するようです。今後もお互いが発展できる方法を模索してまいります。


 三、アマゾンの功罪


 インターネット通販アマゾンの勢いが止まりません。先日もアマゾン・ファッション専用撮影スタジオが品川シーサイドにオープンした記事を読みました。リミットにもアマゾンからアマゾンプライム入会の勧誘がありました。アマゾン側でリミットの在庫を抱えてくれ、顧客には即日発送を目指すというものでした。

 リミットは取引を希望される販売店には、取引条件を一読してご了承いただければ、どちら様でも即取引が可能です。よって、リミットEC担当者に、通常のリミット取引条件をご納得していただき、預かり在庫も出荷後一カ月以内なら引取るが、それ以上の製品については受取らない条件を崩さなければ取引可能と伝えるようを指示しました。アマゾンからの返答は、一カ月では短すぎるので、もう少し長くしてもらえないかということでしたので、この度は丁重にお断りいたしました。いくら販売力があっても、取引条件を破ることはできません。

 最近はアマゾンプライムでも他社メーカーの作業服をよく目にするようになりました。しかし、返品時にいったいどのくらい返品されているのか恐ろしくなります。業種によっては、返品時に手数料がいる場合もあるようです。

 ところで、ある販売店の方は、最近の新商品は納入向け商品が少ないことを危惧されていました。定番在庫は薄く、注文しても納期がかかる。ところが、その割にメーカーが抱えている総在庫は莫大で、生産計画が機能していない。おまけにエンドユーザーはネット検索して値段の安い商品を見て、値引きを求められるので正直しんどい。最近よく耳にするセリフです。これも、アマゾンだけの罪ではないでしょうが、その影響はあります。
 

 四、自分は、どこで買うのが幸せなのか
 

 最近知人と話をしていて、なるほどと感心したことがあります。

 その人は、以前は何でもインターネット通販で買い物をしていました。非常に便利で手間もかからず、即納されるとご満悦でした。ところが最近はすっかり変わって。欲しいものがあるとまずネット検索して買う商品を選定し、近くの専門店に出かけ、その商品を注文するのだそうです。趣味嗜好品だけでなく、毎日の食材や外食も近所で購入することにしたのだそうです。当然、小さな専門店には在庫していないので手に入るまで日数が長く、値段も高くなります。しかしそれでもいいと言うのです。

 今後自分の住んでいる近所の小さな商店街がなくなったら、自分の住む街が少子高齢化でなくなってしまうかもしれない。自分のコミュニティーがあるから毎日楽しく生活できる。東日本大震災を機にそう思うようになったと。そう考えると、すぐに手に入り価格が安いという経済性より、自分が地域や社会の一員であり、それを自ら支えている実感や地元愛の方が大事だと考えるようになった、ということでした。

 地元が生き生きする経済性に気づかれたということでしょうか。いったい経済とは何でしょうか。皆さんなら、どちらでお求めになる方がより幸せですか?



  二〇一八年三月二十五日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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