2018年 2月号



 一、商品は、長い旅をする


 いつもお世話になりありがとうございます。

 二月のことを昔は如月といいましたが、それは「衣更着」が語源で、寒さのため衣を更に重ねて着たことに由来しているそうです。皆様のところはいかがでしょうか?こちらでは、寒さのなかにも小さな春の足音が聞こえてきます。

 今月上旬の北陸豪雪では生活道路は雪に覆われ、交通網は麻痺し物流が一時大混乱いたしました。世界がインターネット情報網で瞬時に手軽に繋がっても、やはりモノを運ぶ行為そのものが遮断されれば、日々の生活も儘ならない現実をまざまざと見せつけられました。作業服も他の商品同様、生地・付属の仕入搬入から、国内外の縫製工場で製品になって皆様のもとに届きます。皆様のもとから更にネーム入れや刺繍加工を経て、ようやくエンドユーザーの手元に届きます。商品の生産は、原材料の段階から考えれば実に長い旅をして、その距離と時間と労働が輸送コストに換算されることになります。

 逆に考えると、かつて作業服の一大産地として名を馳せた備後繊維産地は合理的でした。原材料から製品になるまで、ほぼすべてが、近隣への移動だけで製品が完成されていたわけです。環境面から考えましても理にかなっていたのだなと改めて感心させられます。


 二、恒例の出陣式、カタログも旅をする


 寒さが身に染みた二月上旬の大安の日。リミットは恒例のカタログ出陣式を執り行い、今年度の総合カタログが全国に旅立ちました。今年の総合カタログは全面的にリニューアルをし、商品写真も更に大きく見やすく撮影し直しました。必ず皆様のお役にたてると信じております。

 商況の方も順調で、幸先の良いスタートとなりました。またお客様サービスセンターはこの閑散期を利用して、企画室と共にお客様訪問をさせていただきました。お客様との情報交換やリミットへのご要望などを数多くお聞きできたことを大変感謝しております。できることから早々にリミット運営に生かしてまいります。


 三、驚きの訪中談を二題


 中国は春節に入りました。今年も工場の全従業員が休み明けに戻ってきてくれるだろうかと、心配な時期を迎えました。先月のリミット通信でご報告できなかった驚きの訪中談を二つお伝えします。

 一つ目は工場内に昼休みのベルが鳴った時のことです。従業員の皆は昼食を食べに建物から一斉に外に出て行きます。彼らの昼食に興味をもって出ると、弁当屋で買う人、食堂に入る人、ケータリングサービスを受け取る人などさまざまでしたが、みんな支払いはスマホをかざすだけで財布から現金を支払う者は皆無でした。そもそも外出するのに財布を持って出る者はおりません。中国ではアリババグループが提供する中国最大規模のオンライン決済サービス「支付宝」(アリペイ)が便利だとは聞いていましたが、その普及率とスピードにびっくりしました。

 もう一つは、総経理と夕食に行ったときのことです。飲酒運転は厳罰です。そこでいつもは、帰りの運転手さんを連れて食事に来ていました。しかしこの度は、総経理一人だけです。食事後、帰りはどうするのかと思うと、おもむろにスマホで連絡をとっています。しばらくすると小さな折り畳み自転車に乗った男性が現れました。総経理の車のトランクに畳んだ自転車を乗せました。総経理は助手席に、我々は後部座席に着席し、その男性の運転で帰路へ着きました。これが配車アプリで有名な「ウーバー」か、と感心しました。総経理はよくこの運転手を指名するそうです。タクシーは待ち時間が長く、使わなくなったと言っていました。日本ではまだ浸透しているとは言えないこの新サービスは、中国福建省では、半年の間にすでに日常になっています。保護規制・既得権でがんじがらめの日本では、浸透するまでにいったい何年待てばいいのでしょうか?


 四、AIの伸張、途上国の支出の
   変化から何を見るか


 最近服のネットショッピングにもAIが活用され始めたと新聞に載っていました。進化する人工知能により、好み・サイズ・気持ちも認識して、ユーザーに提案してくるのだそうです。そして更に、これから流行しそうなものと自社の在庫との差を予測して、新しい服をデザイン・製造までしてくれるそうです。AIは、個人の好みの集合を、ほぼリアルタイムで製造にまで結びつけることが可能となり、業界からの発信に個々が反応していた従来のあり方が、すっかり逆転してしまうかもしれない、ということでした。

 また、東南アジアなどの発展途上国に進出していた外資アパレルブランドの店舗撤退記事も目にとまりました。その原因は途上国の消費行動の変化にあるとし、はやくも衣服などの消費傾向は低下し、旅行などモノ・コトへの支出が伸びているということでした。この二つの新聞記事と前出の中国の急速な変化を合わせて考えると、私自身、何をどこからどのように手を付けたらいいのか全く分からなくなった、というのが正直なところです。



  二〇一八年二月二十五日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有 木 宏 治

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