2017年 10月号

 

 一、努力の花が足蹴にされている


 いつもお世話になりありがとうございます。

 実りの秋を迎えましたが、台風が前線を刺激して、冷たいススキ梅雨が続きました。季節は一足飛びに冬を感じさせます。この時期、私は通勤途中に金木犀の香りを楽しむのが恒例なのですが、今年は急激な気温の変化で、二度ほど咲いて無残にも雨に散ってしまいました。

 その様子に、私はあることに気づきました。それは、かつて「安かろう、悪かろう」という罵倒に耐え、日本製品の品質を世界一にまで押し上げた先人たちの必死の努力が咲かせた花を、偽装天国という無責任社会の雨の路傍に無残にも足蹴にする日本産業界の現実です。世界市場で不動の地位を獲得しているかのように言われてきたのですが、多くの一流企業が、不正や放漫経営で行き詰まり、国際化という美名のもとで、海外の企業に買いたたかれ続けています。

 花を咲かせた時代から、気がつけば製造業界だけではなく、いつの間にかありとあらゆる業界で、本当の意味での収穫もなく企業が消えていきます。同じ時期に度重なる車の危険運転問題などに見る日本人の倫理観の低下が目に付くのは、偶然でしょうか。逆に、正直で謙虚で真面目な日本人が消えていくことが、産業界の不祥事をもたらしているのでしょうか。倫理観溢れたあの産業のイメージはどこへいってしまったのでしょうか。

 今回の度重なる失態は、自分自身を省みる良い機会になりそうです。


 二、来期カタログ、全面リニューアル


 さて、ビジネスは、今年最後の最盛月を迎えました。初旬までは、秋らしい気候に助けられ、定番商品を中心に大口受注の好調が続いていたのですが、中旬からの秋雨で気温が一気に下がり、防寒衣料需要に切り替わりました。天候予想では、台風通過後気温が少し上昇するという発表がありました。屋内作業用の製品が多いリミットは、いわゆる防寒用品を多くもたないので、もう少し秋が続いてくれることを望んでいます。

 すでに企画部門は新商品を完成させ、京都・神戸に持ち込み、来年度の新カタログ撮影を済ませたところです。「更に使いやすく、更に伝わるカタログを」ということで、来年度のユニウェアカタログはページ数も大幅に増やし、全面リニューアルします。どうぞ来年二月にお手元に届くリミットの営業マンたちを可愛がってやってください。

 それにしても景気が上向いてくると作業服需要も上向くという事実を改めて痛感します。今年もあっという間に残り二カ月。来年に向けてどう繋げてゆくかじっくり、しっかり考えたいと思います。


 三、ネット市場で勝ち抜くために


 今さらながらですが、インターネットを通じたグローバルな競争に感嘆しております。販売店の皆様も同感だと思いますが、これまでの実店舗での営業であれば商圏範囲はこのくらいと、自己の商圏を具体的に説明できました。ところが、今や商圏は全日本、いや全世界に広がりました。競合する企業も、いわゆる同業者だけでなく、情報を扱うIT企業も含め、ありとあらゆる業界との闘いになっています。まるで姿の見えない相手と異種格闘技でバトルロイヤルをやっているようなものです。

 その中で勝ち残るための一番の武器を私は情報だと考えています。ありとあらゆる情報から限られた時間で、必要な情報を選択しながら自分なりに咀嚼し、何をどう進めるか、どのように決定するのか、それを仲間に分かりやすくシェアし試行錯誤を繰り返す。そして全体をコントロールする。やはり王道のこの道しかないと考えます。リアルからネットに主戦場は変わってゆきますが、常に働く女性を意識しておかなければ、前述の偽装天国の無責任集団になってしまうかもしれません。


 四、環境規制で中国生産に懸念


 新聞に中国の環境規制強化に伴う中小染色加工場の操業停止記事が出ていました。この影響により、日本向けの品質問題や納期遅れが発生し、環境規制を順守する工場に仕事が集中して、スペースの取り合いが発生するのでは、という内容でした。他紙でもやはり中国の環境規制の厳格化が載っており、業種を問わず多くの工場が査察部隊に指摘され、対応の遅れた企業に工場閉鎖を迫っているようです。

 環境規制による素材減産で仕入れコストは高くなり、地方から来ていた出稼ぎ労働者が大幅に減っているとのことでした。そうなると私たちの業界でも重大な懸念が発生します。困難になった海外での素材調達が国内へ回帰し、納期遅れの発生が予測できるのです。リミットは従来、一〇〇%国内調達による素材を使用しておりますので素材の確保には心配ありませんが、海外から国内回帰になれば単価アップや色味の問題も発生すると考えられます。

 そして次に深刻な予想があります。中国政府から、リミット福州工場のような委託加工業者へ規制が強化されることが心配です。これが一番怖い問題です。

 来期は定番を中心として更なる増産を福州工場にお願いしようと考えているだけに、昨年の消防法改正で移転を余儀なくされた記憶が蘇り、背筋が寒くなりました。



  二〇一七年十月二十五日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有木宏治

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