2017年 5月号
一、少子化と伝統の継承と
いつもお世話になりありがとうございます。
初夏の日差しに、木の葉がつやつやと輝いております。街では、半袖姿の人も多く見かけます。クールビズはすっかり定着し、軽装での取引先訪問にも違和感を全く抱かなくなりました。皆様、お変わりございませんか。
今年も子どもの日には、自宅裏の稲荷神社で恒例の春の祭礼を執り行いました。近所の組内の皆さまと境内の周りを掃き清めた後、備後吉備津神社の宮司さんに祝詞をあげていただくだけの簡素なお祭りです。かつては、「お接待」といって、子どもたちにお菓子などを振る舞って賑やかでしたが、今ではその風習は廃れてしまいました。
近所のお年寄りによると、昔は稲荷神社の前に、四ツ堂という宝形づくりの屋根に四本柱の吹き放しの建物があり、大勢の子どもたちにお接待を配った後、そのまま近所の皆さまの宴会になっていたそうです。お堂は、堂宇と呼ばれ、圧倒的に備後地方に集中していています。福山城の開祖、水野勝成公が自身の流浪時代の経験から、旅人のための休み堂として領内に作らせたという逸話が残されています。
そうした話を聞けば聞くほど、少子高齢化が容赦なく進行する今、これまで続けてきた伝統行事を続けてゆくことの大切さと難しさを痛感します。
二、「アマゾン」での販売好調のわけ
今期業績の特徴としては、小口案件が増えていることです。まだまだ巷間言われるような景況を実感できず、必要アイテムを必要枚数だけ購入されるお客様が多いのではないでしょうか。
今季は、気候に助けられているようなところもあります。昨年は四月後半に急に気温が上がり、連休後は天候が不安定となって、最盛期であるはずの五月の業績が振るいませんでした。それと比べると、今年は連休から夏日の日もあり、今のところ微増の模様です。
一方、「アマゾン」での販売が、今期は昨年の倍の受注件数で好調のようです。出荷の商品傾向を見ると、連休明けからは、オフィス向けの夏物アイテムを中心に好調です。たとえば、オーバーブラウスや半袖定番が中心です。しかし、夏物スラックスなどは例年ほど動きが見えません。春夏・秋冬物と分別していたものを、肌着などをうまく融通してオールシーズン物を一着だけ、といった工夫するユーザーが増えてきているのかもしれません。こうしたユーザーの工夫が、「アマゾン」での購買に繋がっているように思われます。
今月も残すところ一週間。どこまで小口を伸ばすことができるか。繁忙期の真最中、ミスのないよう全力を尽くします。
三、「エンドユーザー直送便」を提案します
販売店の皆様は、女子物はいろいろ見本を依頼される割に、なかなか購入を決定されず、いざ決定しても注文ロットは少なく、その都度追加見本を頼まれ、追加運賃のことを考えると割に合わない、とよくおっしゃいます。その通りかも知れません。しかし私は、女性が主体で商品購入を決定するプロセスを大切にすべきだと思います。もしかすると、供給される商品に決定力がないのかも知れません。
とはいえ、確かにその都度の運賃が発生し、利益を圧迫するのは事実です。そしてエンドユーザーにご理解いただきたいと思うのは無理からぬところです。しかし、それをお願いできる状況にはありません。
こういった背景からか、最近、販売店からのインターネット注文で、エンドユーザーへの直送指定が急増しています。リミットからの直送をご依頼頂けば、運賃をカットできます。ご依頼には、喜んでお受けしておりますので、ぜひ検討してみてください。これは、昨今社会問題にもなっている運送会社社員の加重負担軽減にも繋がるのではないでしょうか。
四、何にどのように投資するのか?
ちょうど一年前に書いたリミット通信を改めて読み返しました。熊本地震がまだ完全に収束していないなか、茨城でも続けて強い地震が起こったことが書いてありました。日々の慌ただしさに自分の記憶が薄らいでいることに気が付き、恥ずかしくなりました。
その地震に関して、先般、興味深いニュースを目にしました。記事は、元東京大学教授、地震学者のロバート・ゲラー氏がイギリスの総合科学誌、『ネイチャー』へ寄稿したことでした。その論文には、「日本は地震予知ができないことを認めるべきだ」と明快に述べられているそうです。確かに今の科学では正確な地震予知は無理で、そこに時間とコストをかけるくらいなら、過去の地震から得た教訓を基に、もっと防災・減災政策に力を入れるべきだ、という意見には賛成しました。
この考えは、企業活動にも当てはまります。最近目にする経済情報の大きな一つの傾向は、不透明さが増すグローバル経済がいつ破たんするのか、という予想記事が目立つことです。いつ破たんするかという他人の不確かな予測に戦々恐々としても、中小企業がその危機を回避することはできません。経済危機に対する中小企業の現実的な選択肢は、いつ何が起きても動じない組織づくりに邁進することにしかないのです。今活躍してくれている人材が、時間と共に齢を経て、いつごろ仕事ができなくなるかを計算するより、何事にも動じない態勢構築へ、少しずつ投資を続けることの方が一層重要です。
一年前のリミット通信には、出雲工場のことも書いてありました。あれから一年。計画的に縫製技術の指導を繰り返す日々を積み重ねてきました。戦力と言うにはほど遠い新人だけの出雲工場が再スタートから三年目となり、今では、品番の多いリミット製品のほとんどが縫製できるようになっています。まだまだベテランさんのようにはいきませんが、クイック生産の国内工場として徐々に力を発揮してきております。
どんなに苦しくても、次のステージのため常に少しの投資を続けること。その方向を見誤らないこと。これ以外に未来は創れないと思います。
二〇一七年五月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有木宏治
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