2016年 9月号
一、正確な予報、甚大な被害、という皮肉
いつもお世話になりありがとうございます。
風が心地よく、名残の夏の暑さでほてる頬をなでていく季節になりましたが、そんな風情を吹き飛ばすかのように、立て続けに発生した台風が日本に上陸し災害を引き起こしております。先般テレビをつけると、手塩にかけた農作物を一夜にして無価値にされた北海道農家の方の背中が力なく映し出されていました。
台風十四号は、十五日に台湾から中国福建省に上陸し、リミットの工場のある福州市を直撃しました。幸い工場は海抜の高い山手にあり難を逃れました。しかし総経理の住んでいる中心街は浸水し、水道や電気などライフラインが一時止まったようです。
自然の摂理とはいえ、突然起こる豪雨や竜巻に今の防災対策では歯が立たないのでしょうか。現代の人間には本来備わっていた察知能力が低下してきているのでしょうか。「ここより下に建物を建ててはだめ」というご先祖さまの言葉を忘れ、勝手気ままに、快適な生活を求め続けた結果なのでしょうか。気象予測の精度は上がっているのに、年々、災害の被害は拡大しているように思えます。なんという皮肉でしょうか。
二、コミュニケーションの変化と意味の制服
さて、時期の遅い台風が湿った暖かい空気を運んできます。そのため、広島ではまだまだ日中は暑さを感じます。出荷状況も夏物と冬物が半々といった状況が続いております。本格的な秋冬商戦が始まったという実感は、正直まだ感じません。出荷の内容は、小口が多く、大口が少ない状況です。一般衣料の状況もそうですが、人びとの衣服への出費が低調です。
人に直接会うことがコミュニケーションの大部分だった時代は、第一印象としての身だしなみが重視されました。衣服をはじめとした身に着ける装飾品は、人間関係構築にとって、それなりに重要でした。時代が変化し、SNSやラインなどでグループ同士のコミュニケーションが可能になり、今では、直接会わなくても、いとも簡単に、そして瞬時に意思疎通できます。スマホやネットの中でほとんど生活している人は、極端に言えば一張羅、今では勝負服とでもいうのでしょうが、そういった類いの服と、自宅ではホームウェアがあれば事足りてしまうのです。
けれども、職場という世界があります。そこで着る制服にはもっと大事な意味と要素がたくさんあります。リミットの企画開発も、もっと個々の職場を細分化し、仕事内容を徹底的に観察しなければと改めて感じております。着ることで、「勝負」ができ、リラックスでき、そして集中できる職場の服を目指したいのです。
三、制服業界の正念場 すぐそこの人口減少
先日、販売店の方と電話で話をしました。最前線の売れ行きも芳しくなく、小口物件が多いとのことでした。同業者も年々少なくなっていることでも、危機感を感じるとのことでした。考えてみれば、繊維産業の一連の流れが構築された時代と、現在の市場規模を比べれば、かなり縮小しました。これからの国内人口について、国立社会保障・人口問題研究所は、次のように予想しています。二〇一〇年には約一億二八〇〇万人だった人口は、二〇三〇年には約一億一六〇〇万人になり、さらに二〇二四年には日本の高齢者は人口の三〇%にも達するとのことです。つまり労働人口の極端な減少がすぐそこにきているのです。いわゆる二〇三〇年問題です。
新たな分野を開拓してゆかなければ、市場の縮小についていけません。縮小する市場に、従来の組織体制では大きすぎます。最小限の組織体で残存者利益を待っている間にも、他業界から新業態で参入されてしまうくらい世の中の変化とお客様の嗜好は変わってきています。電話の社長様とは最終的に、「メーカーは絶えず新商品開発を怠らず、販売店は絶えずお客様のところに足を運ぶ」。このことができなくなったら淘汰されてしまいますね、と再確認して電話を置きました。
リミットにとっても、販売店にとっても、すぐそこの正念場にどう立ち向かうかが、問われています。
二〇一六年九月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有木宏治
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