2016年 4月号
一、悪夢の熊本地震
いつもお世話になりありがとうございます。
今月十四日夜以降、熊本県を中心として広範囲に断続的に続いた「平成二十八年 熊本地震」が甚大な被害を引き起こしました。十六日未明の本震は、広島にも影響しました。文字通り揺り起こされた私は、恐怖のあまり寝具の中で身動きが取れませんでした。すぐにテレビを見ると、熊本を中心に九州全域に震度の数値が表示されていました。日が経つにつれ、被害状況や行方不明者の捜索活動、そして十三万人を超える避難者の様子が報道され、過去の恐ろしい災害の悪夢が脳裏を掠めました。
被災された皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。そして皆様のご無事と、被害に遭われた地区の皆様の一日も早い復興をお祈りいたします。
二、失速の三月、将来の備えの今期
「三月の売上が二桁増の勢い」と書いた先月号通信の原稿を仕上げたのは三月十八日でした。驚いたことに、その直後から好調の勢いは逆転し始め、月後半には急激に落ち込みました。結局微減となってしまいました。
販売価格の値上げ予定がない今年は、駆け込み需要の見込みもなく、気温が暑くならないと商品は動かないとは聞いていましたが、それが当たりました。今月も月初めから昨年の勢いがありません。三月受注残も多く二桁増を実現した昨年とうってかわり、今月の販売は苦戦しそうです。加えて、円高や地震の影響も予想されます。春夏商戦はまだ始まったばかりですが、覚悟をもって臨まざるを得ません。
先月末に決算書ができ上がり、改めてじっくりと分析しております。前期は、三年ぶりの商品価格改定に連動させ、期首の二月から、この数年来の生地や付属品、加工賃の値上げなども検討して、製品原価の見直しも実行しました。結果、国内製品原価は七%、海外製品原価は六・五%の上昇となりました。
今期は現在、為替は円高に振れ、ドル調達コストは前期に比べ下がっています。しかし製造コストは、今後においても下がることはありません。生地原料調達の方法や縫製方法、ラインの流し方などなどあらゆるシーンで、極端なコスト上昇を避ける永続的な努力が求められています。モノづくりのリミットが、どのようにコスト削減を実現し生き残るか、といった将来の備えの問題に真剣に向き合うのにちょうどよい時機です。資金と在庫のバランスをもう一度見直し、しっかりと地に足をつけ、姿勢を低くして逆風をかわし、社内の力を十分蓄える時間にあてたいと考えております。
三、諦めない中国、音を上げない新市工場
先月、八カ月ぶりの中国福州工場訪問をご報告しました。そのとき、以前からの従業員に混じって、新しい顔ぶれもちらほら見受けられました。中国の場合、長期間安定して就業する人材が確保しづらいことは、工場運営における不安定要因の一つです。
中国から入荷した製品の検品で不良品があれば、企画が確認意見書を作成して中国工場に連絡いたします。高度な縫製技術を要する製品になれば、何度も確認意見書のやり取りをします。そうなると、一日の生産量が落ちるので、従業員は嫌がります。何度もダメ出しされれば、誰だって不機嫌になるのも当然でしょう。日本から初めて指導に行った副ライン長も、従業員と直接会話が出来ず、互いにヒートアップする場面もありました。文化が違うのです。日本では考えられないミスも起きます。それでも、こういった類いのたくさんの問題点を一つ一つ、解決してゆくことで工場の生産力は成長します。妥協し、諦めてしまったらそこで終わりです。日本の何倍も難しい工場経営を、総経理は文句も言わず日々、挑戦してくれています。
日本国内では出雲工場も一つ、一つ前進しています。各工場を指導する最先端の新市工場が音を上げるわけにはいきません。すべてはリミットを着る働く女性のため。皆が一丸とならなくては、事が成就しないのです。
四、ロボット化と縫製のカタチ
縫製機器も一歩ずつ進化を遂げております。今月、工場リーダーと縫製ライン長が大阪で開催された「JIAM2016 OSAKA 国際アパレル機器&繊維産業見本市」に行ってまいりました。人材育成の問題を解消する全自動ミシンなども紹介されていたようで、将来の縫製現場は完全ロボット化されているかもしれません。しかし、服を必要としない機械に、着心地を考えた服は作れるのでしょうか?どちらにせよ、将来の縫製工場は、現状とは全く違ったカタチになることでしょう。
それはどんなカタチでしょうか?きっと皆さまと深い議論が必要になると思います。楽しみです。
二〇一六年四月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有木宏治
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