2015年 8月号
一、初盆、怠惰を戒め
いつもお世話になりありがとうございます。
少し緊張した雰囲気でお盆を終えました。先代社長の初盆でした。それは、今まで意識していなかった日常と非日常の落差を知らされた時間であり空間でした。徐々にいつもの生活のリズムが回復しつつあります。振り返れば、「光陰矢のごとし」の言葉のとおりです。この言葉を反復し、怠惰への自戒としております。
今年は台風や豪雨が多く、台風十五・十六号の発達と動きを気にしながら筆を進めております。熱中症で騒がれた今夏も、さすがに盆を過ぎると日差しは柔らかく、空の雲や海の色に秋の気配を感じます。残暑がいつまで続くか気になるところですが、いよいよ秋冬商戦の始まりです。
二、秋冬物に好況か、勝負の秋
通常、八月は、この業界にとって閑散期です。しかし、天候不順で夏物のスタートが遅れたため、遅くまで、そして商品群も幅広く受注が続きました。現在は、九月以降の指定納期で、秋冬商品の注文も順調に増えつつあります。
夏物販売商品の傾向については、酷暑だったせいか、上着はブルゾンやポロシャツタイプのものよりも、より空気を通しやすいスモックタイプに注文が集まりました。またボトムは、他所にない裾幅が広めのキュロットがそこそこ動きました。しかし、全体として商品の動きに影響を与えているのは、本質的に景況です。四~六月期の国内総生産はマイナスとなりました。秋以降には、景気の上向きを実感できる商品の動向を見ることができるのではないでしょうか。秋冬商戦に向け準備万端、これからが勝負です。
三、底知れぬ力の中国
先月下旬、中国福州工場に四日間行ってきました。ホテルから工場まで車で四十分かかります。いつもその間、車窓から工場裏手にある標高二千メートルの鼓山を眺めます。この度私は、ある異変に気づきました。春先の訪中では見かけなかった多数の別荘らしき建物がいたるところに新築されていました。運転している総経理によりますと、今年の早春に、かつて福州市長を務めた習近平国家主席が久々に凱旋し、市長時代に好んでよく登っていた鼓山に久しぶりに登ったことが全国区のニュースとなりました。それで鼓山が有名になり、名だたるお金持ちが我先にと、夏の避暑地として別荘を建てているのだそうです。中国の底知れぬ力を見せつけられたように感じました。
四、ともに順調、相互信頼と生産
福建省福州市は茹だるような暑さで、気温は三十八度、湿度も高く、日本人の私たちは、送風機と扇風機しかない工場内で一日辛抱することはできません。冷房の効いた事務室に行ったり来たりと、情けない姿を見せてしまいました。
工場の人員は三月に訪中した時と変わりませんでした。従来からの工員さんが技術力を身につけて勤めてくれていました。製品ごとの作業にも慣れ、ミシンの音は一層大きく響き、一人当たりの日産枚数も大幅に増加していました。現状の能力で、今年の生産目標をクリアし、安定操業が見込める、という報告を受けました。本当に安堵いたしました。
しかし、総経理には別の懸念がありました。その懸念は私も同様に抱いていたことで、今回双方で共有することができました。懸念の一つは、訪中時も急落を続けた中国株式相場の今後です。もう一つは、毛沢東時代に戻ったかのような中国共産党による司法や教育分野に対する支配の強化です。中国経済の今後の動向によっては、世界市場が混乱する可能性も高く、株価はもとより労働市場を注視する必要があります。また軍事を含めた国際政治も目が離せない問題です。
そんな中でも、不変のものがあります。それは、リミットと中国福州工場との信頼関係です。これは、絶対に揺らぐことはありません。品質、供給量ともに懸念はありません。どうぞご安心ください。
二〇一五年八月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有木宏治
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