2014年 11月号



 一、減らない小口受注


 いつもお世話になりありがとうございます。

 毎朝布団を出るのが少々億劫な季節になりました。

 この時期は例年なら、一気に閑散期モードに入り、出荷軒数も激減します。しかし今年は、b×cシリーズの防寒商品、ライナー付ブルゾンが好調です。加えて、定番商品を中心に、小口ながら継続してご注文をいただき、いつもと様子が違います。

 今年一年を通して見ると、多品種小ロット生産にいっそう拍車がかかりました。おかげで、リミットの特長を活かすことができました。どこまで景気後退しても、働く人がいる限り、小口の需要は、絶対に無くなることはないと思います。来年初めには、待望の中国工場の増産分商品が入荷し始めます。景況感はなかなか上昇してきませんが、リミット小口配送を有効にご利用していただければと思います。


 二、商品価格改訂にご理解を

 
 リミットグループは一月が決算月です。そろそろ業績内容が分かります。海外生産担当の大阪リミット㈱との合算では、前期に比べ商品売上高は五%増加ですが、粗利は八%もマイナスの予想です。急激な円安により、為替調達コストが大幅に上昇したからです。

 先月の初めにはまだ一ドル=百十円だったのですが、現時点では百十七円で、二年前の二〇一二年の年次為替レート七十九円と比べたら、四十八%も円安になっています。これは、実体経済の反映ではありません。日本銀行が政策的にインフレに誘導し、物価上昇を意図した政策の結果です。一企業のコスト圧縮努力で乗り切ることができる範囲をとっくに超えています。

 来年予測される米国の金利上昇は、更に円安を加速するとの予測も出ています。そして、今回の衆院解散によって、日本売りが加速する兆しを見せています。年末までに一ドル=百三十〜百五十円を想定する投資家もいます。もしそうなれば、今より三十%以上円安が進むことになります。現在の繊維業界は海外生産依存率が高く、為替変動の影響をまともに受けます。こうなると安売り合戦で乗り切ろうとしても、誰も生き残れません。

 リミットでは、こうした状況を熟慮した結果、来年二〇一五年三月受注分より、値上げを決定いたしました。前回の価格改定から三年ぶりとなります。景気動向も低調な中、大変心苦しいのですが、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 もちろん、リミットも企業努力をいたします。より付加価値創造へのシフトを鮮明にして競争に耐ええる商品とサービスを提供します。


 三、さらに、小ロット高付加価値製品生産へ


 ご存知のようにリミットは、一九八〇年代後半くらいから、国内縫製工場を縮小し、海外工場に移転しています。仮に、一ドル=百五十円になると、海外での生産コストが上昇し、国内工場でのコストと変わらなくなります。リミットのような多品種小ロット生産なら、一枚を国内でクイック生産した方が在庫リスクも低くなり、お客様へのリードタイムも短くなります。

 現在、リミットの海外工場における多品種少量生産は、軌道に乗っています。一ロット八十枚から海外生産です。一回当たりの輸入品番数は五十種類にもなります。そのために現地では優秀な人材が欠かせません。仮に今後、海外工場と同様の生産が国内工場でもはじまるなら、高学歴の優秀な人材の投入が必須になります。今、そのような時代なのです。

 リミットは、「小口」に徹底してこだわり、多品種で高付加価値製品を生産するシステム、受注即納システムを構築し、在庫を持たない経営を追求しました。そして、八十年代に備後新市地区に存在したクイック生産システムを凌駕しました。この究極のビジネスモデルを実現する道のりは、大変困難でした。もし今後、海外工場生産にとってかわる国内生産のシステムを構築するとなると、かつて遠い道のりで費やしたより遥かにうわまわる能力、時間、コストが必要だと予想しております。それが、高付加価値戦略で日本の繊維業界を残す道だと思います。企業を健全に持続するためには、投資できる資金を残すための利益確保が大事です。そのためには、高値でも売れる高付加価値戦略が絶対不可欠なのです。

 私は常々思うのです。家族の生計を担う働く父母の作業着が、なぜその子どもが三年間しか着ない学生服より価値が低いのか?汗と油にまみれても特殊加工で快適で、何十年と継続しても同じ色味で製造され、数年着続ける作業服が、一年で流行遅れになる一般衣料よりも安いのか?来年あたり、本当に知恵を絞り、抜本的に方向転換をスタートさせなければ、今後の業界全体としての発展はないのかもしれません。


 四、来年もよろしくお願いします


 さて、今年も余すところ一カ月です。ご遷宮を迎えた出雲大社に元旦に詣で、新たな再生を誓ってスタートしたのがつい先日のように想い起こされます。手帳をめくってみると、いろいろな変化に振り回されながら、何とかその都度、対応してきた一年だったことがよみがえります。一か月後の大晦日がちかくなれば、あれやこれやと猛省をすることになるでしょう。

 このリミット通信もこの号が今年最後の発刊です。皆様には、今年も大変お世話になり、本当にありがとうございました。来年もどうぞ、リミットをよろしくお願いいたします。



  二〇一四年十一月二十五日
       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有木宏治

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