2014年 10月号
一、不惑の哲学で行動する
いつもお世話になりありがとうございます。
今月は、台風が日本に二度上陸しました。御嶽山では、その台風が行方不明者の捜索を阻みました。台風が去った直後から積雪凍結の季節を迎え、二次災害のリスクが高まり、不明者の捜索は、打ち切りになりました。捜索再開は、来春以降に判断することになったようです。ご家族の心情をくむと残念でなりません。一日も早く捜索が再開できるよう祈念します。
特別警報という言葉を頻繁に耳にし、避難情報も早め早めに出されるようになった昨今。ITを通して瞬時に拡散するあらゆる情報に驚きと便利さを感じながらも、右往左往している自分自身が不安です。山籠り状態で、外部情報をすべて拒否することはできません。しかし今、雑音に耳を貸さず、何事にも惑わされない、いわば不惑の哲学が非常に重要な時代に突入しているのではないでしょうか?何かに一喜一憂するのではなく、あらゆる事柄の責任を自分自身に引き受けて、さらに、前へ、前へ。惑わず、一歩ずつ進んでゆきたいと思います。
二、受注日即日出荷率をいかに高めるか
台風十九号が去り、広島県内でも一気に気温が下がり、朝晩は上着が必需品になりました。秋冬商戦にふさわしい気候です。
さて、売上については、先月は昨年同月並み、今月は二桁増の予定です。販売数量を伸ばしているのは、主に定番商品です。昨年比五十%増を受注している商品もあります。販売数量を伸び率でみると、意外に年間販売数量の小さい基本商品・維持商品などが高くなっています。これは、シーズン前に占う生産計画の的中がいかに難しいかを物語っています。この影響で、国内生産工場は今月も残業に追われております。
いかにして生産計画の的中率を上げ、受注日即日出荷率を上げるか?それは、アパレル・メーカーとしては永遠のテーマです。そこで、来期は初めて、生産現場の対応策として、繁忙期と閑散期の差を考慮した年間変形労働時間制を採用します。すなわち、春夏・秋冬の繁忙期四か月間の労働時間を延長し、生産リードタイム短縮に全力を注ぎます。また、国内工場では新卒の従業員を増員することも決定しております。来年も更なる受注日即日出荷率向上に全力を挙げるとともに、新しい時代のニーズに合った新商品をどんどん開発、発表してまいります。
三、為替損と原価上昇で価格再検討
リミットは、今期九月までの商品売上実績は、昨年比五%増で推移しております。しかしながら、最終利益は、四十二%減になっています。販売管理費は二%減で、全社を挙げ経費削減には努力しておりますが、売上原価が十一%増になっております。売上原価を調べると、当期製造費用が十六%増えており、その中でも外注加工費は、二十七%の増加になっています。
その原因は、いうまでもなく、為替と生地原価の上昇です。昨年度は、私が為替差損を半分負担しながら、会社に一ドル八十円で売り、なんとか凌ぐことができました。しかし、昨年と今年の一ドル当たりの調達コストを比較してみますと、十八%も増加しております。しかも今月初めには、百十円まで急激に円安が進みました。為替問題の経営への影響は、企業努力を超えたところで推移します。
今後の景気動向も踏まえたうえで、皆様に販売価格の値上げをお願いするのか、しないのか。今、ぎりぎりのところで真剣な検討が求められています。すでに、来年度のカタログ作成も始まり、残された時間は多くありません。来月のこの通信を書くまでには、結論を出さねばなりません。為替問題は本当に頭の痛い問題です。
四、景気は、ハイリスクの後退局面か
商品価格値上げの是非は、為替変動だけでなく、今後の景気動向が大きく影響します。
最近発表された種々の経済指標をみると、景気は、後退局面にある可能性が非常に高いといえます。消費者物価は、消費税率引き上げの影響を除いても、明らかに上昇しています。円安を起爆剤にデフレから脱却し、景気が好転するシナリオで進んでいたのに、何が問題だったのでしょうか?私はやっぱり消費低迷に尽きると思います。消費税引き上げも含めた物価上昇に対して、実質所得が減少していることが一番の問題です。一九九七年の消費税率引き上げ時は、名目賃金が今より増加しており、実質賃金はそれほど減少しませんでした。以前のようにデフレ進行中なら何とかなりますが、円安の影響もあって物価が上昇に転じ、かえって景気が悪くなってしまいました。
次に、「よく働きよく使う」団塊世代の引退も消費低迷に大きな影響を与えていると思います。今日、商品・サービスは供給過剰状態なのです。この状況を、低金利政策や金融緩和などで対応しようしたのがお門違いだったわけです。今月いっぱいでアメリカのFRBは金融緩和を終了し、来年の適当な時期に利上げに踏み切ることになっています。確かに金融緩和により、金融・不動産資産業界にお金は流れ、価格の高騰をもたらしました。しかし、企業はもともとカネ余りです。需要が伸びないので設備投資の必要がなく、資金需要もなかったので、量的緩和によって市中に出た資金は、リスク市場にすべて流れました。
この金融緩和を終了させることは、リスク市場が終わることを意味しています。アメリカに続き、日本も早晩、現在の金融政策を停止せざるを得ません。そうなると世界経済はどうなるのか?今以上の不景気を想定したうえで、行動を起こさなければ、生き残れない状況に追い込まれるかもしれません。
みなさまは、この現状をどのように分析されますか?
二〇一四年十月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有木宏治
コメント
コメントを投稿