2014年 8月号
一、天候激変、商戦は予測不能
いつもお世話になりありがとうございます。
先月号で夏本番を宣言しましたが、この一カ月、夏らしい日は少なく、雨天と曇天ばかりが続いたような気がします。そして、全国各地で風水害が頻発した記憶も重なってきます。復旧にも時間がかかっているのが気がかりです。先週は、広島市の、一九九九年の災害と同じ地域で大規模な土石流が発生し、多くの被災者が出ました。不幸にして亡くなられた方々には、つつしんでご冥福をお祈りいたします。この被災地と同じような立地条件の地域は、全国にどれほどあるのでしょうか。都市に隣接する山の斜面をベッドタウンとして造成した地域は、みなさまのところにもあるのではないでしょうか。今回のような都市型災害について、今後十分な警戒が必要だということを改めて感じました。
今、雲の様子を眺めると、すでに秋の雰囲気を感じます。早い秋の到来は衣替えを促します。私たちの業界にとっては、それはそれでありがたいことです。しかし、夏商戦を当て込んでいた業界にとってそれは、厳しい結果をもたらします。今月は、本来なら端境期なのですが、生産現場ではお盆にもかかわらず、夏物の追い込みで最後までバタバタしました。今後いつ秋もの商品から冬ものへと移行するのか、予測が大変難しい年となりそうです。気候の激変は、生産、在庫の計画や管理を一層困難にします。
二、中国と共存共栄の秘訣とは?
私はこのリミット通信を書き終えた後、中国福州工場に参ります。本格的な秋冬商戦に向け、増産と縫製品質の向上を両立させるための討論会をもちます。来月には皆様にも、その結論をご報告できると思います。
最近、アパレル業界や販売店の皆様から、あることでご質問を受けることが増えています。そして、それにお答えすることに窮しています。その質問とは、リミットと中国福州工場が良好な関係を構築している秘訣についてです。
本当のところは、次から次へと問題が発生しているのです。異文化間で会社を運営している以上、むしろ当然で、それが現実です。その問題を双方の立場から検討し、最善の方法を選択し実行する。結果が出ない場合は方法を変えてみる。それは、何も特別なことではありません。国内と同じように実践しています。お互いが、「共存共栄」を考えるから、うまくいっているのだと思います。中国側のマネジメントは、信頼した総経理にすべて任せる。国家も文化も違うわけですから、具体的な対処法も当然違います。「郷に入っては郷に従え」です。
最終的には、こちら側が相手側に、マネジメントを任せ切れるかどうか。相手側が全託できるビジネス・パートナーかどうかです。
三、治まらないデフレ、本質的脱却とは?
昨年から今年にかけ我が業界では、為替と海外生産コストの上昇により、値上げに踏み切るメーカーが多くみられます。
確かに日銀は今年に入ってからの消費者物価上昇率が一%台を超えてきているので、来年には目標とする二%に到達すると予測しています。しかし本当に十六年間にも及ぶ長いデフレからの脱却に至るのでしょうか?消費税増税前の三か月間は需給ギャップも六年ぶりに改善されたが、駆け込み需要後は一気に反動減になりました。消費者としての私自身を例に挙げても、消費税増税後は、商品購入時の品質、価格を吟味する目が増税前より厳しくなりました。気がつけば、ものすごくシビアになっている自分がいます。
個人消費が順調に回復してきた要因は、デフレ下の物価下落による実質所得の押し上げがあったからです。デフレ脱却の出口まで来ましたが、今後、個人消費や設備投資といった内需が本当に上がってくるのでしょうか。住宅市場では大幅に落ち込んだ業績回復の兆しがみられないのが現実です。人手不足による賃金上昇などが維持され、それによる上昇分所得が消費に回るようになると、脱デフレに向かってゆくのでしょう。しかしそのためには、あらゆる業界・業種をカバーするもっと大きな意味での構造改革が進まなければ、需要不足の本質的改善は実現しないのではないでしょうか。
中核市であるここ福山でも、商業一等地であるはずの駅前には廃墟同然のビルが点在し、いわゆるゾンビ企業の整理・淘汰のスピードが一向に上がりません。この新陳代謝を早めるためには、抜本的な政策転換が必要でしょう。しかし、それが実現できるような成長戦略はまだ誰も示していません。本当の意味でのデフレ脱却には今しばらく時間がかかるのではないかと思います。このような背景を考慮すると、コスト上昇イコール値上げという判断には疑問が残り、この業界の価格戦略は本当に簡単ではありません。
二〇一四年八月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有木宏治
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