2013年 11月号

 

 一、開発即販売、IT技術で可能に
 

 いつもお世話になりありがとうございます。

 今年もいよいよ最後の『リミット通信』となりました。本当に短く感じる一年でした。

 まだ十一月だというのに、はやくも寒波が日本を覆いました。広島県北部では降雪がありました。そのためか、先月号の同封DMで紹介した新商品にうれしい異変がありました。その商品は、防寒用ブルゾンです。ファスナーで取り外し可能な保温・制電素材の起毛ライナーが付いています。急に引き合いが殺到し、皆様にご迷惑をおかけしている状況です。リミット総合カタログには掲載されていない、生まれたての超新商品です。リミットには、男子作業服の防寒着に当たる製品が今までなかったのですが、これで真冬に販売できる製品ができました。

 それにしても今の時代は本当におもしろいものです。商品開発後すぐリミットスタジオで撮影、DM作成して皆様にお届けし、すぐに販売できるのです。今後もデジタル・IT技術を駆使し、勝機を逃さず商品とその情報を皆様にお届けできる体制を強化してゆきます。


 二、「スマホde発注」、ユーザーとの距離縮める


 一年を振り返るとき、必ずその年の『リミット通信』を読み直すのが私の習慣です。本年冒頭は、「今年は遷宮の年です。何かが大きく変わる予感がする」と書いていました。顧みると、スマホの急激な普及に背中を押され、カタログで「スマホde発注」を試みました。すると、たくさんの販売店、エンドユーザーの皆様からアクセスを頂きました。

 そのアクセスを解析すると、リミットスタジオで撮影した商品詳細説明動画のどの製品のどんな機能や使用に興味を持ってもらえたかがわかります。今まで営業スタッフがおらず、エンドユーザー情報の入手は皆無でした。今年はエンドユーザーとの距離が大きく縮まり、その声を聴くことができた素晴らしい一年でした。

 この分析データを活用し、お客様一人一人にカスタマイズした別注提案までレベルアップしてゆくことが私の夢です。来年度の新カタログでは、「スマホde発注」をさらに使いやすくカタログ最後尾からバーコードを移動させ、商品の横に掲載させる予定ですので、ご期待ください。


 三、デフレ下、混乱する上代価格と掛率


 今年は終盤になって、食品偽装問題や二重価格表示の問題が大きく報じられました。私はその根本的な要因の一つに、アベノミクスによる円安政策があると思います。食品原材料の多くは輸入に頼っています。デフレの下、激化する安売り合戦の最中、原材料高騰は頭の痛い問題です。現場では原価を下げる方法しかなかったのでしょう。結果的にお客様を欺く事態に発展していったのでは、と推測します。

 では、これは食品業界だけの問題でしょうか?例えば、我が業界のカタログ上代表示には問題がないのでしょうか?

 製造現場は海外シフトしています。そこでは、製造コストが上昇しています。政策的な円安で、製品輸入コストも上昇しております。それなのに体力を消耗する安売り競争を止めることができないのです。そこで、実質値上げを誤魔化すために極端に上代表示を上げ、掛率を下げるという状態に陥ります。ここまでカタログ表示価格と販売価格が乖離してくると、エンドユーザーは疑心暗鬼に陥っています。

 リミットも昨年初めに値上げをしました。掛率は長年変更していません。しかし、販売店の皆様からはいつも掛率の問い合わせがあります。お聞きすると、掛率変更が常態化して、記憶ができないということです。実は、リミットでは十二年前、業界の商慣習に疑問を感じ、実験的な取り組みをしました。別ブランドのカタログで、表示価格をユーザー販売価格とし、販売店仕切りを七掛にしたカタログを発刊したのでした。その時は時期尚早で、販売店から総スカンを食らいました。しかし今になって思えば、方向性は間違っていなかったと思います。この十二年で世の中は、大きく変わりました。食品業界の不祥事を他山の石として、カタログ表示価格の透明化を図る方向に歩んでゆくことこそ、業界を存続・発展させてゆくことになるのではないでしょうか。ぜひご意見をお聞かせください。


 四、多品種少量、スピーディな物流が残る


 世界の市場では、アメリカが主導するボーダレスな世界競争が席巻しています。発展途上国で安く大量単品生産をし、価格競争によって世界中に製品をばらまく戦略です。しかし、このやり方ももう行き着くところまで来ています。東南アジアもじきに人件費が上がり、欲しいものが揃えば早晩、需要は落ち着きます。その後、インドや南アフリカまで進んでいくのでしょうか? この状況を批判して、「日本の製造業は世界競争に左右されず、ガラパゴス戦略を邁進すればよい」という考え方もあるのは事実です。

 作業服業界は、国内で生産した製品の海外輸出販売はありません。国内需要といえば、進行する人口減少とともに、大口物件はどんどん減ってゆきます。物流ロットの数量が減ってきているから、問屋や専門販売店はどんどん姿を消しています。その一方で、小さな荷物一つでも各家庭に届ける物流インフラが整ったので、インターネット経由で小ロットの直接販売が可能になりました。結果、SPA型の製造小売りが、どんどん勢力を増しています。

 今まで店頭販売に頼っていた食品メーカーも、大手流通のSPA商品に棚を独占され、販売網の再構築に躍起になっています。作業服業界も、平均生産ロットが五百枚だったものが、人口減少とともに三百、二百枚とどんどん萎縮してゆきます。そうすると日本には多品種少量でスピーディな物流が可能なアパレルしか残りません。今はちょうどその過渡期です。小口をいかにたくさん取れるかが勝負になります。それには販売店との連携が非常に重要になります。これからリミットの時代が必ずやってきます。

 今年も一年間、本当にありがとうございました。


  二〇一三年十一月二十五日

       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有木宏治

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