2012年 10月号
一、新システムで確実な需要予測
いつもお世話になりありがとうございます。
日ごとに秋が深まり、朝晩は肌寒く感じるようになりました。九月後半から一気に加速した秋冬商戦は、十月に入ってからも継続しています。今月は久しぶりに出荷ベースで昨年同月の実績を超える模様です。
毎年、一般衣料同様、作業服にも流行の色柄があるようで、今年はストライプの商品に人気が集まっています。そのためか、思わぬ需要が出ています。多品種少量生産で、過去データをベースにいくら精度の高い生産計画をたてても、在庫を残さず速納百%の完売とならないことも発生します。しかし、ここ数年、品切れを起こしていても、国内工場でクイック生産ができているので、ご相談を受けてからのキャンセルは非常に少なくなっています。
生産計画の精度向上のために、この八月に新システムを導入しました。投資額は二千万円でした。この投資を無駄にしないよう、更なる的中率向上に全力を傾けてまいりたいと思っております。
二、チャイナ・リスクと向き合う
最近、次のようなことがありました。
リミットでは、海外工場製造分は全品工場で検査してから輸出します。中国から輸入した製品は、国内で再度、リミットの品質基準に照らして、全品番検査をしております。先般入荷した一部製品の襟部分が基準をクリアできず、国内工場で全品修正いたしました。早速、中国工場のライン責任者にメールを入れ、全員への指導を指図しました。
中国工場総経理からは、最近従業員の入れ替わりが激しく、入れ替わった従業員一人一人に対する指導不足があった。品質重視の徹底と技術向上を目指した指導を行った、との連絡をもらいました。元来中国の工場は自社独資であり、何ごとも以心伝心、相互信頼が成立していました。今回のことで中国総経理は責任の所在を明確にし、誠実で素早い対応をしてくれ、改めて感謝いたしました。
この件は、タイミングとしては、ミシンのメンテナンスのために訪中スケジュールと重なりました。そこでこの機会に、国内工場の縫製指導者も同伴させ、改めてリミット品質基準の徹底を図りたいと、総経理に連絡しました。総経理は、この度の領土問題に端を発した反日行動の影響が少なからず心配である、せめて十一月八日に開かれる共産党代表大会が終了するまで待って欲しい、時期については、様子を見て連絡すると返事をよこしました。そこで日を改め、年内には訪中したいと返信いたしました。
このこと以上に、今憂慮するのは、中国経済の減速です。雇用や賃金の下振圧力の高まり、所得・地域格差の拡大、来月の指導部交代を契機とする国内の政治的社会的混乱の増幅などのチャイナ・リスクが深刻になるかもしれません。一方の新興国経済の牽引車、インドやブラジルなどの成長力も大きく低下してきました。ヨーロッパの信用不安と新興国経済の失速から広がる世界経済の混迷によって、輸出に活路を見いだせなくなる中国が、国内政治の鬱積のはけ口として、更なる対日批判に舵を切らざるを得ない状況に追いつめられてゆくのでしょうか?
この度の一件は、国と国との政治問題が大きな経済問題にまで発展するといったカントリー・リスクを改めて痛感させてくれました。私は、リミットの前に、どのようなリスクが立ちはだかろうとも、原点である人と人が思いやりを持って通じ合っていれば、必ず道はひらかれる、ということを証明したい気持ちになりました。
三、多様化する消費とリミットの対応力
ここ数か月、備後のアパレル業界は過剰在庫に苦しんでいます。その突破口を見出すこともできません。今までの単品大量生産・在庫積上方式は、定番品の販売が時系列とともに増加してゆくことが大前提でした。しかし、人々の消費志向は多極化し、毎年売れ筋が変化する人口減少時代を迎えました。国内で働く人が減少する中、年単位で定番や廃番を決定しなければならない時代がやってきました。Aという商品がたくさん売れはじめたかと思うと、Bという人気商品が突然売れなくなる、ということが頻発します。つまり多品種少量生産でなければ対応できなくなるということです。
このような消費社会の変化は、雇用にも影響を与えます。商品が放っておいても売れるときは、働かなくてもいい時間が生じ、突然の流行で新しい商品の生産が追いつかないときには、人手が不足するという極めて非効率な事態が生じやすくなります。そして、非正規雇用者を大量に生み出します。これが、パラサイト・シングルの増加や住宅のシェアハウスの増加など、ライフスタイルがシェア型に切り替わってきている大きな要因といえます。
リミットは、専門的スキルに長けた少数精鋭で運営しています。その上、各人は、専門分野とは別に、二つ以上の他部門を兼務しています。それが可能な理由は、時代の構造的な変化を反映した組織形態を構築してきたからです。これからの消費は、単なる物の消費から、本格的な人間的サービスの消費へと変わっていきます。誰が誰に対して、何をどのように物を売るかという目的意識が極めて重要になります。リミットは女子作業服製造の草分けとして、目的意識と責任を持って、刻々と変化する消費社会に、迅速に適応してゆきます。
二〇一二年十月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有木宏治
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