2012年 9月号

 
 一、小口対応が理想のステージへ


  いつもお世話になりありがとうございます。

 お彼岸を迎え、こちら広島でもようやく猛暑から抜け出すことができました。カレンダーの残りはあと三枚。あっという間に二〇一二年も終わります。秋冬商戦もこの季節にふさわしく、実り多いものとなるようにと祈る思いです。

 さて、今月の中旬までは猛暑の影響もあり、商品の動きは、低調でした。販売店の皆様からは、メーカーの値上げ前に仕入れておいた手持ち在庫がなかなか捌けず、ここ数か月はその一掃に時間がかかったというような話を伺いました。中旬以降、その手持ち在庫もようやく少なくなり、気候もやっと過ごしやすくなったせいか、大口注文も増え、受注残もやっと昨年並みに増えてまいりました。 

 リミットの場合、国内生産も二つの工場でクイック生産し、海外工場も多品種少量生産を生産計画通りに回しております。今騒がれている世界大恐慌にもし突入したとしても、一枚、二枚の小口注文は決して無くなりはしません。例え小口販売でも、お互いに利益の出る販売システムを構築しております。一枚からでも喜んで出荷いたしますので、販売店の皆様には手持ち在庫の負担は全く無く、資金繰りも楽になるはずです。

 これから本格的に始まる経済状況の大変化は、リミットにとって、いつしか追い風となることでしょう。たくさんの販売店の皆様に支えられ、一枚一枚が積み重なり、少しずつ理想のステージに近づいてまいります。
 

 二、グローバリズムとナショナリズムの狭間で
 

 グローバルな経済環境の中での強力なナショナリズムの扇動は、時として大きな衝突を招いてしまいます。尖閣諸島の問題で、中国では大規模な反日デモが起き、日系企業や在中日本人に多大な影響をもたらしました。私も中国工場が心配になり、メールにて現状を確認しました。反日デモは起きていましたが、幸いにも工場に被害はありませんでした。

 それにしてもこのような大規模なデモが最近多いような気がします。領土問題に揺れる中国、韓国、日本だけではなく、イスラムでの反米デモ、EUでの緊縮財政反対デモ、ニューヨーク証券取引所での格差反対デモ、総理官邸前での反原発デモなど数えればきりがありません。今挙げたすべてが同類ではないので一概には言えませんが、私はこのような行動に民衆が扇動されてしまうのは、リーマン・ショック以降の世界的低成長と、これまでの産業資本主義に対する不安や疑問、猜疑心が、大きく関わっているような気がします。

 資本主義経済最先端のアメリカですら、このたびの大統領選挙で対立する二人の候補の争点は「雇用」問題です。金融経済最先端のアメリカでさえも就業率は低下しているのです。というよりも、最先端のアメリカだからこそ、労働集約産業は海外に出てしまい、国内には高度な技術集団部門だけが残り、そういった知識労働者と対人サービス労働に分かれ、中間層が崩壊し格差が広がっています。
 そして、能力と機会を失った最底辺層の人びとも生まれて出口がない状況なのです。今、日本の失業率は四・二%でアメリカの半分しかありませんが、気を付けなければならないことは、日本もアメリカのように雇用が増えない構造的傾向に向かっているということです。日本は日本独自の成長戦略を模索してゆかねば、グローバル社会の中で埋もれてしまうことでしょう。
 

 三、らしさと制服、問われる存在価値
 

 以下は三浦展著『第四の消費』からの抜粋です。

「何が彼らを自分らしさ主義者にしたのか。彼らを自分らしさ主義者にしたのは間違いなく消費社会なのだ。つまり、自分専用の部屋、自分専用のステレオ、自分専用の電話、自分に似合う(と言われる)服等など、そうした自分専用の『私物』の私有経験こそが、彼らの自分らしさ主義の土台となっているのである。逆に言えば、彼らから私物をすべて奪ってしまえば、おそらく彼らは彼らがこだわる自分という存在のあまりの軽さにたじろぎ、ひどく不安に陥るに違いない。物がなければ、自分らしさの根拠などどこにもない。まず自分らしさがあって物を選ぶのではなく、物を選ぶことで自分らしさが形成される。かつては共同体における役割が自分らしさを支えていたように、今は否応もなく物が自分らしさを支えているのである・・・」

 未来社会の中での「制服」の存在価値とは、いったい何なのでしょうか?


  二〇一二年九月二十五日
       笑顔着
       リミット株式会社
       代表取締役 有木宏治

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