2011年 11月号



 一、絶望から希望へ、一歩一歩



今年も大変お世話になり、ありがとうございました。

残すところあと一ヶ月となり、このリミットネットワークも今年の最終号になりました。今年は皆様にとってどんな一年だったでしょうか?

価値観の大きな転換点だった今年は、政治的にもまた経済的にも印象に残る大きなニュースがたくさんありました。その中で特に私の記憶に残っている今年の出来事。その筆頭は三・一一です。東北地方太平洋岸沖を震源とするマグニチュード九・〇の地震が発生、東日本に大津波が襲いました。福島第一原子力発電所が被災し、甚大な被害をもたらしました。もう一つの記憶は、なでしこジャパンの活躍です。六月、ドイツで二〇一一FIFA女子ワールドカップが開催され、初優勝しました。

この二つの出来事には何らの関係もないかもしれません。しかし私には繋がっている出来事です。大震災で大きな傷跡を背負い、打ちひしがれたたくさんの日本人に、なでしこジャパンの活躍が大きな希望と誇りを与えてくれたと確信しています。

彼女たちは、殆ど顧みられないところから、一歩一歩夢に向かってひたすら努力して頂点に立ちました。大震災からの復興はまだスタートしたばかりです。原子炉の廃炉まではまだ気の遠くなるような歳月が必要ですが、来年も一歩、一歩確実に、復興という旗の下、特に被災された皆様と一緒にひたすら前に進んでゆきたいと思っております。



 二、リミットイズムのコスト



「来年はリミットをどの方向に、どういった方法で成長させるか?」毎年最終号のネット原稿を書いていると、頭にボンヤリと浮かんでくる課題の一つです。このことを考えはじめると、とたんに筆が止まってしまいます。それでも確信を持って言えることがあります。今までリミットが育んできた「産むこと・作ること・売ること」の三つの機能を死守する使命感が溢れていることです。三つの内、一つでも機能しなければ、リミットのリミットたる所以がなくなってしまう気がします。

リミットは社員も少なく、業務の一つでもアウトソーシングすれば楽になるように思わないではありません。しかしそれは、幻想です。「企画・生産・販売」の各分野にも、確固たるリミットイズムが根底に流れています。これを、社外で新たに教育するとなると、そのコストたるや計り知れません。



 三、今が物づくりを見直すとき



例えば「作る(生産)」ことについて考えてみましょう。アメリカは、「脱工業社会」を目指し、産業構造を製造業から金融、サービス産業やソフト産業に大きく転換しました。しかし今のアメリカの金融セクターに偏った経済政策を見ていると、大失業などの原因は製造業を海外に積極的に移転させたせいではないかと思うのです。サービスやソフトは少数精鋭でコンピュータ等を駆使するため、大きな雇用には繋がりません。技術革新があると、雇用はさらに減少します。

サービスやソフト産業が機能するためには、その顧客となる人々が持つ資産が重要です。現在のアメリカでは消費が低迷したままですから、個人の消費力をベースとしたサービス、ソフト業を優先させようとしても、それでは雇用回復は望めません。

アメリカには名だたる製造業もありますが、部品や素材の生産は日本を始め諸外国が大部分を占めています。中間の部品部門では完全に空洞化しています。このことを踏まえ、アメリカは徐々に政策転換を図り、ドル安を背景に雇用力のある「モノづくり」に構造転換を図り始めたというのです。

アメリカは、TPPによって、かつてのような強い生産と雇用を回復しようとしています。しかし、一朝一夕に製造業の強かった元の形には戻れません。日本も正式にTPPに積極的に参加していく決断を下した。いわばアメリカの助走期間に、日本は改めて日本のモノづくりをもう一度見直し、断トツの技術力をさらに磨いてゆかねばなりません。



 四、価格改訂と決意



リミットも更なるユニフォームの可能性を深耕し、その先を目指して研究開発と生産を継続しなくてはなりません。「産むこと(企画)」は、一朝一夕にはなりません。失敗を繰り返しながらでも、ゴールに球を追い込んでゆかなければ進化は止まります。リミット総合研究所と国内の二つの専用工場は、自社に必須の分野です。多品種少量生産でコストがかかっても維持します。

リミットは、二十年に渡り価格を変えず守り続けてきました。しかし、今まで以上に働く女性に喜んで着用していただくユニフォーム作りのために、どうしても皆様とエンドユーザーに負担をお願いしなければなりません。

一般市況はまだまだ厳しい状況が続いております。更なるユニフォームの社会的認知の向上目指して、繊維業界が一丸となって取り組んでゆかなければならない時期が到来していると考えます。来年もよりよいユニフォームを皆様にご提供できることを目指します。

なにとぞご理解いただきますようお願い申し上げます。



二〇一一年十一月二十五日

笑顔着

リミット株式会社

代表取締役 有木宏治

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