2010年 10月号
一、日本の技術力を再確認
いつもお世話になりありがとうございます。
先々週、東京で開催されていたジャパン・クリエーションに行きました。繊維の総合展示会に相応しく、あらゆるジャンルの生地、附属品などの素材を見てきました。優れた素材でも機能性の観点からみると、作業服というジャンルには使用が無理なものもたくさんありました。しかし、一つの素材が後加工により全く逆の機能を持ったり、全く別の表情や触感になったりする様はまさに驚きでした。日本の高度な技術力を垣間見ました。このような業界を挙げての総合展示会も、政府の事業仕分けの対象に上がり、今後の活動に支障をきたすような記事も目にしました。非常に残念なことだと思います。
このたびの出張では、紡績の来春夏展示会も行きましたし、来年のカタログの撮影場所も見つけることができました。大変有意義な出張でした。アンテナはたくさん、さまざまな方向に広げておかないと、と痛感させられました。
二、堅調な受注、自社生産充実
十月も終わろうとしておりますが、生産の方は相変わらず受注残に追われております。その影響もあり、九月の売上は、昨年同月比一割強伸ばすことができました。
国内も中国も生産現場は残業をしています。なおかつ中国生産は製品ができればすぐ飛行機で日本へ出荷させる対応をとりました。それでも現時点でも注文残は昨年同日比八倍を抱えております。現在も注文は、毎日休むことなく入ってまいります。昨今の経済情勢の中、非常にありがたいことだと痛感しながら、これからの生産体制を考えると何とか早く注文残を消化しなければと焦っております。
生産の増減は、一朝一夕にできるものではありません。昨年から今年にかけて注文状況が一変しました。ちょうど今年二月の中国新工場立ち上げと重なりました。五月の連休明けから注文が一気に増え始め、七月には注文残がピークになり、昨年同月比で十六倍の残を抱えていた時もありました。それから徐々に新工場も軌道に乗り始めました。
三、不安定な環境下の生産体制構築
ところが、今度は生地、附属品の納期が遅滞する状況になってまいりました。紡績も一変に状況が変わりましたので、糸からの生産になれば納期がかかって当然です。リミットは計画生産ですので、まだ生地の方はそれほど手持在庫を切らしておりませんが、生地の追加発注の納期が、三ヶ月、四ヶ月掛かる状況になりました。今まででしたら一ヶ月で十分でした。中国の縫製工場も飽和状態です。来年に向けて、今から委託工場の確保競争が激化しているようです。
日銀の十月の月例経済報告は、一年八ヶ月ぶりに「足踏み状態となっている」と下方修正されました。中国での製造コストは上がっています。他方、大規模な反日デモも連続して起こりました。今では「製品はいつでも手に入る」という状況ではなくなってまいりました。
服は、糸を作り、それを織って生地にし、それを裁断、縫製、加工してやっとでき上がります。しかも海外生産なら時間もさらにかかります。お客様からの発注キャンセルを調べましたら、今年四月から九月までで、昨年比四倍に増加しております。お客様から事前に何らかの情報をいただければ、このキャンセル分や受注残も少しは解消されるものと思います。この先の生産体制をどう読み、どう行動するかによって、会社の生死を分ける判断になるかもしれません。
四、冷静な状況認識が強み
私はこのような状況の中でも、意外と冷静に毎日を過ごしております。その理由は第一に先月もこの通信で書きましたように、一度生産調整をし、在庫を半減させ、製品を現金に換えているからです。そして第二の理由は、今後増産に向かって、中国新工場への更なる投資と国内工場への人的資源の投入を実行していることだと思います。
今年の春は落ち着かない毎日を過ごしました。なぜなら発注がくるかどうか、発注がきても生産できるかどうか心配しながら、中国新工場の育成を図っていたからです。親しい方々からも心配して声をかけてくださるのですが、いつも「大丈夫です」と自分に言い聞かせるように返事をしておりました。
しかし、これからの海外生産を考えると、あの時あの状況下で、中国に自家工場を作って本当に良かったなと思います。中国新工場も国内工場も、まだまだこれからも試練が待っておりますが、最低限スタート地点には立てたと考えております。
二〇一〇年十月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有木宏治
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