2010年 9月号

 

 一、秋冬商品準備を急ぐ

 

 いつもお世話になりありがとうございます。

 ようやく朝夕は秋らしい爽やかな風が吹き始めました。しかし、ここ広島ではまだまだ日中の残暑が厳しく、上着を羽織ることを躊躇します。異常気象といわれる天候によって、結果的に夏物の販売をずっと引っ張るカタチで九月を終えようとしています。とは言え、秋冬商品の受注も徐々に加速してきており、今後の展開が気になるところです。

 今夏の懸案事項であった受注残の問題は、現時点で、昨年同月比四倍まで解消されました。夏物は在庫が薄い状態で受注が先行し、追っかけ生産により何とか納めることができました。これから本格的な商戦に入る秋冬は、気候がずれて受注のややペースが遅くなっています。現在、中国青島工場と中国福州工場から次々と製品が入荷しつつあります。従って夏物受注時ほどの混乱はないと考えております。新設した福州工場も、日を追うごとに生産高が増えてきており、来季春夏に向かっては軌道に乗ってくるものと予想しています。

 

 二、今夏の混乱から学ぶ当面の準備

 

 今年の春夏の混乱から感じることは、定番商品の底力と提案商品のフォローの難しさです。

 定番品に関しては今後中国の自家工場の生産力をつけていけばよいことですが、提案商品はシーズン毎に売上の差が開くので、生産計画の悩みがつきません。適正在庫を徹底して追及するためには、どうしてもクイック生産のできる国内工場が必要です。今季春夏は国内工場がフル稼働して夏物を追っかけましたが、来季のことを考えると今から準備をせねばなりません。

 ところが、中国工場もなかなか従業員が集まらなくなり、これが不安要因です。そして、中国の縫製業も、かつての日本と同じ道を歩んでおります。この備後にも昔は大きな下請工場がたくさんありましたが、現在では独自ブランドを持った、特殊な技術力のある小さな工場しか残っていません。そこで、来季に向かって国内工場での人材の育成に注力することにいたしました。いくらリミット企画研究所が優れた製品を開発しても、量産するところがなければ社会の役に立つことはできません。そのために人材の育成が欠かせません。

 これには長い時間がかかります。二、三年先を見越して育成し始めなければ間に合いません。募集はすでに始めており、現時点では、来春から生産人員四割の増強が決定しております。安心の納期と品質向上に向かって、更なる国内工場充実に注力してまいります。

 

 三、厳しい情勢、生き残りのために

 

 今後、積極的な人的資源の投資に向かうという決断の背景には、リミットとして更に多くの働く女性のお役に立ち、より多くの利益確保をしなければならないという約束もあります。しかし、まだまだ不況の風は止んではいません。日本の現状を冷静に振り返ってみても、冷戦後二十年から見えてくるものは何でしょうか?一九九〇年と比べても、市街地価格指数は商業地で七割、住宅地で五割下落。日経平均株価はマイナス七十%。現金という資産を貯金していても、現在の利率ではスズメの涙ほどの金利しか付きません。

 つまりこの二十年間は、資産価値の下落が起きた資産デフレの時代です。日本の企業はその資産デフレの中、海外に生産拠点を移し、雇用を控えてまいりました。日本の貿易相手国のシェア一位はアメリカから中国に変わりました。その中国の年間海外渡航者数は五千万人に上り、日本の三倍にまで増加しております。

 資産デフレ、現役世代人口の減少は、日本経済停滞の原因となっています。この二十年の間に日本の置かれている立ち位置は大きく変わりました。近年発展をしている大中華圏の躍動。アジアダイナミズムの中で、例えばシンガポールなどは医療に特化したシステムやロジックとしての競争で、世界の中で存在感を発揮しております。

 この厳しい状況の日本に居を構えるリミットは、今後どのような羅針盤を持って進路を決めていくのか?総合企画研究所・販売・生産計画部門は、少数精鋭の特化した個々の知恵を活かし、ITシステム・ロジックを駆使し、バーチャルな力を先行させていくことが、生き残ってゆく唯一の方向だと確信しております。



  二〇一〇年九月二十五日

       笑顔着

       リミット株式会社

       代表取締役 有木宏治

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