2010年 8月号

 

 一、求められる自己変革



 いつもお世話になりありがとうございます。

 酷暑が続く毎日ですが、皆様体調など崩されてはいませんか?今月初旬に訪れた中国福州工場は気温三十八度で茹だるような暑さでした。今では中国でも福建省は一番暑い都市として名前が挙がっているそうです。

 ビジネスも熱く、訪れる度に進化している工場や町並みを見ていると、為替に一喜一憂している日本経済が本当に小さく感じてしまいます。私たちが次のステージに進めるように自己変革を繰り返さなくてはと痛感いたします。問題の核心は、私たち個々の戦略にあるのではないかと思います。



 二、秋冬物と福州工場の態勢



 もうすぐ九月になり、そろそろ秋冬もののシーズンです。しかし、今年は残暑が厳しいこともあり、秋冬は十月以降になる予感がします。春夏の品薄状況を見越して、早くも大口物件の発注も出始めていますが、秋冬物は春夏物に比べて期間が長いので短期間に集中することはないと思っています。ただ、春夏の残が九月以降でもキャンセルされず残っているのが若干気になります。現時点でも受注残が昨年比の五倍あります。受注残の消化が最も優先される課題ですが、国内工場もフル生産でここ数年記録したことのない水揚げができております。

 一九九五年五月号のリミット通信を開いてみると、中国青島工場設立当時の記事が出ています。国内縫製では採算が難しくなり、中国に進出した経緯が載っています。しかし国内自家工場の灯火だけは残し、社員が誇りを持って工場に来られるように積極的に拡張する旨の記事に目がとまりました。現在では当時に比べ、技術力は格段に上がり人員も増え、素人でも採用後の教育で、高級婦人服も生産できる工場に成長しました。この成功体験を活かし、現在新しい福州工場にすべてのノウハウを伝承しております。日を追うごとに福州工場は成長し、水揚げも徐々に増えております。

 問題もあります。人の採用、定着はなかなか難しく、工場のある工業区周辺には募集の立看板が目立ちます。これは一朝一夕には解決できないと腹を決め、青島工場でフォローしながら規模拡大を計ってゆきたいと考えております。



 三、いよいよ長期の為替予約終了に目処



 現在の会社の状況ですが、約半年間海外生産をストップしていたので七月末の海外を含めた総在庫は昨年同月比で約五十%減になりました。定番商品も品薄になり、五月以降の急回復で受注残が溜まる一方でした。対策として、各工場が追っかけ生産に全力投球してきました。結果、七、八月ともに売上が昨年比四割増になり、これでようやく上半期の売上が昨年に追いつくことができました。

 在庫が半減したために、資金的には楽になりました。一方、金融機関からの借入残はまだ昨年比十%増です。その原因は、円高による長期の為替予約負担を金融機関に応援していただいていたからです。

 二〇〇四年六月から実行した長期オプション予約は、二〇〇七年四月までの前半は固定で利益が出て好調でした。二〇〇七年五月以降は百三円より円高の場合、百十一・九円で通常予約額の倍額を引取る契約でした。二〇〇八年頃から急激な円高傾向になり、為替資金負担が重く圧し掛かってきました。またこの年の後半から中国生産を徐々に減産したので、余計に手元のドルは余るようになりました。さらに二〇〇九年八月以降は海外生産をストップしましたので工賃送金もなく、毎月引取るドルは無用になってしまいました。余ったドルを毎月円転して使用したのでは莫大な為替差損を引き起こします。

 これに関して、会長からは毎朝、ありとあらゆる対策や方法論のアイデアが、頻繁にメールで送られてきました。会長の哲学は最初から、マイナスをプラスにするという方法論でした。知恵に知恵を絞った方策を会長が導き出し、私が実行するという形で、この難局を打開しました。どうみてもマイナスで損をすると覚悟していたことが、この八月で実際にプラスに転じ、利益を生み出すことができました。長期の為替予約もこの十一月で終了になります。これで積年の苦渋から解き放たれ、本当に運がよかったと改めて実感しています。



 四、製品に自信と積極姿勢で景気回復を



 さて、話題をこれから始まる秋冬商戦に戻します。春夏商戦の勢いがそのまま継続されるかどうか、と不安になります。春夏物は昨年の不況で支給がとんで、今年はこの猛暑でユーザーの皆様ももう我慢ができなかったのではないでしょうか。女性物は防寒の需要もありません。この円高がしばらく続いた場合どうなるのか?ただ確信を持っていえることは、世界経済がどん底に向かった後はただ上がるだけだということです。しかも日本の製造業の品質は世界一です。

 経済が好転に向かえば、必ず世界から注文が入り、企業業績が好転すれば、必ず制服を購入するようになります。その時がいつなのか?その時に照準を合わせ、今から積極姿勢で準備を始めなければなりません。



  二〇一〇年八月二十五日

       笑顔着

       リミット株式会社

       代表取締役 有木宏治

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