2010年 7月号

 

 一、集中豪雨被災をお見舞い申し上げます

 

 いつもお世話になりありがとうございます。

 今月中旬、西日本を襲った集中豪雨によって、広島県内でも大きな被害が出ました。台風などの自然災害が比較的少ない瀬戸内でも土砂災害の様子がニュース映像が流される度、自然の力に恐怖を感じました。それと同時にグローバルな世界経済の激流の中で、一本の流木のように飲み込まれている日本を見ているようで背筋がぞっとしました。皆さんの地域は大丈夫でしたか?被害にあわれた地区のお客様の復興を、心からお祈りいたします。

 今年は残暑が厳しいと発表されています。しかし、天候は自然の摂理ですので人間が予測することも実際にはかなり難しいのではないでしょうか。近年各地で被害をもたらしているゲリラ豪雨なども、都市のヒートアイランド現象などが原因として上げられていますが、そのメカニズムは殆ど分かっていません。

 すっかり梅雨も明け、ここ広島では毎日暑い日が続いております。くれぐれもご自愛ください。



 二、あえて困難の道を選択



 七月も終わりに近づきましたが、最高で十三倍になったお客様の注文残は、現在、昨年同日比十倍で推移しております。もちろん注文残のトータル金額は縮小傾向にあり、これから日を追うごとに解決されることと思います。

 製品在庫金額は昨年と比べ三分の一に落とすことができ、資金面ではかなり楽になりました。現在のような経済環境の下で財務面を再強化できたことは、今後においても皆様のお役に立てる環境整備ができたことになります。大変ありがたいことだと思っております。

 ここ十年、リミットは、皆さまに納期の面でのご迷惑をおかけすることはありませんでした。生産計画は、極めて順調でした。しかし今年は、昨年の反動で、生産計画に狂いが生じ、その対応に追われる日が続きました。

 現時点の経済環境は、決して好ましいものではなく、今年秋にかけても追い風はあまり期待できません。こうした状況では、安易に在庫を積むことで乗り切るのではなく、更なる生産計画の精度向上に挑戦することが必要です。それは決して、安易な道ではありません。しかし、この困難への挑戦は、納期のリードタイム短縮と、限りなくゼロに近い在庫の両面を可能にする最善の方法だと確信しています。



 三、本格稼働間近、福州工場へ期待



 ところで、注文残がピーク時で十三倍まで増えた要因は、在庫をさらに大幅に圧縮したことに加えて、今年の夏物注文の激増が予測できなかったことにあります。そして、新しい福州工場本格稼働が予定通りに進捗しなかったことも要因です。リミット夏物の最盛期あたる五月時点の受注ベースでは、昨年同月比三割増のご注文をいただきました。高まる需要に供給が追いつかず、昨年とは正反対の状況になりました。

 この過程で教訓を得ました。新工場立ち上げがいかに難しいかを実感したのです。勉強不足だったのは、同じ中国でも地域によって税関の対応などが異なるということでした。福州では、青島での経験からは想定できない税関申告のやり方で、戸惑いながら総経理と対応策に追われ、組織が悲鳴をあげました。逆に、納期が逼迫していたからこそ、会社全体が久しぶりの緊迫感に包まれ、そういった意味で貴重な経験と教訓を得たと感謝しております。おかげで福州新工場も日を重ねるごとに生産枚数が上がってきております。本格的な秋冬物の時期に向け、リミットの生産環境はさらに向上してまいります。

 リミットは、リミット製であればいかなる製品であっても、生地がある限り、納期がかかっても生産することをリミットの使命としています。このカテゴリーの生産でも現在もご迷惑をおかけしているケースがあります。皆様には本当に申し訳ありませんが、今しばらくお待ちくださるようお願い申し上げます。福州工場の本格稼働は、必ず皆さまのご要望にお応えできるようになります。



 四、迫られる生きる選択の決断



 先日、ある雑誌を読んでいましたら、東京大学教授のあるレポートに目が留まりました。その方がおっしゃるには、『今世界は物凄いスピードで変化している。これはまさに潮流というべき大きな変化で、問題はそのスピードである。』というものでした。更にレポートでは、アジアは猛スピードで成長している最中で、逆にその中で日本マーケットの縮小は人口減少よりも速いスピードで進んでいる。その潮流の中で企業経営を考えた時、第一の道は、あくまで規模拡張を目指しアジアでのビジネス展開。第二の道は、縮小するマーケットの中で生き残るやり方。第三の道は、新しいことへチャレンジしていくこと。この三つしかないという内容でした。

 私はこのレポートに共感しました。そしてリミットが選択する道は、第二と第三の道であると確信しました。これからの生き残り競争に勝ち残ることが先決です。日本はもう二十年近くデフレギャップの状況から脱出していません。つまり需要に供給をあわせていくしかない、つまり倒産、廃業、戦略的なリストラ、M&Aなどで経済を調整させるしか方法がないのです。日本は長らくこういった問題を政治が先送りしてきました。しかし財政問題からもう先送りできない状況まできました。これからは否が応でも需給調整のスピードがはやくなるでしょう。市場がこれからも二割から三割縮小していっても生き残る方法を探すしかありません。最終的には体力勝負になるわけですから、財務力強化は欠かせないのです。

 それと重要なのはオンリーワンの精神です。リミットなら女子作業服、あるいは多品種少量生産で一枚からでもお客様に届ける通販システム、というような誰にも負けないものを創るしかありません。商品やサービスで差を出し、新しいビジネスモデルを構築していくしかありません。そしてさらに新しい分野に挑戦し続けることが今後二十年、三十年を考えた時、必要不可欠であると思います。

 これらは、まさに今、リミットが取り組み始めたことばかりです。日本もいよいよ最後の本格的な調整の時期に入ってきました。すぐには結果が出ませんが、結果が出るまで根気強く犠牲を厭わず努力することが重要だと、自分自身に言い聞かせております。



  二〇一〇年七月二十五日

       笑顔着

       リミット株式会社

       代表取締役 有木宏治

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