2010年 6月号
一、今秋へ試行錯誤の福州工場
いつもお世話になりありがとうございます。
今年も憂鬱な梅雨の季節になりました。夏至も過ぎましたので、少しずつ日が短くなっていきます。もう今年も半分が過ぎるのですね。しかしこれからが本格的な暑さを向かえるわけです。お互いに体調など崩さぬよう心したいものです。
さて、今月中旬に四ヶ月ぶりに福州工場に行きました。二月の立ち上げ時はまだスタッフの人数も少なかったですが、順次縫製経験者の採用を進めたため、この度の訪中時には人数も増えていました。工場内にミシンの音が一層大きく響いて、活気がありました。
しかし、新たに採用した縫製経験者の従業員たちは、リミットの多品種少量生産には慣れていないようでした。限られた同じ製品をひたすら縫製することに慣れてきたのですから、無理もありません。今回も同行した企画室長がラインの変更を指示しながら試行錯誤を重ねています。工程分析を繰り返しております。
多品種少量のクイック生産実現に向け、日夜工夫を重ねる中国工場を見ていると、企画研究所での商品開発からマーケット投入までのリードタイム短縮化や、国内工場も更なる技術向上をしなければと、焦りを感じました。
一方、世界を牽引する中国経済も、最近では上海の株指数の下落や不動産バブルの急速な冷え込み、自動車販売の減少、インフレ懸念などが取りざたされています。上海万博後の景気後退も囁かれております。そして昨今、賃上げを求める労働争議のニュースが伝えられています。リミットの福州工場ではまだ人材の募集をしています。同じように近隣の工場も入り口には「工員急募」の立て札が出ています。求人数が求職者数大きく上回っている印象を受けます。コスト維持に不安はありますが、リミット品質を貫ける自社工場があるという安心感と、文化の違う中国に信頼できるパートナーである総経理がいてくれることが大変ありがたく思います。もちろん、これからも苦労が予想されますが、今秋を目標に生産力アップは益々拍車がかかってきます。
二、次世代先取がリミットの使命
最近の業界紙上では、作業服業界の記事が少ないような気がします。その背景では、リーマンショック以降、過剰在庫削減に徹してきた各社が、この夏の揺り戻しで、急遽中国にスポット工場を探し求めているようです。しかし賃金上昇により苦戦を強いられている、といった状況ではないかと思います。売上減少は短期で取り戻すことができず、まずは営業出張を止めるなどの経費削減を先行させているように思われます。こうした状況下で、新たな販売チャンネルを模索しているというのが、今日の業界でしょう。
先日もある方から、通信販売のノウハウを聞かれました。今までの営業主体の販売方法に疑問をお持ちのようでした。しかし、今までお客様とフェース・トゥ・フェース、つまり対面販売での信頼と実績を、この不況下に更に強固にする方が私は近道ではないかとお伝えしました。それが会社の強みを生かすことだと思いました。リミットでは、世代を超えて通信販売に徹してきたから、それが強みとなっているのです。だから続けていくことができるのです。営業担当社員を派遣する経費に代わり、全国どのお客様にも平等に販売するシステムにコストと時間を注ぎ込んできました。営業担当社員の代わりに、リミット製品の価値をダイレクトに訴求するカタログや情報誌などの媒体の発行に心血を注ぎ込んできました。
一枚からでも買える仕組みづくりや納期・生産管理など、皆さんが敬遠してきたことに愚直に取り組んできました。早くから手形から現金商売に切り替えていったことも、今となっては当たり前のことになっています。時代は刻々と変化しております。このたびアップル社からアイパッドが発売されました。電子書籍が普及する頃には、もしかしたらノートパソコンなどは役割を終えているかもしれません。次世代の当たり前を常に先取りしていくことが、リミットグループの使命なのです。
三、次世代先取にリミットの可能性
その昔、世界を席巻した日本の製造業も、今日では、新興国の台頭に対して打つ手も無く、長らく低迷しております。しかしこれからは世界のどの国も物質的に豊かになり、新たに環境問題や高齢化問題などの社会問題が浮上してきます。
また、世界中で欲しいものが調達されるといったモノ余りの現象に陥り、デフレ傾向は益々深刻になると考えます。これら対策にはどうしても再利用、ユニバーサルデザインや多品種少量生産といった大量生産型ではない産業構造が必要になってきます。これらの産業構造や社会構造の構築には、国としての産業再生シナリオがどうしても必要になります。考えてみれば、我が縫製産業は高齢でも技術習得さえあれば一生働ける数少ない業界です。
そして、人は裸では生活できません。どのような時代も着る服は必ず必要なのです。リミットのビジネスモデルをもっと高いレベルに構築し、繊維業界の技術とサービスを多方向に繋ぐソリューションを展開できれば、次世代の当たり前を先取りしていくことができるような、なんだか楽しく愉快な気分になってきました。
二〇一〇年六月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有木宏治
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