2010年 4月号

 

 一、地球の異変に思う



 いつもお世話になりありがとうございます。

 桜の季節も終わりましたが、今年はなかなか暖かくなりません。関東では、四月半ばに雪が降りました。この天候不順で、野菜の価格急騰が社会問題化しています。寒さのせいで、これから最盛期を迎える夏物出荷の動向も出足が鈍くなっています。ゴールデンウィーク明けに一気に動き出すのか、それとも景気低迷で今年の夏も商機を逸するのか、判断が付かない状況です。

 ハイチ、チリ、インドネシア、中国の青海省などで壊滅的な被害をもたらした大地震が続きました。アイスランドでは火山噴火があり、全欧州の空港が閉鎖されました。物流に影響が出て経済的な損失が問題になっています。ひとたび自然災害が起きれば、人間がどれだけ無力かを痛感させられます。

 私は、毎朝息子とジョギングをしているのですが、数日前にまだ真新しいセミの抜け殻を木立の幹や根元に数個発見し驚きました。自然環境の限界がひたひたと迫っているようにも感じさせられました。地球が悲鳴を上げているように思います。



 二、「価値の連鎖」を紡いで



 先週、紡績と染色工場を見学させていただきました。企画チーフの勉強が主な目的でした。企画チーフは、今回が初めての見学でした。私も十年前に、同じ工場で勉強させていただきました。その頃と比べると、規模も人員もずいぶんと縮小していました。しかしその反面、合理化による短ロット・短サイクルを実現され、高機能製品の開発にも力を入れられていました。

 綿花から糸ができる様は、何度見ても神秘的な工程です。しかしその原料となる綿花もインド、アメリカ、トルコ、エジプトなど諸外国からの輸入に頼っています。長繊維の原料となる石油も輸入です。アイスランドの火山噴火は、物流の停滞を現実のものとしました。もし地球規模で物流がストップしたなら、私たちは、服さえ作ることができないという現実を痛感しました。そして、紡績工程、織布工程、織物染色、ニット染色、プリント工程と、あらためて私達アパレルの前段階までにいかに手間が掛かっているかを再認識することができました。また、その製品を譲り受け、裁断し縫製する責任を痛感いたしました。

 工場では、繊維の基礎知識講座もしていただき、企画チーフも大変勉強になったようです。これからの提案に活かせることと思います。糸を紡ぐところから始まり、それを織って布にし、裁断し縫製して服を作り、それを販売店に引継ぎ、エンドユーザーに着用していただく。ユニフォームに携わるすべての組織が、それぞれの担当する部門で最大限に力を発揮し、この「価値の連鎖」を紡いで参りたいものです。「次工程はお客様」という気持ちのもとで、短サイクルで次に渡していけば、海外製品にはない高付加価値商品を必ず開発していけるような気がします。リミットが生き残るためには、やはりこの道しかないと強く感じることができたよい機会でした。



 三、自社工場を造る意味



 今月末に一週間の日程で、国内工場の責任者を中心に、四名が再度福州工場に向かいます。生産のスピードが徐々に上がって、その面では順調に推移していると言えます。今回の訪中では、更に目的品質に近づくため、一番の基本となる整理整頓や段取りについて徹底指導することが目的です。土台となる基本的な事柄を繰り返し指導していくことが、これからの水揚げや問題が発生したときの対処の仕方に大きく影響します。基本を反復することにより、それは習慣になり、やがて工場の品格を形成してゆきます。自社工場には、多大のコストが掛かります。しかし、自社工場を作るということは、品格と品質を保障することなのだと私自身が教えられます。

 最新鋭の機械さえ揃えば、目的品質のものができ上がる工場が生まれるという魔法はありません。この度の取り組みでは、結局のところ、良い工場、良い製品の創造は、ひとえに人の教育にかかっているということも勉強させられました。また最近、社長の器以上に企業は大きくならないということもよく分かるようになりました。リミットの各部門は次の飛躍に備えて力を蓄えてくれています。私自身もっともっと勉強しなければと、リミット通信を書きながら猛省しております。





  二〇一〇年四月二十五日

       笑顔着

       リミット株式会社

       代表取締役 有木宏治

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