2010年 1月号
一、 今年もよろしくお願いします。
いつもお世話になりありがとうございます。二〇一〇年も一ヶ月が終ろうとしています。遅ればせながら、今年もよろしくお願いいたします。
今月は、リミットグループの決算月です。一昨年末期から続く苦戦の影響で、売上高は二桁減となる見込みです。売上を落とさず持ちこたえたブランドもあります。しかし、作業服の分野は大幅な減収になりました。デフレ不況をいやという程実感した今期でした。
この結果を冷静に受け止め、二月からの新しい期にどのように生かすか?年末はそれを熟考し、頭の中を整理することに充てました。その方向が見え、落ち着いた雰囲気で元旦を迎えることができました。
不易流行を見定め、今年も皆様のお役に立てるよう邁進していくつもりです。
二、マイナスから勇気を得る
この状況で、マイナスの現実をいかにプラスに変換するように振り向けるか。今までの物事の見方を変え、多角的に見つめなおすことにより、見えてきたことが沢山ありました。
例えば、社員一人ひとりの多能工化もその一つです。リミットグループは国内縫製工場、企画、受注、生産計画、財務、システム、配送などすべての部門を合わせても総勢二十名です。この二十名の各々が任務を専門特化し、それを総合することで大きな仕事ができるシステムを構築しています。
常識的に見ると、新たな取り組みをスタートさせようとしても、それぞれ仕事で手一杯です。さらなる合理化をして、少数精鋭組織を目指すとしても、そのシステム開発を進めるには、それ相応の時間とコストが掛かります。そこで人を増員せず、次の合理化の足がかりとなる方法は、と考えたとき、それぞれの分野の専門職が他の部門を経験して、多能工となり、新たなシステムが開発されるという方法をとることができました。仮に好況時であったなら一定の混乱が予想されるこの方法の選択ができたかどうか分かりません。マイナスを受け入れ、少しでもプラスに生み出すために智慧を絞った結果です。
生産面でもマイナスをプラスにする努力をしました。昨年夏、長年の生産拠点、中国青島工場を閉鎖、今年春から新たに中国福州工場が稼動いたします。昨年夏以降の海外生産の中止によって、在庫を大幅に減すことができました。来期からは、青島工場への工賃補填もなくなり、さらにコスト減になります。常識的には、福州工場の操業を確認して青島工場を閉鎖するのが得策です。しかし、大幅な売上減というマイナスをいかにプラスにするかを考え、自ら退路を断ち、青島の閉鎖から手をつけました。国内工場でのクイック生産をフル稼働にして青島にて生産していた商品に対する需要にこたえました。
一方その間、これからの時代に合理的な工場像を思い描き、それを福州新工場の稼働に託しました。このたびの不況は、物事の捉え方一つで、プラスにすることができるという確信と行動への勇気を与えてくれたと思います。
三、ニーズを体感し成長を予感
単月で見ると、昨年十二月の売上げは、対昨年比で二桁アップしました。一昨年末以来、十四カ月ぶりのことです。この一月も引き続き対昨年比アップが見込めます。このことから、少しずつ良い方向に動き始める予感がしております。久しぶりに職場に笑顔がこぼれます。しかし、油断はできません。日本経済はまだ二番底の警戒感が払拭し切れていません。今までも好不況の転換点ではいつも一番初めに売上が落ち、一番初めに売上が上がってきたのです。リミットは、営業マンがおりませんので、注文が実需のみだからではないかと感じております。さらに、二十枚からでも別注商品をお受けするという小ロット対応がこの不況時のニーズにマッチしたと思います。言い換えると市場の動向をダイレクトに反映しているのです。
考えてみれば、長年努力してきた一枚から出荷できる体制はこの不況時、ユーザー心理にも合っています。新規で何千枚は買い換えられないが、せめて破損分の数枚だけでも買い替えしたいユーザーは沢山いらっしゃると思います。たかが一枚でも百社固まれば百枚です。そのニーズを拾い集めることが大事だと感じています。しかし一枚を動かせば、それだけ運賃や人件費などコストも余分に掛かります。だから安売りはできないのです。適正な利益を上げ、次の研究開発に投資しなければそこで止まって終わりです。
現在リミットでは、いろいろな職種の女性ユーザーを取材させていただき、それぞれの職種・職場の雰囲気を掴み、今まで以上にそのニーズにフォーカスした提案作りを進めております。きっと販売店皆様の価値訴求に役立つツールを配布してまいりますので、よろしくお願いいたします。
四、顧客創造の本質
多品種小ロット生産・販売を続け、そのことによって、自信を持って言えることは、「リミットにはリミットの得意分野があり、そこにはリミットの制服を喜んで着ていただけるお客様がいらっしゃる」ということです。技術的に高品位なモノだけを作れば売れた時代は終焉を迎えました。モノを作るだけではなく、そのモノをとおして着用者に楽しみを提供し、着用者の人生を豊かにする取り組みが今後最も重要になるのではないでしょうか。
働く人の服を作るメーカーとして一番大事にすべきことはなんでしょうか。売値?品揃え?即納在庫?機能やデザインでしょうか?もっと根源的な部分に答えはあるように感じます。働くという行為には、不変の価値が存在しているように感じてなりません。労働は、最も人間的な行為です。
作業服を着て仕事をされる一人ひとりが、私が主人公だと感じられる服とはどのような服なのでしょうか?それはたぶん難しいことではなく、アパレルと販売店と着用者のそれぞれの接点で、あらゆる機会をとおしてお互いが発信する情報が相手にとって、もっと誠実であることだと思います。
二〇一〇年一月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有木宏治
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