2009年 11月号
一、今年は短い一年でした
いつもお世話になりありがとうございます。
こちら広島でも一雨ごとに寒さが厳しくなってまいりました。皆さまの地域ではいかがですか。
さて、このリミット通信を書くのも、今年はこれが最後になりました。昨年の十一月号を読み返してみると、会社の代表になって最初の一年、大変長く感じた一年だった、と書き記しておりました。今年一年の感想はというと全く逆です。あっという間の一年でした。振り返ってみますと、政権与党が変わったことを筆頭に、大きな時代の区切りの一年だったような気がいたします。
二、意義ある青島工場の停止
リミットにとっても激動の一年だったことを象徴する出来事は、中国青島工場の操業停止です。今年八月、十四年間稼働してきた工場の生産中止を断行しました。昨年後半から減産・補填体制をとってまいりましたが、売上はそれ以上に落ち込み、かつて経験したことのない状況に追い込まれました。リミット直轄の工場だっただけに、当初は、減産・資金補填をして何とか切り抜けようと考えました。しかしこの不況は今まで経験してきたものとは全く異なると感じました。地面に亀裂が走り、一気に地盤が崩落したかのような、もはや恐怖感でした。まさしくパラダイム・シフトが起きたのです。
そこで思考を転換。この状況でも存続できる会社にするためにはどうしたらよいかをまず考えました。なんとしても、収支のバランスを回復するための体制に一刻も早く変化させていくことです。これを実行する中で、マイナスをプラスに変える知恵もいくつか出てきました。今まで気づかなかった方法論も生み出されました。
今年は危機に備えるため、金融機関のご協力が得られたので、借入れが一時的に膨らみました。しかし、期首と比較すると、生産中止が功を奏したようです。受注品を即納しながら、総在庫は七千万円の減少となる予定です。来年春には新しい中国の福州工場が動き始めます。国内工場も、クイック生産することで、在庫を減少させます。このようにして、品切れ商品も、仕掛がない状態から二週間の即納体制を維持いたします。販売管理費も圧縮し、将来の成長のための種蒔きも、最小限の投資にとどめました。昨年比四十%減、一昨年比六十%減の予定です。今までは気づかなかったムリ、ムダ、ムラをそぎ落とすことができました。これは、少数精鋭による徹底した合理化の賜物だと感謝しています。来年度も新市場を開拓しながら、皆様に貢献できるよう知恵を絞って頑張りたいと考えております。
三、厳しさの中のありがたい発見
毎月、この通信にあわせて提供している、「着てみて下さいました」がとても好評です。エンドユーザーにリミット製品を着用していただく企画です。このシリーズがもたらすリミットのメリットは、ユーザー様ごとの業界話や制服に関してのデザイン、着用感をお聞かせいただき、次回の開発に生かせるところです。販売店の皆様へのメリットは、新規顧客獲得などの販促ツールとしての活用です。すでに、実際に使用された販売店では、新規獲得の一助になっているケースが多いと伺っております。
取材へは、私も同行しています。そのための時間は、ユーザーが、制服に対してどのような考えをお持ちであるかを確かめることができる大変貴重なものになっています。業界ごとに制服が違うように、ユーザーごとに制服の機能やデザインは異なります。また制服に対する期待、不満も本当に多種多様です。制服を着用させる立場の方、着用してサービスをされる方、着用された方にサービスを受ける方。それぞれに制服に対しての考えやこだわりがあります。制服をご提案される皆様は、それらのベクトルを一つにまとめ、そのベクトルの延長線にその職種に本当に相応しい制服を選択されます。これは、本当にシビアな作業だと感じました。その選別から発注までの一連のご苦労、ご不便を少しでも緩和できるよう、カタログやインターネットの利便性、選択性の向上を図るなど、メーカーとしてまだまだお役に立てる部分だと、俄然やる気が出てきました。制服を媒体として、それに携わる多くの方の側面が再確認できたことはこの不況の折、大変ありがたい発見でした。
四、いかに希望を見いだすか
来年の経済見通しは、設備投資がさらに激減し、雇用情勢も悪化するのではないでしょうか。不況風はますます激しく吹き付けることでしょう。その一方でエコロジー時代といいながら、大量消費はとどまることを知りません。私は今の状態というのは「欲しいから」「安いから」という理由でモノを買っているのではないと思います。「買いやすいから買う」といった利便性消費が世の中を席巻しているのだと思います。
しかしどのような世の中になろうとも、それでも人は働いています。それは、希望です。メーカーが絶望を感じてはダメなのです。価値ある一着をお届けするため、来年もリミットは走りながら考え続けます。
皆様、今年も一年、リミットをご支援いただき本当にありがとうございました。
どうか良い年をお迎えください。
二〇〇九年十一月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有木宏治
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