2009年 5月号

 

 一、雨宿りになすべきこと



 いつもお世話になりありがとうございます。

 新緑のまぶしい季節を迎えましたが、商況は依然として雨マークが続き、この先何時雨が止むのやら全く予想が立たず、手持ち無沙汰の雨宿りが続いております。

 政府が発表した五月の月例経済報告では景気の基調判断が三年三ヶ月ぶりに上方修正され、前月までの「急速な悪化が続いており、厳しい状況にある」から「悪化のテンポが緩やかになっている」へと下げ止まりの期待を膨らませます。しかしそのすぐ上の記事には一月から三月実質年率GDPマイナス十五・二%、戦後最大の減少率と出ており、反対に悲観的な観測を助長させてしまいます。これから景気が下げ止まり回復に反転するまで、一体どのくらい期間がかかるのでしょうか。

 作業服は経済全体が回復基調に入ってからでないと、販売利益が増加に向かうことは難しいと思います。ボゥーと空を見つめながら雨宿りをしている余裕は無くなりつつあります。何をしながら雨宿りをするか。大事な時期を迎えています。



 二、無の中から有を創造する



 じっと我慢の子では次のステップには進めません。自動車業界ではすでにエコロジー社会に向けての挑戦が本格化しています。ガソリン車からハイブリッド、電気自動車時代に向けて開発技術はどんどん進化していくことでしょう。しかしその挑戦はかなり前から始まっていたと思います。将来を見据えた挑戦があったからこそ、今のエコカー販売競争にいたっているのだと思うのです。現在の商況下ではどうしても守りに入り、近視眼的な発想でしか物事を考えられなくなっています。

 ワーキングウエアが売れないと言っても、人は、裸で働いているわけでもなく、作業服ではなくてもそれに代わる用途の服は着用しています。そして働く人は現実にたくさんいます。その服が時代や社会背景や職種などにより、少しずつ、そして確実に変化しているのだと思います。また、今という時間軸で線を引き顧客目線でものづくりを捉えればこれまでも、またこれからも積極的な変化が必要だと思います。この変化にとって重要なのは、企業の考え方や価値観です。

 これは作業服のリミットブランドからジャケットスタイルのリフィンブランドに進化をさせてきた経験からも自信を持って言えます。無から有を生み出したリフィンには妥協は許されませんでしたし、改良という言葉はありませんでした。すべてが初挑戦のなかでの偶然の産物だったのかも知れません。しかし実際に完成させたリフィンには期待をして待っていてくれるたくさんの顧客がいます。リミットブランドも近視眼的改良ではなく、価値想像力を向上させ、無の中から発想し、顧客に支持される有を生み出す挑戦をスタートさせます。



 三、未知の領域でのコスト圧縮



 価値想像力の向上と両輪で今進めていることは財務数値の健全化です。

 売上低下に比例して経営コストの圧縮を図らねば、いくら経営目標が決まっても継続活動自体が行き詰まります。幸い国内生産工場は採算が取れています。販売管理コストは少数精鋭体制でやってきていますので人員削減によるリストラ戦略は考えていません。残されたコスト削減は間接的なコストの削減と、計画的に在庫圧縮することの二点です。

 間接的なコストとは、長年の経営の中で常態化し少しずつ肥大化してきた目立たない無数のコストです。毎月の試算表を元にデータ分析と愚直な改善が少しずつ数字を良くしていきます。計画的在庫圧縮は前年度からの継続事項で、昨年は評価できる数字を残せました。これ以上の在庫圧縮は今までの手法では通用しません。お客様に迷惑をかけず、不必要な在庫だけ圧縮し売れる数量だけ事前に生産する。言葉では簡単に書けますが、販売実績を分析し緻密な計画を着実に実行しなければ到達できない未知の領域です。

 最近、会長から世界恐慌とリミットの資産保全についてよくメールがあります。会長は現在四国巡礼百十九回目に挑戦しており、四国からメールを送ってきます。リミットに入社して十七年、代表になって二年目の私には現在起きている経済状況から更に数倍悪くなるという予想は描きにくいのですが、会長は戦後のハイパーインフレを経験しておりますので、最悪の状況を想定し、今できることをメールにて指示します。四国にて今後のリミットをただ穏やかに見守ることはできないようです。

 私は人生経験という面では会長に勝てませんので、資産管理については会長からのメールを何度も読み直しています。想定範囲を広げるという点においては、まだまだ会長の足元にも及びません。しかし、これを全身で理解することも新たな挑戦となり、リミットが自負する経営理念に基づく生産から販売、資産管理にいたる更なるシステム向上という命題が与えられたような気がします。

 今後ともご支援のほど、よろしくお願いいたします。





  二〇〇九年五月二十五日

       笑顔着

       リミット株式会社

       代表取締役 有 木 宏 治

コメント

  1. いつも、ありがとうございます。リミット通信興味深く拝読させて頂きました。当月号も共感をさせて頂けるところが大変多く、我々も今の景況感が教えてくれることを大事にして、新しい価値を見出したいとの思いを新たに致しました。幸いにも我々には価値を言葉にすることが難しいぐらいのお客様と仕入先に恵まれています。恐れることばかりではないと考えています。今後ともよろしく御願い致します。  

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  2. いつも中根様のブログに書き込みさせていただいておりますleoと申します。
    実は私も被服資材の営業を仕事にしておりまして一見、どうにもなりそうにない市場に悪戦苦闘しております。
    行き当たりばったりの出たとこ勝負の営業の私に社長は言います。
    「お前は頭が悪いんだから誰よりも誠意を持ってお客様に接しろ。そうすればお客様が自分を育ててくれる」
    実践してからずいぶん経ちますが、お客様のご意見一つ一つに重みを感じるようになりました。
    社長様のブログの内容のような経営のお話をいただいた先様もありました。
    お客様は私を育ててくれている。。。
    そう改めて実感したとき、計画性を持った営業を考えるようになってきました。
    あまりブログと関係ない書き込みになってしまいました。申し訳ございません。

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  3. leo様へ
     いつもリミットホームページをごらん頂き、ありがとうございます。
     お返事が遅れ、申し訳ありません。
    「お客様が私を育ててくれている」
    感謝の心は周りも自分も磨いてくれるような気がします。今後とも、リミットを宜しくお願いいたします。
    SEKINE様
     コメントありがとうございます。
     お返事が遅れ、申し訳ありません。
     起こる災難を恐れることなく、信念を持って突き進 む勇気を持ちたいものです。
     これからもリミットを宜しくお願いいたします。

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