2008年 3月号
一、日中の生きる道を意志統一
いつもお世話になり、ありがとうございます。
先週、中国青島工場の総経理が来日し、今後の方針について意志統一をしました。総経理は現在三十歳の女性で、先代総経理の長女です。初めての訪日は十一年前で、高校卒業と同時に日本に来て、その後福山YMCAから福山大学へと進み、六年前に帰国しました。この度一年ぶりに訪日しましたが、中国沿岸部青島の変化から見ると、ここ一年の福山の町の変化などは全く気づかないといった感じでした。
董事会では今後の中国青島伸栄とリミットの進むべき方向について話し合いました。短期的な取り組みとしては、リミットは一月決算で前期よりも在庫を圧縮しているのですが、今期の経営状況を鑑み、もう一段の在庫圧縮を決定している旨を伝え、その協力を総経理にお願いしました。最低限の工場運営コストを支払いながら、月産点数を圧縮する方法で理解を求め、在庫の資金化に全力を傾けることを誓いあいました。
また、長期的な取り組みとしては、今後両社の進むべき方向を明確にさせました。リミットはあくまで国内市場の中で、国内生産比率を少しずつ高めながら技術を高め、マス市場ではなくニッチ市場の深耕を図り、大量商品からの一層の脱却を模索することを。そして一方青島伸栄工場は、今後発展が予想される中国市場に向け、リミットより市場調査や企画販売戦略の仕方を学びながらサンプルづくりをすすめ、下請けからの脱却を図ることを意志統一し、それぞれが将来に向かっての目標を定め、スタートを切りました。
二、コスト上昇吸収の試行錯誤
さて、花便りが届く季節、三月も終盤になりましたが、春夏物の出荷に勢いがありません。制服業界全体も三月は厳しいと聞いておりますが、景気後退を受け制服購買を控えておられるのか、それとも原材料高騰による価格上昇が響いているのか、はっきりとした分析はできておりません。売上が低迷することを前提にどうやって利益を増加させるか、毎日、財務諸表を見比べながらシミュレーションを繰り返していました。しかし最近、答えはそこには無いような気がしてきました。どこにあるのか。今後じっくりと考えたいと思っています。
ところで今月は素材メーカーや付属品の価格交渉が数回ありました。原油高騰を受け、染色、生機工場のコストアップにより、どうしても値上げをせざる終えない状況にあるとの説明を受け、こちらの要望もお伝えして交渉しております。常識的に考えれば、投機による原油高騰ですので、リスクヘッジがかかっているあいだは問題がなく、その後は原材料コストが上がれば即座に価格を上げ、原油価格が下がれば即座に価格を下げることが確かに合理的であると理解します。しかし制服というものは購買継続を考慮に入れ製造、販売されているはずです。短期的な販売価格の変更は、エンドユーザーの福利厚生費予算を混乱させ、制服業界全体としてはマイナス影響のほうが高いと考えます。
リミットはバブル以降ずっと販売価格を維持して来られたその理由は、ひとつには安定した仕入コストです。最近の為替のように急激に円高、円安に触れてしまうと、長期でのコスト計算がたたず、利益予測が難しくなります。もちろん多少の長期リスクは覚悟の上ですが、あまりに性急な変化を仕入コストに織り込むことには抵抗感があります。しかしながら、現実問題としてリミットでは生地は作れません。素材メーカーのご協力があって制服を製造させてもらっています。値上げを受け入れ、リミット内でどう吸収していくか、試行錯誤しなければなりません。
三、安易な妥協を排除して
さて、価格問題をもっと具体的にのべましょう。
今春夏カタログよりご当地備後のアパレル業界では、一斉に値上げになったようで、リミットにかかってくる電話でも価格と掛率のご質問が大半を占めております。「リミットでは、価格も掛率も今までどおりとなっております。」とお客様サービスセンターが頻繁に答えております。やり取りを聞いておりますと、一斉に各社各様の価格、掛率変更となったために、販売店の皆様も管理しきれないのではないかと危惧しております。プロである販売店が混乱するわけですから、エンドユーザーはもっと混乱されるはずです。今更ながら、価格維持を貫き、中国工場を含め正確な納期を厳守し、エンドユーザーに笑顔で着ていただける制服を製作しているリミットの存在価値と安心感を私自身が再確認しました。長い年月を、継続的にご購入していただく制服だからこそ、価格決定に安易な妥協は許されないと改めて感じました。
安定した取引先との関係を維持することが最優先課題として研鑽につとめます。今後ともよろしくお願いいたします。
二〇〇八年三月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 宏 治
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