2008年 2月号

 

 一、向こう6年の決心

 

 いつもお世話になり、ありがとうございます。

 リミットも一月の決算も終わり、いよいよ新しい期のスタートを迎えました。十九年度は、秋以降売上が低迷し本当に厳しい一年でした。来期の展望をたてるにも、決算を迎える段階まで売上がどのように推移するのかとても不安でした。在庫も一昨年に比べれば減ってはきていましたが、経費の削減ももう一度検討しようとしました。しかし、企画の研究開発費を削るわけには参りません。

 前社長の退職金を十二月には支払いました。そのために税理士の先生と何度も打ち合わせをして実行しました。同族中小企業にとって創業経営者の退職金は売上好調な時ならば節税効果が大きいのですが、売上が落ちている状況での退職金支払いは大幅な赤字を計上してしまいます。一昨年より整理できなかった不良在庫もありましたので悩みました。しかし、日々の職場を冷静に眺めるとき、いろいろな部門で一歩一歩将来を見通せる前進をしている現況を目の当たりにすると来季の着実な発展を感じることができます。だからあえてすべてを受け入れ、今までの膿もすべて清算することにいたしました。

 第二の創業のスタートで大幅な赤字を背負いましたが、今期より約六年の計画でこの赤字を解消する決心をいたしました。



 二、新しいカタログ、新しい活力



 今期はリミットグループのカタログは四冊になります。すべて二月六日に発刊いたしました。このカタログを発送するに当たり、恒例のカタログ出陣式を吉備津神社の宮司に執り行っていただきました。例年同様新市配送センターにて印刷会社様や運送会社様からのご列席を頂きました。今年は新しく「b×cブランド」が加わり、カタログを積み上げた雛壇もいつもより背が高くなり、祭壇に刷り上った真新しいカタログ四種類を掲げたときには武者震いがしました。この新市の地より、全国の皆様のお手元に旅立ち、すべての働く人たちのために貢献してくれることを祈って拍手を打ちました。もう二十年近く途切れず続いた儀式ですが、いうまでもなく私が代表として臨むのは初めてのことです。数日前より少し緊張しておりました。

 出陣式前夜、新しいカタログを手に取りましたら、國學院大學宗教学石井教授の『変容する儀礼のカタチと聖性のゆくえ』というコラムが目に入りました。その中で教授は、「わたしたちの日常生活は、変わらない日々を続けていると、しだいに活力を失っていくのではないでしょうか。くたびれた日常生活に『力』を与え『再生』させてくれる儀礼の構築が必要なのではないでしょうか」と教えてくれていました。入社して以来ずっと参列してきたカタログ出陣式という儀式にもこのような意味があったのだとあらためて感じ、来季に向けて更なる価値創造に思いを馳せました。



 三、技術の蓄積と警鐘へ独自のIT技術



 今月もはや終わりに近づき、売上のほうはありがたいことに微増しております。新しい製品が市場で受け入れられつつあることをうれしく感じています。この順調な滑り出しの背景には、カタログ上での新製品の価値訴求が新カタログや新ホームページ上での価値訴求とうまくリンクしていることを強く感じます。十二日にリニューアルしたホームページでは、販売店の皆様への利便性を重視し、発注段階での別寸や直送先の入力など、新しい機能を満載しております。また、いろいろな機種の携帯電話からでも在庫確認や商品発注が容易にできるよう工夫を凝らしました。

 このリニューアルについて我社のメリットとしては、皆様から在庫確認や発注していただいたデータを蓄積、解析し、自動でお客様サービスセンター、生産計画や企画など、あらゆる部署に必要なデータとしてそのまま取り込めるシステムの構築が完成した点です。少数精鋭を目指す我社にとって、IT活用は大きな鍵を握っています。

 これを福山本社のみならず、新市、出雲の生産現場にも浸透させようと考えています。縫製や機械メンテナンス熟練者のスキルを分析し、育成計画に反映させ、必要な人材と能力の予測により、「見える化」をして今後の具体的行動につなげる。つまり、備後絣から脈々と続く縫製産地としての技能継承を、口頭や文書などわかりにくいもので残すのではなく、映像化、デジタル化にして後世に残す。こういった取り組みを強化することにより、今まで暗黙知であった技術を素人でも見える形にし、教育計画を立て、人材育成体制の再構築をしていく方針です。我社も高級婦人服の縫製技術を導入するとき、作業服産地ですので縫製指導者もおらず、本当に四苦八苦いたしました。

 ものづくりにおける技術競争は国内にとどまらず、グローバルなものとなっております。人材育成体制の再構築と教育モデルの革新が、今後日本で縫製を続けていけるかどうかの重要な課題になると思っています。



 四、無限の可能性へ情熱をもって



 先日、地方新聞社から新しく出した「b×cブランド」の取材を申し込まれ、今後の情報発信について考えました。インターネットがこれだけ普及してくると、これまでのカタログだけの訴求方法から一気に変わり始めたという実感があります。私自身の生活を考えてみても、まずはインターネットで検索している私がいます。ありとあらゆる商品がどのようなチャンネルでも手に入る現状で、逆にどんなルートでお客様に知っていただくかを考えると、本当に無限大の可能性があります。

 それでも一番大切なことは、メーカーとして情熱を持ってものづくりに向かい、リミットグループにしかできない製品をつくり、価値訴求の方法を吟味し、時期やタイミングを計りながら進めていくことこそ使命だとあらためて感じております。こう考え行動を起こすと、一年のスケジュールなどすぐに埋まってしまい、時間の短さ、大切さを痛感いたします。

 それと同時に、皆様に発信していける、吟味に吟味を繰り返した情報を多く保有しているということを、ありがたく思うようになりました。



  二〇〇八年二月二十五日

       笑顔着

       リミット株式会社

       代表取締役 有 木 宏 治 

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