2007年 10月号

 

 一、世代交代のためのこの通信

 

 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 引退が近づくにつれて私は、人生には三回大きな節目があるということを改めて痛感しています。その三回の節目すべてで成果を出せた人は、大変な成功者になると言われます。私の場合は一回、二回と失敗し、後始末で大変でした。特に一回目はよく生き残ったと思っています。人生の末期になって、この度が三回目のチャンスです。この度は今までの失敗の経験を生かし、進むべき道を考えています。

 私は、この『リミット通信』を通して、皆さんにリミットの理念や方針を理解して頂きたく努めてきました。八百あまりの送付先には、全く肌が合わない考え方であるために読まずに捨てられている方があるかも知れません。それは致し方のないことです。一人でも参考になる方がおられれば、私の徳の大きな積み重ねになると思っています。

 しかし一方本音では、専務一人のために書く努力をしてきたと明言できるのです。親が子を思う心を率直に著してきました。専務も言葉だけでは頭に残らず消えてしまいます。文字で残していれば、何かで迷いが起きた時に役立つのではと思っています。今年の春、気がつけば専務がリミット通信を編集し、『極限の精神』の題で本にしました。私は、専務用に一冊作ればよいと言ったのですが、一冊も五百冊も同じだと言っていました。価格は千五百円になっています。私の意を汲み、無料配布はしていません。何冊売れたかは知りません。私は有名人ではありません。買ってまで読む人は少ないでしょう。親を尊敬してくれるのはありがたいとは思いますが、私は人の心が解っているので一冊作るように言ったのです。この一件も専務が人の心を知るよい経験になったと思います。『極限の精神』は専務が編集しているので私の考え方を相当理解していると思います。この点は大変なプラスでした。しかし自分が苦しみながら経験したことではないので、知識として理解しているだけです。これから自分の人生を歩んでゆく過程で経験をしながら実感として体得していくと思っています。

 

 二、無駄の多い金融庁の指導

 

 先日、専務に頼まれて三百万円送金するために銀行のATMに行きました。ちょっとややこしいのですが、専務から現金で二百万円を受け取り、残り百万円を私の口座から専務に貸して送金するという内容でした。ところが、ATMコーナーには十万円以上は送金できませんと書いてあります。私は、以前通帳から送金していたことを思い出し、二百万円を私の通帳に入金しようとしたのですが、入金は一回につき百万円までとなっていたので二回に分けて入金しました。そして通帳を入れて送金を選んで三百万円にしたら、一日、一回、二百万円までと出てきました。要するにATMでは三百万円は送金できないのです。それで窓口で手続きをしようとしましたが、三百万円引き出すには印鑑が必要です。ATMの送金を考えていたので印鑑を持って来ていません。印鑑は専務に頼みました。私と専務が一緒に来なくてはならないか窓口で女子行員に聞きました。女子行員は支店長代理に聞きに行きました。支店長代理が事情を聞いて次長に聞きに行きました。結論は専務が一人銀行に来ればよいということに落ち着きました。「金融庁が指示することは合理化でなく、手間が増えて大変です。」と銀行員は言っています。

 私は個人の支払送金は全部会社から送金し、会社への貸付金と相殺してもらっています。前回のリミット通信で書きました中国の銀行での人民元の定期預金は、会社が返済として中国の個人通帳にWEB送金で簡単に送金しました。個人が銀行に預金していれば金を動かすことは大変です。海外送金ともなればなおさら大変です。このことについて一部の評論家には、成り済まし詐欺の防止もあるけれど、預金封鎖のために資金の移動を困難にしていると説明している人もいます。会社の場合は預金封鎖があっても金は自由に動かすことができると思います。資金を止めたら経済は破綻してしまいます。個人の金を全て会社に貸してよかったと思っています。

 

 三、中国の発展と為替

 

 さて、私が中国に行くようになって十数年になります。当時ロバが荷車を引いて、農民が荷車で寝て家に帰っている風景のイメージが強すぎて、今の中国大発展を信じることができません。そこでいろいろな資料で中国の大発展の原因を調べました。調べれば調べるほど中国の変化に驚きます。『日経ビジネス』の十月一日号にサブプライムの逆風にも負けず、上昇を続ける中国株、「次に弾けるのは中国バブル」と専門家は警鐘をならす。その中国にひるまず突っ込む日本企業がある。暴挙か、それとも英断か。と事例が出ています。世界の銀行の時価総額のランキングを調べてみると一位シティグループ二十九・七兆円、四位中国工商銀行二十一兆円、七位中国建設銀行十五・一兆円、八位中国銀行十五兆円、十一位三菱UFJフィナンシャルグループ十四・四兆円、二十二位みずほフィナンシャルグループ九兆円、二十三位三井住友フィナンシャルグループ八・二兆円(二〇〇七年四月二十四日付の日経記事)となっています。私の通帳を作った中国建設銀行は七位になっています。リミットの取引銀行は十一位三菱UFJフィナンシャルグループとなっています。日本の都市銀行は中国に負けています。現在の中国は共産党独裁国家なので、不安定な金融の影響を受けにくくなっています。為替も管理体制だし、物価も統制するし紙幣通貨も統制できるわけですから、この度の世界的な株の暴落で世界に嵐が吹いても、中国はその余波を受けていません。中国が買っている米国の国債は打撃を受けますが、国内は嵐が吹き荒れていません。

 一方日本は債権大国、大黒字国で、アメリカにお金をいっぱい貸している国です。アメリカが無理やり日本政府に命令して金利を上げさせず、円キャリートレードで、安い金利の円を持ち出し、金利が高いところで稼いでいます。日本人も国内の低金利を嫌い、外貨預金をしています。ちなみに五月、六月、七月は円安でした。二〇〇七年の退職金総額は十七兆円といわれています。多くの退職者が退職金の運用のために円を売って外貨を買ったと私は想像しています。そして、八月から円高になっています。

 今盛んに米国ドルの崩壊で円高といわれています。多くの定年退職者が米国の三年ごとの略奪的為替操作で損害を受ける危険性があると思います。為替は大変怖いので勉強して投資をしなくてはならないと思います。私の中国定期預金は為替レートの切り上げが必ずありますので、損をしないと思います。最悪の場合は日本に持って帰らず、中国に長期投資を続けるか、独資工場の加工賃に使います。為替の損害を防ぐには、その通貨を現地で使えば損害が起きないと言われています。

 

  二〇〇七年十月二十五日

       笑顔着

       リミット株式会社

       代表取締役 有 木 伸 宏 

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