2007年 1月号
一、中国青島工場財務諸表の矛盾
いつも大変お世話になりありがとうございます。
昨年末に中国の生産体制を継続するか、打ち切りにして新しい工場を作るか大きな課題が与えられました。このことはリミット通信の十一月号に書きましたが、特に金融機関から心配のあまり問い合わせがありました。銀行だけではなく、多くの方々が注目されていることではないかと考え、結果をご紹介いたします。
中国青島工場から昨年と一昨年の決算書が求めに応じて送られてきました。中日翻訳ソフト(決算書をスキャナでとり範囲を指定して日本語に翻訳)で翻訳すると、書かれていた工場の人員は、私の聞いていた人数より三十名も少なくなっていました。一目で経費に問題が見つかります。対昨年比で経費が急増しています。その理由の説明を求めたのですが、納得できる説明がなされません。返ってくるのは、意味不明のものばかりです。
日本と同じように中国の会計は、税務署に出す書類を作ります。工場の会計士は資産負債表と損益表を作り会計事務所に送ります。それを会計事務所が処理をします。中国の会計は基本的には税金を納めない努力をするので、正確な決算書は出しません。だから余計に本当のところが見えません。私の感じでは、工場の会計士が作った試算表を基に会計事務所が処理するので、決算書を操作するのは工場の会計士だと思います。つまり、決算書の疑問点は、会計事務所ではなく会社内部事情に依っています。
工場の会計士は元総経理が国営工場にいたときの会計士ですから、専務は若い会計士と入れ替えをするように指図をしました。新任総経理は財務知識もなく、今までのことはよく解りません。その中で専務からの色々な質問を会計士に聞いて返事をする過程で、新任総経理自身も多くの疑問を感じたと思います。私の時代は中国の法律が解らず、全て青島側に任せていました。しかし専務は、問題点とおぼしき事項を福州宏正服装有限公司の総経理に問い合わせています。そうすると弁護士、会計士になど中国税法の専門家と協議した結果をメールで送ってきます。それを青島工場に転送します。コミュニケーションは日本語なので全て理解できます。中国も法律の整備はできています。それを日本人に教えず、中国に都合がよいようにするので日本の多くの進出企業に問題が起こるのです。私の時代の問題点を、専務はあせらず解決すると言っています。日本も中国も若い世代で問題点を修正し、新しい体制を作ると思います。その機会を与えてくれた守り神に感謝しています。
二、新市をよりどころに
地方に生きる困難を選ぶ
今年のリミットグループ新年互例会で、基本的な方針を明確に出しました。
私は二十年前、これからの時代は頭脳時代と考え、優秀な人材獲得のために新市から福山の日本生命ビルに入りました。その当時は多くの方から、何の目的で福山に出るのか?と言われ、理解されませんでした。今では福山駅にも近く、一等地に出てよかったと思っています。現在では新市、府中から大手企業も近くに出てきています。小さい会社は感じたら即行動を起こす。このことが時代を先取りし、結果を出して生き残ることができると痛切に感じます。
ところが最近、情報社会として生き残るとしたら、現在の福山本社でよいのかという疑問を持つようになりました。リミットは東京の情報を吸収するために企画等のコンサルタントは東京より来てもらっています。そしてカタログも東京と連携して企画をしています。専務の時代は本社が福山でよいのか?東京情報の利用の仕方について今後の方針を真剣に考えている最中に、タイムリーな東京の一極集中に関する特集記事を見つけました。
「地方出身者に『自分たちの故郷の町や村が、東京と同じようによそ者に破壊されたらどう思うか』と尋ねると、ほぼ例外なく『それは許せない』と答える。彼らにとって、つまり多くの日本人にとって、東京はいつでもよそ者が破壊できる”日本の番外地“だ。東京は言ってみれば『根無し草の町』です。地域に根を持たない生き方は気楽だ。都会の匿名性はいつも地方の人々を引きつける。しかし東京という巨大な根無し草社会は、いつの間にか国のあり方さえも変えてしまった。主体性を持てない国家の姿は、よりどころを持たない地方出身の『東京人』の生き方と無縁とは思えない。そこに見えてくるのは老人都市東京の脆さである。団塊世代という、世界にも稀な高齢者の予備軍が行き場を失おうとしている。故郷に帰らず頼る地域社会もない彼や彼女は、質量ともに足りない老人福祉の実情に呆然とするに違いない。常に日本の繁栄の中心だった東京は、その強力な人口吸引力の果てに、深刻な不安を抱えた。効率か心の豊かさか、二つは両立するのか。東京が直面する課題は日本の象徴である。」
東京は情報効率を考えれば大変よい場所と思います。しかし仕事そして家族、事業繁栄に大事な先祖をお祀りする。この二つのバランスを考え行動することは、東京では不可能だと思います。私の先祖の墓所は新市にあります。その墓地で荒れ果てた無縁墓が増えています。事業に行き詰まったら原点の先祖墓に参り考えなさいと言われています。先祖の墓に参る人がいない無縁墓は家系が途絶えたことになります。
長寿企業の多くは株式上場していない同族経営会社と言われています。しかし初代、二代目、三代目で多くの企業が消えています。長寿企業の興味深い共通点は上場せず、同族経営をして株式を分散していないことです。分散しないことは後継者を決めたら兄弟の争いが起きない継承方法を考えなくてはなりません。同族会社で兄弟が財産争いをすれば、その会社は必ず倒産します。私と専務は会社に歩いて五分、福山駅に七分のマンションの九階と七階に住んでいます。新市の本宅三百坪の土地には先祖の仏壇を祭る数寄屋造りの家があります。裏山より中硬水の素晴らしい山水が出ます。この水を福山に持ち帰り、飲み水に使用しています。春からは庭や墓所の草取りも大変です。福山から草取りに行っています。このような条件の中で東京情報を大事にしつつ、有木家を守り事業を発展させなくてはなりません。リミットの経営哲学「同じ道が二つあるならば、苦しい方の道を選ぶ」を適用すれば、福山に住み先祖のお祀りをしながら、東京に住んでいる人に負けないように情報を取り入れ、会社を長寿企業にする苦しい道を歩まなくてはなりません。しかし苦しい道を歩めば、必ず素晴らしい結果が出る事を経験で知っています。専務に苦しい道を与えてくれた守り神に感謝します。
二〇〇七年一月二十五日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
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