2006年 10月号
一、困難を選ぶリーダーシップとは
いつも大変お世話になりありがとうございます。
業界新聞に商社の現状について大変面白い記事が掲載されていました。
商社が原料やテキスタイルに代わる繊維ビジネスの柱として、二次製品化を懸命に進めていた一昔前、「アパレル企業の社員より給料の高い商社の人間が、アパレルの下請けをして果たしてもうかるのか」と喝破した大手商社幹部がいました。それから十年以上が経過したが、商社のアパレルビジネスの主軸は今もってOEM(相手先ブランドによる生産)である。ブランド戦略を推進した大手商社の繊維カンパニーを率いる役員は「今期百七十一億円の純利益目標は九十九%達成できる」と宣言した。「うちは何をしてんだ」と他商社のトップが繊維を叱咤する声が聞こえてきそうだ。ブランド一つで「ハイ十億円」の利益計算が立つ華やかなビジネスと汗拭き拭きのOEM。ウサギと亀のようだが、肉離れを起こすウサギも多いようです。
一方でOEM取引に進んだ商社の現状は、商社の繊維ビジネスで製品事業の見直し機運が高まっている。主力のOEM取引で収益性が著しく低下しているためだ。前シーズンより低い納入掛け率を求められる状態が続いている。ここ数年は、自社のもうけを削りながら同業他社とのコスト競争に勝ち残ろうとする姿勢が目立ったが、今年に入って利幅の薄いOEM取引に終始するなら『続けるか、やめるか』の二者択一すら示唆するところも現れている。」と。
一昔前、「アパレル企業の社員より給料の高い商社の人間が、アパレルの下請けをして果たしてもうかるのか」。この様に考えて大変苦しい道を選び、ブランド戦略に向かった商社と安易なアパレルの下請けに向かった商社の現状を考えるとき、楽な道に進んだ結果は哀れな結果になっています。いつもリミット通信に書いているように、同じ道が二つあるならば苦しい方の道を選ばせる私の哲学が間違いないことを再認識します。
二十年前、リミットでも販売力が弱くて生産力の方が多いという状況のもとで、社内からOEM生産を支持する提案がありました。その時の私の回答は明確でした。「リミットは工場に仕事がなくても、リミットネームが付かない別注商品は一枚でも工場に入れない」という断固たるものでした。安易な道に進むことを絶つためです。売れる商品を開発し販売数量を上げる努力をしなければ、いつまでも工場には仕事がないという悲しく苦しい道に会社全体を追い込んだのです。リミットの現在は、OEM生産をせず、苦しい道を選んで努力した結果です。
リミットのような規模の会社は社長命令一つで何事も簡単に動かすことができます。しかし大手商社の場合、組織が大きいだけに各部署に強力なリーダーがいないと動きません。その中で、私は、ブランド戦略で大きな結果を出していることを大変すごいことだと思います。商社では十年で確立できることが私たちの組織のない企業では二十年、三十年かかります。その間、信念を持ち続けて結果を出すことは大変です。このような記事が出ると信念が間違いなかったとうれしくなり、守り神に感謝します。
二、人を幸せにするという意味
企業の存亡のために年功序列に代わる成果主義の導入が目立ちます。ある雑誌に次のような記事がありました。
年功序列は会社の指示を忠実に実行していれば給料が支給されました。そのため仕事の最終責任はトップでした。しかし成果主義ではすべての仕事の結果は自分にあります。「仕事は計数で始まり、計数で終わる」というように仕事の価値を明確にするから、役立つ社員、役立たない社員が明確に区分されます。そのことから「あなたは役に立たない社員です」という烙印が同僚からも押されます。後は他部署に転籍か辞職か、といった選択があるのみです。成果主義は大変厳しく冷酷なやり方だと思います。
成果主義の問題点は利益を出した部門や個人は厚遇され、そうでないと冷遇される。一方では喜ぶ社員がいて他方では不平不満を持つ人間がいる。全社が一丸とならなくてはならないのに、社内で調和が取れなくなってしまいます。さらに、ある時は喜んでいる社員でも、三年後にはその部門が赤字転落して給料やボーナスが一気に減るかもしれない。それまでどんなに会社への忠誠心が高くても、すぐにぶつぶつと不平不満を言い出します。
会社はみんなを幸せにする場所です。いい業績を出した人や部門は、そうでないところを助けて引き上げる。そういう信頼関係と哲学があれば、何も成果主義を採用しなくたって、みんな気持ちよく働いて結果を出してくれます。 このように成果主義の問題点が指摘されていました。
三、優秀な人材で無競争
考えてみますと創業者は例えば最初は夫婦事業を起こし、順調なら一億円、五億円、十億円、二十億円と年商を増やしていきます。この過程では、一億円の売上時代の人材と、二十億円の売上時代の人材は当然変えなくては会社が維持できません。創業からある程度の規模になるまでは成果主義の冷酷なやり方が必要だと思います。人材の入れ替えをしなくては会社の成長が止まります。リミットは社員がよく辞めると言われた時期がありました。私は会社のレベルに付いてこられなくなったら適当な会社に転籍して貰い、次の人材を入れてレベルを上げる努力をしました。社員は冷たい社長だと思ったと思います。社員の入れ替えの努力をしたから、現在のレベルまで上げることができたと思っています。専務の時代はある程度優れた人材が整ってきています。例えばグループ五社の会計は一人がことにあたるというレベルにあります。リミット㈱とリミット通販㈱の受注業務と配送業務は一緒にしています。中国生産の大阪リミット㈱と国内生産のリミット㈱の生産計画も一人でしています。五社の社員は同じ場所にいて、自分が所属する会社以外の仕事もしています。会社間の壁がなく、情報共有して同じ仕事は二人以上でしないで責任を明確にする事を原則に考えていたら、成果主義か、温情主義や年功序列、また会社間の競争も個人の争いもなく、人材も安定します。グループ会社を全員で発展させる独特な雰囲気を持つ会社になっています。素晴らしい組織にしてくれた守り神に感謝します。
2006年10月25日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
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