2006年 9月号
一、「特殊支配同族会社」への対処法
いつも大変お世話になりありがとうございます。
ご存じのように平成十八年度より新会社法が施行されました。これによって例えば「特殊支配同族会社」の役員給与の損金不算入が始まります。今までは個人で事業をするより、会社にした方が経費で落ちるのでよいと言われていましたが、節税目的の法人成りを抑制されるのです。今までは個人事業主が法人成りをすることで、法人における役員給与の損金算入と個人における給与所得控除六十五万円の両方を利用し、意図的に税負担額を抑えようとする傾向がありました。実質的な一人会社に対しては、法人側において給与所得控除額相当額六十五万円を損金不算入にしようというものです。一人会社のことを「特殊支配同族会社」といい、大変厳しい資格の規制が次のように纏められます。
同族関係者となる個人
a.株主等の親族(配偶者・六親等内の血族・三親等内の姻族)
b.株主等と内縁関係にある者
c.株主等の使用人
d.a~c以外の者で、当該株主等から受ける金銭で生計を維持しているもの
e.b~dの親族で、その者と生計を一にしているもの
具体的に要約すると発行株式の総数の九十パーセント以上そして役員合計の過半数を社長及びその家族が保有すると同族会社になります。この二つの条件の内一つが外れると同族会社でなくなります。
今回の新会社法の制定で、資本金が一円でも会社が設立、誰でも簡単に会社が作れます。そうなると、決算書公告の義務を厳密に運用しないと、会社の信頼性を担保できません。平成十四年の商法改正に決算書をホームページで公告することが可能になっており、その厳密な運用がはじまる可能性があります。中小企業の場合、公告が必要なのは貸借対照表だけで損益計算書は公告する必要はありませんが「新会社法」制定前に有限会社(有限会社は公告不要)を設立する事も方法だと思います。
二、全リミットを宏正商事の子会社へ
リミットが同族経営方式を実行していることは今までにリミット通信にたびたび書きました。それが今年八月から同族会社ではなくなったのです。その理由は次のように説明されます。
一昨年末、福建省の福州に専務が個人で七百万円を出して独資工場 福州宏正服装有限公司を設立しました。貿易とか実業又は商事にしたかったのですが不許可でした。中国のバブルの崩壊を考え、五年間は勉強の時と考えて街中に小さい店舗兼二階に工場をつくり、ユニフォームの販売を始める準備をしています。そして昨年八月に日本での活動も考え、専務の個人的な会社㈲宏正商事を資本金三百万円で作りました。有限会社の場合、取締役は二名です。それで専務が代表で、福州宏正服装有限公司の総経理が取締役になりました。
私と専務は、昔は銀行預金をしていましたが、現在では銀行預金は一切ありません。リミットにすべて個人貸付金にしています。その貸付金をリミットから㈲宏正商事に移しました。そして中国の独資工場 青島伸栄服装有限公司、福州宏正服装有限公司の出資金、貸付金を全て㈲宏正商事が買い取りしました。国内の大阪リミット㈱、リミット通販㈱、日中情報システム㈱の出資金を、昨年より順次買い取り、リミットグループをすべて㈲宏正商事の子会社にしました。この宏正商事は専務と中国の総経理が取締役二人で設立しています。資本金三百万円の内三十五万円の株を福州の総経理が出資しました。株主と役員の規制の条件を偶然クリアーしていますので、㈲宏正商事は同族会社ではありません。その結果、宏正商事の子会社リミットグルーブは、同族経営会社ではなくなったのです。
三、子会社化の壮大な意味
青島伸栄服装有限公司の総経理の子供夫婦四人は、日本で勉強させました。長男は学者タイプです。この他にも色々な人材を育てるため、知人の広島大学大学院で法学博士の学位をとり、現在中国福建師範大学の講師をしている女性の鄒さんという女性にも、「人は類を持って同じような人が集まります。鄒さんはクリスチャンで周りに素晴らしい人がいると思います。日本で勉強をしたい人がいれば教えてください」とメールを送りました。そして紹介されたのが福州宏正服装有限公司の現在の総経理です。広島大学大学院経済学部卒で事業家タイプです。
この総経理は父親の影響を受けて大変公私の別に厳しい人物です。アメリカにいる婚約者に会うためのビザを日本のアメリカ大使館で取ることになりましたが、すべて個人の金で来日しました。専務が会社の経費になると言っても受け取りません。福山のホテルの費用も大阪に行く交通費も受け取りません。
この性格によって月初めには福州宏正服装有限公司の収支そして金銭残高を毎月報告してきます。私の目的の信頼できる人との国際的連携は短期間で実現でき、㈲宏正商事を設立し中国工場とリミットグループの株を全て買い取り子会社にしたのです。その結果、経営は本質的には同族経営方式でも、法的な形態は同族経営ではなくなりました。
専務に国際的連携を実現させてくれた守り神に感謝します。
2006年9月25日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
コメント
コメントを投稿