2006年 6月号

 

 一、高級婦人服と新販路の選択、その意味



 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 リミット通販(株)のホームページ(limit-tsuhan.com)又はリミット通販で検索してください。高級婦人制服に関する情報をご覧になれます。また、この度の情報誌(カタログ以外に配布)の撮影風景を動画で見ることができます。リミット(株)の従来の販路では一切扱っていません。販売経路はエンド・ユーザーへの直接販売になっています。いわゆるB to Cです。ホームページの制作はリミットの子会社、日中情報システム(株)です。

 この高級婦人制服をリミットと同じ販路を選択しなかったのか、その理由を具体例で説明します。創業時、ある銀行との取引時代はリミットの苦難の連続でした。リミットが徐々に明るい方向になり、支店が了解した融資を、いくら稟議を出しても本店が決済しません。理由はリミットの苦難期の履歴が本店に残っていたからです。本店は好転したリミットを理解していませんでした。

 大変悩んだ結果、別の銀行に全面的に移行する決断をしました。そして他の銀行に移行すると申し出た時、若手で大変優秀な次長が即、定期預金の解約から借入金の精算を始めました。その次長は何度も稟議を無視され本店より恥をかかされていました。大変腹を立てていたのでしょう、何も言わずに整理してくれました。整理してみると預金の方が多くありました。それを直ぐに別の銀行に送金しました。この決断は大変よかったと思います。新しい銀行には過去の履歴はありません。現時点の状況から判断し大きな金額の貸越口座を作っていただきました。この貸越口座は設定金額の範囲内ならいつでも借り入れができます。この貸越口座のおかげで精神的に余裕を持ち、新しい挑戦に踏み出すことができました。

 人はいったん頭に入ったことはなかなか忘れることはできません。変えていただく努力より、白紙の状態に書き込む努力の方が簡単で早く結果が出ます。

 リミットが女子作業服を始めたとき、徐々に販売が増えて生産が追いつかずお得意先に大変ご迷惑をかけた時代がありました。どんなに努力しても縫製工場には人が集まらず、生産を増やすことができませんでした。そのために受注担当者はノイローゼの状態になりました。そして女性社員がお得意先からのお叱り電話が怖くて退職したこともありました。中国での生産が軌道に乗り、納期が正確になっても、この時代のことを多くのお得意先が覚えておられて信用をしていただけませんでした。一度悪い種を播くと信用を取り返すのは大変な年月と努力が必要です。リミットは信用回復のために多くの年月が必要でした。

 高級婦人制服をリミットの販売店に出すと女子作業服の延長線上で商品を見られます。その考え方を変えていただくには大変な努力が必要になります。今までの流れに関係なく、白紙の状態のユーザーに販売すると、その労力が必要なくなります。白紙状態で商品を見ていただくことができます。以上のような考え方で、リミットとは別ルートで特定の会社に直接販売をすることになりました。



 二、失敗で覚えた真のチャンスとはなにか



 リミットは女子の作業服のメーカーです。そのメーカーが高級婦人制服を造って販売する発想は超非常識の発想です。この考え方は最初から考えていたことではありません。準備期間の五年の間に大変右往左往いたしました。何かの行動を起こすと迷いは山のように起きます。その迷いの度に後始末が必要です。リミットの作業服の延長上から考えた商品を企画したときもありました。なぜ高級婦人制服ができたか、運が大きく影響したと思います。しかし運は寝て待っていたら相手から近寄ってくるのか?絶対にそんなことはありません。苦難するものにのみ神様は次々とチャンスを与えてくれます。

 そのチャンスを採るか捨てるかの決断の連続です。若い世代がチャンスと見ても、私はチャンスではないと見ます。そのつかみ方でそれからの流れが真反対の方向に行きます。私は今まで一杯の失敗をしています。失敗で掴んだ直感は若い世代に教えることはできません。私は失敗の後始末に大変苦労をしています。失敗を体で覚えています。そのことを若い世代に教えても言葉だけで実感はもてません。その点が若い世代の教育の最大の問題点です。若い世代も年代とともに勉強すると思います。



 三、全商品廃棄と運命の分かれ道



 この度の高級婦人制服の生産で最大の運命の分かれ道について書きます。三年前、高級婦人制服メーカーとして進出する方針が決まり、生産工場に指導者を迎えて縫製の教育研修が始まりました。販売スタート時の商品は高級婦人物を生産している会社に縫製委託しました。そしてカタログも配布を始めました。委託先から製品が納まると、縫製指導者がこの製品では販売できないと言いました。カタログはすでに出して販売を始めていたので、縫製委託をした商品を販売するか、廃棄して新しく生産するか。生産するとしても委託先がありません。リミットの工場は研修を始めたばかりで製品はできません。生産で行き詰まり、非常事態となりました。最初悪い商品を出して信用を落としたら、信用回復に大変時間がかかると直感で決断し、商品は全部廃棄と決めました。

 対応策としてリミット通販の責任者(リミット受注責任者兼通販の社員)に注文が入ったら、注文殺到で二、三ヶ月待ちの状態であると言うように指図し、一方では生産方法は瞑想で神仏に導きを求めました。その結果、縫製指導者に昔の洋服は年季奉公の弟子が足踏みミシンで一針一針縫って、それを師匠がアイロンを掛けて教えながらゆっくり縫うから素人の弟子が縫っても上質になるという職人の歴史にヒントを得ました。一ヶ月で一人、一枚の生産で満足できる商品ができないかと指図しました。行動を起こして一ヶ月一枚生産で、指導者が自信を持って出荷できる立派な商品ができました。次は二週間で、次は一週間でできました。素人集団ですばらしい商品ができるようになったのです。

 もし縫製委託先の商品がすばらしいものができていたら、リミットの工場は必死の努力をしなかったと思います。リミット通販が生産で行き詰まり、非常事態に追い込まれた最悪の時に、神は最高のチャンスを準備していたのです。リミットグループの守り神に心より感謝いたします。



  2006年6月25日

      笑顔着

       リミット株式会社

       代表取締役 有 木 伸 宏 

コメント