2006年 5月号
一、正確無比でも「欠点」のあるシステム
いつもお世話になりありがとうございます。
四月中頃、三年ぶりに神戸税関より調査に来るとの連絡がありました。期間は三日間です。前回の調査では付属品の記載落ちなど大変細かいところのミスを指摘されました。この度は、完璧な申告手続きができていると確信を持っていました。その理由は、リミット製品に関する全てのデータはコンピュータ登録して、リミット全ての業務管理に利用しており、貿易業務もその登録よりデータを取っているからです。もしその登録データにミスが起こると、それを修正すれば、その後はすべてが完全になります。貿易業務も全てシステム化していますので、間違いが起きる可能性はありません。結果税関職員は三日の予定を一日半で切り上げて帰りました。この精度の高い管理は製品在庫でも同様です。リミットは多品種少量生産ですので、製品在庫が正確でなくては自動出荷システムが稼働しません。
昨年の十二月に育児のために退職した貿易担当者の後任は、派遣会社に依頼しました。派遣社員は、リミットの多品種の品番をみて最低五人は必要だと主張しましたが、教育研修の結果一人でいつも定時で帰っています。「コンピュータでできることは全てコンピュータでする、人は判断業務に徹する」という方針が生きています。貿易業務も財務会計ももっともシステム化に適した業務です。日常においては専門的な知識がなくても、ソフトで処理できます。決算時の償却等専門的な処理は、会計事務所に任せればよいのです。
ただし、完璧なリミットでの貿易システムにも実はちょっとした「欠点?」があるのです。それは百パーセント正確なので「融通」がきかないことです。関税を完全に納め、在庫も完全に把握しているので、誤摩化しができないことです。
二、オープン組織はグーグルに注目する
昨年来リミットのコンピュータは、オープン型基幹システムになり、究極のシステムに近づいたと思っています。リミットが電子メールを使い始めたのは、一九九五年です。十年の間に大変進歩しました。電話やFAXが電子メールに変わりました。
しかし、実を言うと、リミットのようにトップがいて部課長がおらず、全て横一線に並んでいる組織では、オープン化されないONE to ONEの情報交換は大変不便です。一般的な会社の「組織の仕事」では、組織内の情報はブラインドになっているのが基本です。別の部署で何が起きているのかわかりません。部門別の大きな壁がありました。部課長は大事な情報を握ってコントロールすることにより、存在価値を誇示しました。
当然リミットのオープンな組織では、電子メールはあまり魅力がありませんでした。それが電子掲示板の登場で価値が一挙に高くなりました。社内情報の共有が部門間にまで及び進み合理的になりました。現在は中国の生産工場も日本と同じ電子掲示板で情報を共有しています。すべての情報を共有すると、ものすごいスピードで物事が進みます。中国工場で製品に色違いが出たと書くとすぐに原因追及と改善方法のやりとりがあり、解決するまでの時間は短時間です。従来型組織の常識を破壊するまでにインターネットが大きく進歩したのです。
今後は更にインターネット関係が大きく変化します。その研究が大きな課題だと思っています。そこで重要なのは検索ソフトのグーグルです。昨年末で三十万台のパソコンを使って、世界のメールを検索して情報をとっています。いまでは外来語辞典や現代用語辞典がグーグルを使うようになって不要となりました。専門的な問題でも検索可能です。二〇〇〇年頃はバナー広告(広告画像を貼り、広告主のサイトにリンクする手法)がインターネット広告の主流でした。現在は激減して検索連動型広告(自社のサービスを探している人だけを集客してビジネスにつなげる)に変わっています。全世界の人と企業の命運は「グーグル」に握られる、こんな過激な言葉が最近出ています。このグーグルがビジネスソフトとしてどのように変化し成長するか、私は注目しています。
三、重要だが難しい自己変革
最近、ユニフォーム業界の将来を真剣に考えています。厳しい現実をネガティブに捉えるのではなく、危機や逆境を転機であるとポジティブにとらえ、時代にマッチした事業にするように挑戦すべきです。リミットは女子作業ユニフォームで長年特徴ある企業でした。しかし今では男子物メーカー、オフィスユニフォームメーカーから参入も目立ち差別化が大変難しくなりました。千変万化するビジネス環境の中で、将来求められるものは何でしょうか。それは、「わが社はこれを売ってきた企業である」との固定観念を白紙にすることができる精神です。また、得意分野を生かすことも大切ですが、過去の栄光への固執を捨てることです。
昔は「企業の寿命は三十年」と言われていました。今は「企業の寿命は十年」です。いかなる事業も時代の流れの中での栄枯盛衰は免れません。過去に執着せず、未来の事業として高級婦人制服のリミット通販そして今後の情報戦略を考え、中国と提携して日中情報システムを設立して八年。どちらも昨年から本格的に稼働しています。今年は中国で展開を考える宏正商事を設立しました。この会社の形が見えるのは五年先になると思います。
何か手を打たないと最後は行き詰まると感じても、行き詰まりがはっきり理解できるまで先手を打つことは意外に難しいものです。人間は変化を嫌い、現状に安住しがちです。将来に向けた自己変革を怠ると、現在は何とかなっても、五年後、十年後に厳しい逆境に見舞われます。この見通しが次々と会社を設立させたのです。若い世代で軌道に乗せることに期待したのです。リミットの総合研究所はこの厳しい環境の中でも多額の資金を使って研究しています。
安売り競争に入らず、価格維持を継続したことが短期では理解していただけなくても、必ず歴史とともに結果が出て、お客様に理解される時がくると信じています。
2006年5月25日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
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