2006年 3月号

  一、 輝きを放つ「血の経営」をまもる



 いつもお世話になりありがとうございます。

 さて、皆様は「家業」と聞いて、思い浮かべるイメージはどのようなモノでしょうか。オーナー一族の利益を最優先させる閉ざされた会社。時代に取り残され成長力に乏しい、と世間の一般的な見方はこうだと思います。そして確かにオーナー経営者が引き起こす事件、不祥事は目につくのです、しかし、それだけを見て、家業的経営を否定するのは間違いです。しかし、現実は逆です。虚業、マネーゲームが幅を利かす時代に、本業への強いこだわりで、したたかに利益を上げる企業が多いのです。目先の利益、目先の株価に振り回される虚業の時代。多くの企業が本来、大切にすべきことを見失いかけています。そんな時代に輝きを放つのが「血の経営」です。創業一族が確固たる理念の下に結束し、本業にこだわった企業運営を貫き通す。環境変化にうろたえず、積極的な生き残り策をとる姿から「不死身」の言葉を想起させます。

 日経ビジネスの三月号に虚業時代にあえて問う不死身の「血族経営」に下記のように書いてあります。

 「南アルプスに連なる山梨県の山あい。JR身延線の最寄り駅から車で一時間弱、高速道路のインターチェンジからだと一時間半かかる。そばに観光地があるわけではなく、北岳をはじめとする高峰を拝めるわけでもない。寒風吹きすさぶ二月中旬の午後。そんな場所にある高級旅館に二台の大型バスが乗りつけ、年配客が次々と吸い込まれていった。そこは知る人ぞ知る国内最古の西山温泉だ。社長の深澤雄二氏は五十二代目で、藤原真人の末喬を名乗る。慶雲館の売りは古さだけではない。昨年新たに掘り当てた温泉は毎分一六三〇リットルの湯を噴出する。掘削温泉としては世界最大級の湯量で、現在ギネスブックに申請中。大浴場のみならず、シャワーから個室の露天風呂、洗面所のお湯に至るまですべて源泉かけ流しで、加温も一切しない。不便な場所にありながら、宿泊料金は一泊二万三千円からと決して安くない。理由はコストより品質を重視するから。例えば、部屋に露天風呂がついている特別室の改装では、使う木材や壁の塗り方にまでこだわり、一室四千万円をかけた。料理はすべて部屋出しで、海で取れる魚は一切使わない。価格競争の厳しいご時世にあっても「毎年客単価を上げている」と深澤社長は豪語する。投資回収を気にする銀行は、閑散期の稼働率を上げるため値引きを勧めるが、『一度単価を落とすと元には戻らない』と決して首を縦に振らない。『高くてもいいものを提供しないとお客さんに飽きられてしまう』という。目先の利益を優先してせっかく築いたブランドイメージを損なうことを何よりも恐れる。こうしたブランドに対するこだわりは、多くの家業型企業に共通する。創業家は会社への愛着が人一倍強い。だから、ブランド価値を落としたくないという気持ちが働くのだ」

 価格維持をしてきたリミットの経験から推測すると「毎年客単価を上げている」という深澤社長の内面では大きな葛藤があると思います。豪語すればするほど失敗を恐れる気持ちが強くなります。その不安が必死になって結果を出す努力に変わるのです。他人の目に留まらない裏側には必死の努力があるはずです。目標を言葉に出す人は必ず夢を実現します。何も宣言しない人は恥をかくこともないので絶対に成功しません。価格維持すると心で決めても投資回収を気にする銀行から、閑散期の稼働率を上げるため値引きを勧められると融資を受けているだけに迷いも起きます。このように迷いながらでも価格維持できる人は、守り神が価格維持をさせているのだと思います。

 価格維持を簡単にできる人は知恵のない人です。知恵のある人は必ず迷いが起きます。リミットも頑固に価格維持をしてきました。安値競争の中で価格維持することは、多くの人から悪口を含め様々なことを言われました。それでも維持できたのは、守り神がリードしたとしか考えられません。人間の知恵では不可能だったと思われてなりません。

 こうした類いの記事が出ると、リミットは間違った道を歩んではいないと自信を深め、私は価格維持をさせてくれた守り神に感謝するのです。



  二、高級婦人服は地方から、「非常識」の挑戦



 リミット通販㈱が販売している高級婦人制服の販売が二年目に入りました。準備期間を入れると九年目になります。売上は関東の販売が一番多く、次は近畿です。その二地区の売上が全体の六〇%になっています。高級婦人制服の販売は大変よい方向に行っています。地方で生産し情報発信は東京、と最高の販売方法となっています。全て国内生産で中国生産では高級婦人制服としての品質が確保できませんでした。売上減少で大変困難な時期に新しい分野への進出は大変な決断が必要となります。今から考えると作業服の産地で高級婦人衣料の生産を考えて行動を起こすことは常識では考えられません。馬鹿に近い非常識です。しかし現実には関東地区、近畿地区で売れている商品ができています。非常識に挑戦した結果です。

 人そして会社の運命は、挑戦するか諦めて普通の道を歩むかで大きく変わります。その時、その時の決断から逃げていては結果が出ません。行動を起こし失敗すれば後始末をしながら、方向を変えて挑戦すればよいのです。作業服の産地で高級婦人制服に挑戦できた大きな原因は、節目節目に大きく助けてくれた取引先、そして人との出会いです。自分たちの力では作業服の知識しかありません。それを多くの人に助けられました。守り神が助けてくれる人を準備していたのです。それを知らず、諦めて挑戦しなければ結果を出すことはできません。多くの人が成功する道を与えられているのに、挑戦せず諦めているのではないでしょうか。

 高級婦人制服の発展を考え、東京のコピーライターの意見を採り上げて情報誌を作っています。私はこれからの時代は、地方に住んで、情報は東京発信になると思っています。東京に住めば情報が多すぎて選択に迷い、ノイローゼになると思います。大きな夢を持ち、行動を起こして継続すれば夢は必ず実現します。何事も継続が一番です。私も十五年前、東京発信の情報誌作成で行動を起こしました。しかし大変な不況の到来で止め、結果は出ませんでした。若い世代の挑戦に大変喜んでいます。好況の時は何でもできます。大変厳しい時に粘り強く挑戦し、大きな夢を実現して欲しいと思っています。





  2006年3月25日

    笑顔着

       リミット株式会社

       代表取締役 有 木 伸 宏

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