2005年 11月号
一、先端企業の敗北とその理由
いつも大変お世話になりありがとうございます。
十月に中国青島工場に行ってきました。その主要な目的は、独資工場青島伸栄服装有限公司の董事長を専務に譲るために董事会を開催することでした。現在青島では総経理の長男が情報会社を作り、リミット子会社の日中情報システム㈱と提携して仕事をしています。長男の妻は日本で財務の勉強をして帰国後中国の会計士になる目的で勉強をしています。また総経理の娘夫婦は、日本の大学を卒業後帰国し、青島伸栄服装有限公司を継ぎました。リミットも中国の生産会社も次の世代に引き継ぎが始まりました。これから始まる情報時代を日中が連携して生き残って欲しいと願っている矢先、新しい時代を感じさせる新聞記事を見つけました。
急成長するネット企業が既存のビジネスの枠組みを崩し始めた。ライブドアが二十一日発表した通信販売大手セシールの買収は、消費者が商品選びの媒体を紙のカタログからネットに変えつつあるという意味でも象徴的だ。米国ではグーグル、ヤフーなどが広告に新しいビジネスモデルを作り上げ、メディアの中でネットの存在感が増している。日本でも新興企業がネットへの転換に遅れた企業を飲み込む動きが広がってきた。通信販売業界ではネット通販が急成長している。日本経済新聞の調査によると、カタログが通販全体の売上高に占める割合は五年間で七八%から五六%に落ちた。ネットの比率は逆に三倍の三〇%に上昇した。
これを読んで私は、本を買うときのことを思い浮かべました。私は、長年クロネコヤマトのブックサービスにインターネットで注文していました。注文から一週間程度で送ってきます。本を出版社から取り寄せて送るのです。ところが、先月ブックサービスに接続すると、「ただ今ご利用いただけません。現在のところ、リニューアル時期は未定となっております。ご注文の窓口として、メールまたはお電話もご用意しております。」と、このように出てきて、一時インターネットでの注文を中止していました。それでアマゾンに接続し、新規登録をして本を注文しました。夕方注文した本が翌日の午後着きました。ブックサービスより格段上のサービスです。そして著者の名前、本の題名の一部だけで検索すれば、関連した本が表示され、容易に見つけることができ、また意外な本との出合いもあります。さらに次回の時からは、「こんにちは、有木伸宏さん。 おすすめ商品があります。」と出てきます。私の注文傾向を分析して推薦本を提示します。本を確定して注文は一回のクリックで済みます。大変簡単で便利です。これではブックサービスは負けたのだと思いました。
時代の先端を行っている会社が、気が付けば負け組に入ります。想像している以上に世界の流れが変わっています。このようなケースは最近他でもよくでくわします。アマゾンを詳しく調べようと思っている時、日経ビジネスに特集が出ました。
戦後日本の流通革命を主導した大量生産、大量販売で大衆を煽るマス経済は終わり、消費者一人ひとりを個人名で呼び、その人のためにカスタマイズした製品、サービス、情報を提供する「ナノ経済(無数の点と個を結ぶマーケティング)」が始まった。アマゾンの売上高は今年で一兆円超、ナノ経済の到来を高らかに告げている。ダイエーからアマゾンへ。ネットがもたらす流通革命の最前線です。アマゾンは日本国内でも知られざるインターネット小売りのナンバーワン企業だ。アマゾンによると、世界の売上高に占める日本の比率は十%以上で、昨年末時点で八百億円に達した。日本で時代の寵児としてもてはやされる楽天の二〇〇四年十二月期の売上高は四百五十六億円に過ぎない。アマゾンは日本進出からわずか五年で業界首位に躍り出た。中核事業である書籍販売だけを取り出しても、今や日本最大の書店と肩を並べる規模になりつつある。従来のマスマーケティングでは困難だった個人の買い物履歴を利用した販促も強みだ。過去に同様の購買行動を取った顧客が、ほかに購入した商品のデータを解析し、一人ひとりにお薦めの商品を提示する。関心を持つ商品が見つかれば購入する人も少なくない。
豊富な品揃えも強力な武器だ。現時点で書籍五十万冊、その他の商品五十万点の品揃えがある。「アマゾンに来れば探している商品が必ず見つかる状態が目標」
アマゾンの躍進を支えるのは何か。口コミのパワーがアマゾンを支えている。アマゾンは従来のマスマーケティングを否定することで成長してきた。テレビやラジオ、新聞などでは一切、広告宣伝をしない。「広告宣伝にお金を回すなら、値引きした方が顧客にとってはうれしいはず」実店舗が太刀打ちできないネットならではの「利便性」もある。住所などの個人情報を登録しておけば、商品を見つけて購入ボタンをクリックするだけで買い物が終了する。 私はこのような時代が来ると確信し、繊維会社が日中情報システム㈱をつくったのです。
二、真の「紙からデジタル」の時代に
リミットの管理システムは二十五年の努力で究極の管理システムに近づいています。これからはデジタル画像送信そして知的情報の提供です。人の頭脳とコンピュータの計算分析能力とでお客様に喜ばれる情報提供ができるかどうかが大きなポイントになると思います。リミットは、カタログ制作に年間五千万円使っています。リミットの規模では大変な金額です。これが画像送信に換わると、紙資源の節約と経費の節約になります。紙のカタログは写真が綺麗で全て無くなるとは思えません。画像送信と紙のカタログの接点(LIMIT)の追求だと思います。これからが販売促進としての情報システムの出番です。カタログに代わる画像情報の競争時代に入ります。リミットは基幹情報システムの再構築に六千万円使いました。その勉強でシステムと画像情報の人材も育ちましたが、その弊害として会社の規模を大きくすることはできませんでした。今になって考えると、新しい時代に対応できる組織ができた理由は、リミットが後発企業で完成した組織が無く、白紙の状態だったからだと思います。産地の先発企業は組織も完成しており、充分な内部留保を持っており、安定しています。リミットは組織もなく、資金も無いので新しい時代に素直に対応できました。後発の悪条件を逆に生かすことができた事を守り神に感謝しています。
2005年11月25日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
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