2005年 9月号

 

  一、大きな夢もち

     一つ一つの課題と取り組む


 

 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 最近、いつもなら書いていた売上状況をできるだけ書かないようにしようと思いはじめました。リミットでは、対前年比売上と受注残状況の報告を毎日夜八時までに役員用掲示板で見ることができます。その売上は増えたり減ったりで、この当たり前のことにあまりこだわると精神的に不安定になります。手形支払をしていた時代では、毎月の決済日が近づくと、手形を落とすことができるかと心配の連続でした。夜も寝られない状態でした。いつになったら夜落ち着いて寝られるのか、と思っていました。リミットは法人設立、三十六年目になりますが、現在旺盛な企業活動を行っているのをみるとかつて夜ごと日ごとに苦しんだ不安は何だったのかと思います。結果としてこれが訓練になり、最近は目先の問題にはこだわらないようになりました。勿論、危機感が無くなったのではありません。危機感を持って絶えず先行投資をしていれば、次の芽が吹き出して来る。その芽が育ち、次の時代の軸となり、会社が継続して生き残る事ができると確信を持っています。「夢は大きく持て」と言いますが、しかし目先は小さく持つべきです。大きな夢は目標です。今とかけ離れているために現実がなおざりになってマイナスになります。

 

  二、理念を重視した

     公平な営業が企業の資産


 

 ㈱三菱総合研究所発行の情報誌に次のような記事が載っていました。

 「仕事上、タクシーを使う機会がよくある。タバコを吸わない筆者は、禁煙タクシーに乗ります。そして興味本位で『お客さんで、吸いたいという人はいないんですか?』という質問をします。『断ることができないから、吸ってもらっています』と応える運転手が多い中、一人だけ『申し訳ありませんが、乗車をお断りしています』とはっきり答えるタクシー運転手がいました。『その理由は』と聞いてみると、『私のお客様を裏切ることになります。』と自信を持って語る口調が印象的だった。マーケティングも『マスから個対応へ』との議論がますます隆盛であるが、応えるべきものと応えざるべきものを見分け、顧客に接する、まさに『選択と集中』と自分たちが提供する価値を頑なに守る『徹底と執着』が重要であるとタクシーの経験から感じました。」と書いてあります。

 また、ネット証券で成功されている松井証券の松井社長は不安について次のように言っておられます。

 「社長の決断とは、右に行くか、左に行くかを決めることであって、中間はない。懸命に分析しても答えは出てこない。そんな程度で導き出せるような判断を、社長の決断などと言って欲しくない。要するに、『やってみなければわからないものを、やる前に決める』というのが社長の決断だ。『開き直って』決断するしかない。時代を先取りできればいい。しかし、神様でもない限り不可能である。だから、決断は『えいやー』でいくしかない。そして、もし間違えたら『ごめんなさい』と謝るしかない。思えば、サラリーマン時代は『不満』は一杯あったが『不安』はなかった。社長になって『不満』はなくなった。その代わり『不安』だらけになった。日々、『不安』と抱き合って生きているようなものである。『不安に遭遇する、恐怖のどん底に落ちる。そのうち不安に慣れ、馴染んでいくしかない。』」と。

 ご存じのようにリミットには営業がおらず、価格交渉が一切無い会社になっています。現在ではトラブルはありませんが、この方針を決めて実行した二十年前は大混乱も起こしました。「値引きの要望は全て断りなさい。」と言い続けました。「お前の所からは買わない」と叱られ続けました。それでも断り続けるための信念はまるで神から啓示をもらったようでもありました。全てのお客様に平等にノーと言うことが信用となり、たった一人のお客様にイエスと言えば信用を全て失うと堪え忍びました。過去の流れを変えるのはいつの時代でも大変なパワーが必要です。何もしなければパワーは要りません。リミットは課長、部長は一人も居らず、部門長が横一線に並び、机の引き出しを廃止し、情報を共有にしました。この二十年の努力が現在の情報化時代の戦力になる大きな無形財産になったと思っています。

 

  三、努力の結実、システムの変更

 

 また、これらを読んで、昨年五月に基幹システム再構築の時の気持ちと一致すると感じたのです。情報誌に情報時代の先取りで基幹システム再構築の記事が盛んに書いてあります。そしてその失敗例も多く記事に出てきます。不安を感じながら日中情報システムの社員を勉強させるために、リミット基幹システムを六千万円かけて再構築することを決めました。経験が高い今までの情報会社に作らせれば安心です。私は発想を変え、六千万円は教育研修費と考え、勉強しながら二、三年かけて基幹システムを再構築すればよいと考えました。それが九月より新システムに切り替え、全て稼働しました。本当に問題なく動いているのか信じられないので各部門に確認しました。リミットのシステムは高度なシステムです。二、三年かけて再構築と思っていたのが一年三ヶ月で稼働しました。六千万円の構築費を日中情報システム社員の教育研修費と考え、勉強させました。考えてみれば勉強させたから勉強したのです。そして結果を出したのです。これも難しいことを簡単に考えるという常識では考えられない神から与えられた非常識の発想だと思います。

 サイト上の役員掲示板を見ると九月一日の役員掲示板には一日の売上が出ていました。先月までは、月が明けて三日間はシステムの関係で売上表示されず、四日目頃に売上総金額が出ていました。新しいシステムでは文字通りリアルタイムで確認できるようにシステムを変更しました。リミットのシステムは受注と納期を入力すれば、後は生産計画通りに製品が流通センターに入り、全て自動で処理します。流通センターでは、納品書が発行された製品を出荷すればすべてが完了です。この自動出荷システムは二十年間、一工程一工程を省く努力をした結果、受注インプットの一工程だけになりました。リミットの自動出荷システムを他社に無料で差し上げても、在庫の正確性、生産計画の正確性等多くの条件が整わなくては動きません。リミットは二十年間小さいことを積み重ねてきたのですが、その甲斐あって、少ない人員で大きな仕事ができる高度な流通自動システムができたのです。

 

  2005年9月25日

 

    笑顔着

      リミット株式会社

      代表取締役 有 木 伸 宏

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