2005年 8月号
一、10年、20年デフレは続く?
いつも大変お世話になりありがとうございます。
私は国家破産とか、猛烈なインフレが来るとか、色々な意見の本を読んできました。経済理論を勉強していないのでどの意見が正しいのか、大変迷うことがあります。しかし今後十年、二十年はデフレが続くという考え方が出てきてこれには若干注目しています。デフレ継続の理由は、低所得者層の増大と高所得者層への富の集中が顕著になっていることです。
低価格商品を低所得者層に販売する価格競争によるデフレは、消費者には天国ですが、私たち生産者や販売者には地獄です。体力を消耗し尽くした会社は倒産します。昔と違って再就職が大変難しいので失業者が増大します。社会保障費の増大は社会的コストを更に大きくします。日本社会では貧富の差は小さく、「一億総中流」といわれてきましたが、今では、勝ち組と負け組に分かれ貧富の差が顕在化してアメリカのようになりつつあります。アメリカでは、平均九十億円の個人資産を持つわずか一%の人が、全国民の資産の四十%を持っています。低所得者層四十%の人々は、全体の〇・五%の資産しか持っていません。所得者層が二極化すれば当然、消費も二極化します。低所得者を相手にした値段の安いものがもてはやされる一方で、高所得者層をターゲットにした高品質・高価格、あるいは贅を尽くしたものが歓迎されます。
このような状況は中国でも起っていて、これもデフレに影響するとの予測です。十三億もの人口で貧富の差が大きく、地方では年収一万円前後の貧困者は膨大で、生活苦から各地で暴動が起きていると言われています。一方都市部では信じられないような富裕層が出現しています。
二、新たに始まる別会社での国内生産
デフレが続くと、価格競争で勝てる体制を作るか、企画力で高価格でも売れる商品開発に向かっていくかの二者択一です。早急に対策を考え、行動を起こさなくては間に合いません。リミットは当面、女子作業服は価格維持をし、販売代理店に納品する形態を維持します。そしてリミット通販は、特定のジャンルにおいて高品質・高価格商品を直接販売して利益を出す努力をします。
リミットの商品は不採算の国内生産を中国生産にシフトしてきました。リミット通販は高級婦人衣料を国内生産して、採算が合う価格設定で販売できる商品を企画開発し販売しています。少人数でクイック生産していたリミットの国内工場は昨年より、高価格・高品質生産工場に切り替えました。もともとこの工場は十五年前、社員が誇りを持って勤務できるようにと、工場らしくない建物にしていました。それを高級物の生産に相応しい環境に変えるため、去年再整備をしました。そして指導者を招き、勉強を初めました。最初は採算を無視し、高品質の生産に努力した結果、一年で目標を達成したのです。
従来私は、採算が正確にわかるように分社化を推進してきました。それでこの高付加価値生産工場も新しい別会社にすると言ったところ、幹部より昨年リミットの別生産工場が小規模になり、会社を清算しリミットが吸収したのに、今年はまた新しい生産工場を別会社にするのか、と反論が出ました。しかし、方針は明瞭です。昨日と今日では考え方が違うのは当然で、長年変更の連続で前進してきたのがリミットです。今までの工場は後ろ向きだから清算し、リミットが吸収して整理したのです。今度の工場はリミットグループの運命を決める大事な工場として位置づけ、日本一高品質生産工場を目指して突撃します。
三、新しいシステムは、次世代への伝言
昨年五月に総予算六千万円でリミットのコンピュータシステムを再構築することを決定しました。中心は勿論、子会社の日中情報システム(株)です。機器の設置後、この盆休みには四日間で新旧システムを切り替え、現在はシステムの九月本格稼働を目指し最終テスト中です。
旧システムではリミット(株)、大阪リミット(株)、リミット通販(株)、日中情報システム(株)、(有)伸栄、(有)リミット出雲の六社がリミットのコンピュータを利用していました。各会社はそれが可能になるよう強引にシステムをカスタマイズしていました。その理由は、大変なソフト作成費をソフト会社に支払うことになるからです。今後はオープン系なので、システム構築やメンテナンスは自社となり経費が下がります。『日経コンピュータ』には毎月、動かないコンピュータの記事が載ります。殆どの企業は十億単位の資金を捨てておられます。その原因はシステム開発プロジェクトチームを作っても、リーダー不在で後に起きる問題で行き詰まるのです。役員が情報システムを理解のない社員に任せた結果、動かない情報システムを作るのです。
強力なリーダーがいない会社は意見がまとまらず、結果がでません。私は難しいことを簡単に考えます。十八年前、多品種少量生産で人手にたよる裁断に行き詰まり、東レが売りに来たコンピュータ裁断機の一号機を即決で買いました。買った後で木造の工場に入らず、土地そして工場建築と当時合計一億二千万円使いました。当時の売上から考えると無鉄砲でした。しかしそのままで行き詰まるより、道が開ける投資をして頑張ってみると突撃しました。今年高級婦人衣料生産のため、コンピュータ裁断機の三代目が入りました。初代の機種に比べると価格も安く大変進歩していました。
この度の投資には迷いもありました。中国生産に依存度が高く、この形態ではリミットは商社になってしまいます。これからは国内生産拠点を持ち、企画生産の主導権をリミットが持たなければなりません。金型の通信販売で有名なミスミは生産工程を持たない経営で知られていましたが経営者交代を期に、生産工程を持つ会社に切り替えています。
物作りのノウハウは大変な努力が必要です。物作りを忘れた会社は、一時は栄えても衰退します。若い世代がリミットグループ全体の生産から販売までの現時点での問題点が明確にわかり、問題点解決に的確な行動が起こせるように情報システムを再構築しなくてはなりません。この再構築を私の仕事の総仕上げにしようと決めたのです。生産販売戦略と情報システムが一体となり、確信を持って行動が起せる体制を作りかったのです。リミットグループは生き残りをかけ、日本一高品質生産工場実現、そして強力な情報システムを駆使し、デフレ時代の販売戦略勝ち残りを目指し、大きな挑戦が始まります。挑戦無くして生き残りはありません。
2005年8月25日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
コメント
コメントを投稿