2005年 6月号
一、 コンピュータの中に存在する究極の企業
いつも大変お世話になりありがとうございます。
五月の業績は前半が好調で、後半に落ち込みました。六月も前半は好調です。今年度の売上は横バイ傾向です。しかし利益金額は上昇しています。その原因はリミット通販㈱と日中情報システム㈱の赤字が止まったことにあります。一般の通販会社は粗利益率が八十パーセントと出ていました。リミット通販は高級婦人ユニフォームの直販ですので、今後の推移が楽しみです。
リミット通販は不思議な会社で、企画は大阪リミット㈱、生産はリミット㈱です。リミット通販としての社員はいません。それでも月初めの第二営業日には、試算表が私に届きます。リミット通販という会社はリミットのコンピュータの中に存在し、全ての仕事はリミットのコンピュータが処理しています。社員がいない究極の営業形態になっています。一時は子会社の事務を別々の社員が担当していましたが、今ではリミットとリミット通販とを全く人手に頼ることはなく、すべてコンピュータが認識して処理します。少ない人員で大きな仕事、究極の管理体制ができたと思っています。この究極の管理体制の道は茨の道でした。納期が確定せず、お詫びを言って頭を下げ続けていた時代がありました。二十年間努力した結果、昨年までは八十パーセントの受注日即日出荷が、今年の夏物は受注日即日出荷が九十パーセントになっています。昔、受注残一ヶ月分をどのようにして生産するか。大変苦しんだ時代のことは夢物語となりました。
二、加速する労働の二極化
経営に役立つ情報システムは経営者でなくてはできません。セブンイレブンの情報システム本部長は次のように書いておられます。「当社はシステムの開発から保守・運用に至る一連の業務を、ITベンダーにアウトソーシングしている。だが、どのようなシステムを作るかは、全て自分たちで決めている。ベンダーは小売業界で商売しているわけではないので、そう簡単に当社の課題を見つけられるはずもない。決してベンダーに丸投げしない。」と。そういう意味でリミットも二十年前より自前のプランでソフトベンダーに指図を出し続け、現在のシステムができています。
リミットは、単純労働は途上国、日本では頭脳で勝負する時代が来ると大卒女性の採用をしつづけました。しかし次々と退職していきました。退職していくということは、女性社員がリミットに対して希望をもっていなかったということです。会社が発展していく過程では仕方がないことかと思い、採用に努力しました。しかし退職は止まりません。その原因を考えてみると、原因は私の考え方にあったと思います。
面白い記事が出ていました。アマゾンの物流センターでは、バイト同士の笑い声はもちろん、話し声さえ聞こえてこない。真剣そのものである。その理由は、全ての作業に課せられた厳しいノルマにあった。ピッキング(本を探して抜き出す作業)「一分間で三冊」、検品「一分間で四冊」、棚入れ「一分で五冊」、手梱包「一分で一個」…。計算していくと、ピッキングから梱包までで、一冊当たりに支払うバイト料は二十七円となる。ノルマとコンピュータによる監視、この組み合わせこそが、アルバイトを働きアリへと駆り立てるムチの役割を果たしているのだ。東京学芸大学の山田昌弘教授は、労働の二極化をこう説明している。「ニューエコノミーの下では、専門的能力を必要とされる職種と、マニュアル通りに働くだけの職種に二極化していく。前者に属する人は、若い頃から選別され専門能力をつけるよう働きかけられ、後者に属する人は、仕事能力向上の機会がないまま、一生単純労働に従事するように運命づけられることになる」と。
私はアルバイトではなく、国立大を出た優秀な女子を結果として単純作業に使おうとしていたのです。工場の裁断技術の優秀な人材が採用できないので、東レコンピュータシステムの第一号機を入れました。営業の人材が採用できないので、通信販売の形態に進みました。財務が解らないので、解らなくてもできるようにソフトをつくりました。目標は素人でもできるシステムです。一から十までキーボードを打てば全てコンピュータが処理してくれるシステムをつくりました。その結果、人が力を発揮する必要がない職場の状況になり、働く人の希望を失わせたのです。多くの社員が止めていった原因が、今頃になって理解することができました。
三、日中の新しい「縁」=パートナーシップ
先月書きました中国で新しく設立しました会社の総経理が、六月八日に来日しました。その総経理との出合いについて書きます。
この通信の先月号にとりあげた広島大学院で法学博士を取り、中国に昨年帰国した女性に、「貴方の周りには貴方のような心豊かな人が多くいると思います。日本で勉強したいと思っている人そして専務のパートナーになれる人がいたら紹介して下さい」とメールも出していました。常々、「類は類をもって集まる」という日本の諺を教えていたのです。半年前のことになるのですが、この女性から、「すぐに中国に来て下さい。」と連絡がありました。私は物見遊山、気楽に行くことに決め専務に話しました。専務は何を思ったのか自分も行くと言いました。二人で行くような話ではないと言ったのですが、付いてきました。
中国に着くと彼女は、中国の裁判所に勤めていたころの上司の息子に合わせてくれました。二十七歳の青年で、東京の大学から広島大学大学院の経済学部に入り、卒業後一年間日本で会社に勤めて帰国していました。日本での留学は親の援助を受けず、アルバイトで卒業しています。この青年が今の総経理です。
父親は、自分の職業のことは一切言われませんでした。知り合いの女性からは、父親は労働者のどん底から苦労しながら勉強し、司法の高い地位を得られたと聞きました。帰国の贈り物に観音像を頂いて帰りました。専務とは、初対面でしたが大変話がもりあがっていました。
あれから半年、この青年が来日しました。目的は米国にいる婚約者に、日本流で言えば結納を届けるため米国への出国ビザを取るためです。私用での来日ということで、福山でホテルの予約から旅行社への手続きを専務には一切させません。そして費用はこちらの予算を一切使わせないで全て本人が払いました。父親にも個人で払うことを約束してきた、とのことでした。この度は父親から豪華な仏教教典を頂きました。仏像そして教典を頂くことは、縁によって道が開けた運命の不思議を感じる共通の思いがあるのだと思います。
既に現地法人の総経理として立場に着いてもらって入るのですが、今は行動を起こさず、しっかり勉強すること。そして五年間何も行動しないことが、利益に繋がる。バブル崩壊後行動を起こせばよいと言っています。
2005年6月25日
笑顔着
リミット株式会社
代表取締役 有 木 伸 宏
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