2005年 5月号

 

  一、相互信頼と品質、納期

 

 いつも大変お世話になりありがとうございます。

 五月の販売は順調です。この調子でいけば四月のマイナスを埋めるのではないかと期待しています。五月のこの繁忙期でも受注日即日出荷率が九十パーセントを下ることは皆無です。これは中国における生産現場の協力なくしてあり得ません。生産計画の精度をいくら上げても、それを確実に実現する態勢がないと、受注日即日出荷は不可能だと思います。リミットは中国に独資工場を作り、初年度は指導に行っていましたけれど、今は総経理に全て任せています。日本人の感覚ではいくら全て任せたといっても、独資工場ですので財務報告をするのは当然だと考えます。しかし中国の考え方は違います。一度財務状況を聞いたら、「信用していないのか」と烈火のごとく抗議を受けました。それ以後、財務状況を聞くことはありません。中国では総経理が経営者のように行動しているのです。  品質については、縫製段階で検査が厳しいので高品質を保障できるのです。日本で検品の必要はまったくありません。誰もが心配になる納期もリミットの独資工場では正確で、計画通りに指定の船で返ってきます。その結果、リミットの信用獲得に大変寄与しています。日本の多くの企業は日本から総経理を派遣しています。そこから発生している問題もたくさんあると聞きます。どちらの方法が正しいのかをたずねられると答えに困ります。私には解りません。しかしリミットが獲得している製品に対する信用、という観点からは確実に正しい判断であると思っています。

 

  二、日中間世代間の意思疎通

 

 総経理の長男夫婦と娘夫婦は日本で勉強し、日本語検定一級を取得しています。私の話を総経理に伝えるのは簡単ですが、総経理の話を私に伝えるのは困難ですとよく言います。限られた日本語知識では十分説明ができないのです。私はよく中国にA四版で二枚から三枚のメール通信を送っています。三年間で百五十五通になります。それ以外に日本そして世界の情報も送っています。私のメールを総経理は理解しているようです。しかしそれに対しての考え方の返信は少ないです。相手の考え方が私には伝わってきません。中国文化に精通した日本人の通訳または日本文化に精通した中国人の通訳がいれば多少なりとも解決します。しかしそのような人材は少ないと思います。中国の常識が日本での常識ではないことを理解させる努力を続けながら、メールを送り続けています。このコミュニケーションで、私の時代の中国生産は大変成功したと思っています。  しかし次の時代まで今の安定が続くかどうかは解りません。日本でも初代を順調に終わることは大変なことです。経営の神様と言われた人でも晩節をけがしてビジネスの世界から消えています。それが二代目になると予想も付きません。中国も二代目になります。初代が軌道に乗せた工場を引き継ぐことは大変だと思います。若い世代の事を心配しても将来は解りません。若い世代のお互いが幸せになる努力を積み重ねていく以外はないと言っています。

 

  三、困難を乗り越える不思議

 

 昨年五月に私の知人で、国立大学で法学博士の学位を取り、中国に帰った女性がいます。日本で八年間勉強していました。熱心なクリスチャンです。そして論文の題目は「日本生活保護法における補足性原理について」ですべて日本語論文でした。中国にはない制度を勉強していました。博士課程に入り、私がカウンセラーになりロータリーの奨学生になりました。奨学金は二年間の支給です。論文が合格せず、三年目からは別の方法で協力しました。三年目は担当教授が定年退職となり残された一年が法学博士をとる最後のチャンスとなりました。ストレス性の頭痛に悩みながら頑張った結果、学位を取得しました。学位の授与式に親は来られないとのことで、私と専務が行きました。お礼を述べるため訪れると教授が、「中国人留学生が学位を取ることは生活難のために大変困難です。政府が優秀な留学生を支援する制度を考えてくれなくては、日本に優秀な留学生は来ない」と言っていました。学位授与式と校内風景等写真に撮り、一冊のアルバムにして渡しました。中国に帰り、夢かなって大学講師になりました。  私は目的を達成したので安心していました。ところが今年の四月に相談のメールが来ました。中国の大学では教授になるには論文を出版することが条件になっており、私は日本で出版しなくては教授になれないと言ってきました。日本で出版すると二百万円必要だと聞いています、と書いてあります。出版関係に詳しい私の知人に、費用は私が負担するから中国には二十冊ほど送って欲しいと頼みました。出版コードが入ることを条件に、私が払える程度の金額で方法が考えられないかと無理な相談をしました。結果は引き受けてくれました。私は交際下手ですが、少ない交際の中で不思議と私を助けてくれる人がいます。守り神に感謝します。

 

  四、夢が現実になるプロセスを見る

 

 私は朝の二時、三時に夢の中で物語が始まります。その夢は昼間では考えられないような物語になる場合があります。私はそれを神仏からの啓示と考え、実行するようにしています。前回のリミット通信で、長年の赤字会社二社が黒字になったので、今年先行投資で赤字会社をもう二社設立し、一社は設立済みと書きました。その夢物語を書きます。  これからの時代は国際的ネットワークで混乱の時代を助け合いながら、ボーダレスで行動を起こさなくてはならないと言われています。中国そして日本。その時の国際情勢で自由に行動を起したいと夢物語が始まりました。私は営業目的が無くても会社設立から始める事を原則としています。専務が個人出資して独資企業ができないか問い合わせました。返事は資本金五十万元で個人の独資公司ができるとのことで、専務の運転免許証のコピーと公司の名前を考え、FAXで送りました。会社設立代行業者に頼み、一ヶ月で設立できました。そして二十五万元(約三百三十万円)を最初に送金しました。残額二十五万元は一年以内でよいと言ってきました。結果、専務は一月に個人で独資を設立しています。個人ですので会社が損害を受けることは有りません。  私の哲学として会社も個人も投機は絶対にしません。専務は色々勉強して人のネットワークを構築すると思います。次は独資会社の子会社を日本に作りたいと思います。これは可能かどうか解りません。考え方の基本はネットワークで提携し、お互いの幸せを追求し、強力な協力関係を築くことが目的です。十年先に専務は会社をどのような形にしているか。生きていて見たいと思います。夢を描き続け行動を起こせることに、守り神に感謝しています。

 

  2005年5月25日

 

    笑顔着

      リミット株式会社

      代表取締役 有 木 伸 宏

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